第40話・パラノイア-2
「殿下?」
手が触れようとした正にその時、遠くからメイドの声が聞こえた。
「君は…ロキナか」
カシリアは驚いて、慌てて手を引き戻した。
「はい、殿下。殿下はお嬢様に何か御用でございますか?」
「…なんでもない。ただ…リリスが穏やかに寝ているのを見ると、薬が良く効いたようだな」
「はい、殿下のおかげで、リリス様の体温はもう平熱まで下がったようです。」
「…そうか、それは何よりだ。私はまだ仕事があるので、失礼する。」
「いってらっしゃいませ…」
ロキナは礼をしたが、カシリアがリリスを見ていた時の恋人を見つめるような顔をはっきり覚えていた。
殿下はお嬢様を救えるのでしょうか…
いいえ、殿下なら、お嬢様の悩みをきっと解決出来るでしょう。ロキナは密かにそう思っていた。
どうかしている、私は一体何をしようとしていた!?
カシリアは先ほどの失態を思い出して、動悸が止まらなかった。
それは今までになかった感覚だった。
周りの為に跳ねたことのないその心臓が今明らかにドキドキと音を立てて跳ねていた。
王族に相応しくない行動を取っていながらも、内心ではリリスの安らかな寝顔が見られて喜んでいた。
まるで全身の疲れが一瞬で消え去ったかの様に、体中に気力が満ち溢れていた。
一体どうなっているのだろうか…
そうだ、誘拐組織の件を早く解決しなくては!よし!今のうちに次の案を考えよう!
夜遅いにも関わらず、カシリアは勢い良く会見室に入り、臨時に設けられたデスクで誘拐組織の件を処理しはじめた。
次に打つ手の研究に耽けていると、慌ただしいノック音が聞こえてきた。
「殿下、学院長が是非殿下にご相談したい件があるそうです。テストの成績に関することだそうです。」
衛兵が慌てて入ってきて報告した。
テストの成績だと?こんな深夜に?自分にはもう特に気になることはない。
なにせ、最大のライバルであるリリスは徹底的に失敗したのだから、今までの王子のように生徒会会長の座に安住できる。
「今は忙しい。そんな些細なことは一々知らせるな。」
カシリアは顔を上げずに言った。
「しかし、学院長がどうしても殿下にお会いして話したいとおっしゃっています。とても重大なことで、国王陛下にも報告しようと考えているそうです。」
どういうことだ?院長は一体何を考えている?
テストの成績を報告した所で手柄になる様なことはないし、それにわざわざ先に私に知らせるとはどういうことだ?
カシリアは机の上に置かれた誘拐事件に関する分厚い資料を見て、大きくため息をついた。
いいだろう、どうせこの件はすぐには解決できないことだし、学院長が何を企んでいるのを見に行こう。
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