第47話・運命の約束-1
幼い頃から厳しい教育を受けてきたカシリアは、周りに完璧な王子であると見せるためにはどうしたら良いかを常に考えていた。
そのためカシリアは用心を重ね、隅々にまで気を配り、全てを完璧に成し遂げてきた。どんなに小さな仕草にも、王族の気概を示さなければならなかった。
これは誰もがカシリアに対して抱いた期待であり、カシリアが背負わなければならない王国の未来でもあった。
カシリアにとって、王という言葉は地位や権力の象徴というよりも、運命に近かった。
それはまるで、思わず聖剣を抜いてしまった者が、人々からの期待に応えるため、仕方なく自分の夢を諦め勇者になって戦うようなものだ。
これは第一王子として生まれた時から定められた運命であり、彼本人の意志とは関係なく現実になる。
貴族たちは小さい時から厳しくしつけられた。そして自分より地位の低い貴族の扱い方から、自分より地位の高い貴族の取り込み方、更には王子の機嫌の取り方まで、貴族としての考え方も叩き込まれた。
全ての女性が王子に見初められ、やがて王妃になり、家のために至上の権力と名誉をもたらすことを夢見ていた。全ての少年が王子の心の友になり、権力を手に入れることを望む。誰もが同じで、例外はなかった。
これは貴族の家の伝統的な思考で、代々受け継がれ、決して変わることはない。
【このような貴族たちはだれもが量産化された工芸品のように、画一的で、精巧に見えても下品で、そこからは美のかけらも感じられなかった。】
しかし皮肉なことに、この様に貴族らに刻み込まれた厳しい階級観念の存在があってこそ、王族は代々王位を継承し、穏便に国を治めることができた。
数え切れないほどの社交の場を経験したカシリアには、無数の貴族の少年女性達の作り笑いや媚びの日々が日常になっていた。
毎日が同じことの繰り返しで、退屈の極みとしか言い様がなかった。
しかし今目の前にいる女性は明らかに違った。
【彼女はカシリアを一王子としてではなく、地位の近い貴族として接していた。】
彼女は何も隠さずに自分の内心を語り、何も気にすることなく奇妙な振る舞いを見せていた。
このような経験は初めてだった。
王族としての心得全てを爛熟するほどまで暗記していたが、この女性の言動はどれもが自分の想像を超えたもので、不思議で興味深いものだった。
これほどに自分の興味を引く女性は初めてだった。
その自由気ままな態度は完全に生まれつきのもので、純粋で活発で、何もやましいことはない。
羨ましい。
心底羨ましい。
もし王族ではなかったら、この女性の様に自由に生き、やりたい事を出来たのではないか…
でも残念なことに、それは永遠に手に入れられない望み。
ある意味カシリアは不幸な人なのかもしれない。
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