第48話・運命の約束-2
カシリアは彼女の独り大食いショーに感心しながら、ゆっくりと肉を食べていた。
一方彼女は自分の食べ物を奪わせないと言わんばかりの嫌そうな表情を見せつつも、爽快に食事を楽しんでいた。
「誰も奪いはしないから、そんなに急いで食べる必要がある?」
「そうだけど、ママにこんなふうに食べてるのが見つかったら、きっと機嫌を悪くする。だからあんたみたいにコソコソ隠れて食べているんだ。」
「オレのように隠れて食べるって、オレはただ…」
弁明しようとしたが、自分が王子であることに気づけば、この女性は慌てて貴族らしく振る舞う様になり、非礼を恥ずかしながら詫び始めるに違いない。そうなると、もう素のままの彼女が見られなくなる。
「コホン。まあ、オレも隠れて食べていたのは確かだ」
これは別に嘘ではない。なぜなら今の自分はまさに彼女の言う通り、ここに他の貴族女性達から逃げ隠れにきたからだ。
「やっと認めたな!あんたって誰もいない所まできた以上は、男らしく豪快に食べろよ」
「フッ、オレは君のように乱暴には食べられないんだよ。」
まさかこんなおとぎ話のような会話を自分がすることになるとは思いもしなかった。
そして、カシリアの食べ方に不満を抱く彼女は、食べながらカシリアをからかってきた。
「あんたさあ、男なのにどうしてそれだけしか取ってこなかった?そんなので足りる?」
言いながら自分の持っていた山盛りの料理を自慢げに見せ、その中から大きな蟹を手に取ってカシリアの目の前にぶら下げた。
「これさあ、すごく美味しいよ。もっと取ってくればよかったのに〜」
「結構。オレはこれで十分。」
王族に生まれたカシリアは、美味しいものは飽きるほどに食べてきた。彼にとってどんな食べ物も、体に栄養素を補給するためのエネルギーに過ぎず、味は特に感じなかった。
「あんたのそののろのろした食べ方は、まるで貴族のお嬢さんみたいじゃない!男ならもっとガツガツ食べなよ!」
この言葉には本当に笑わせられた。
「そう言うんだったら、君こそまるで男のようにバクバク食べていたことになるね?」
カシリアは笑いを我慢しながら反論していた。
「だってしょうがないじゃない。ここの料理全部美味しいんだぜ!ママが良いって言うなら、全部持って帰りたいぐらいだぜ。」
彼女は残念そうな顔をしながら食べ続けていた。
「ブワハハハ」
カシリアはついに我慢できずに笑い出してしまった。
「君のそのドレスのサファイア1粒だけで何ヶ月も好きに飲み食い放題できるじゃないか」
「そんなことできないよ。これはパパが買ってくれた新しいドレスだぜ、勝手に売ったりしちゃだめだよ。」
彼女の話でそれに感づいた。
メニア王国の前身はトスアイト帝国と言って、一夫多妻制だった。
それが原因で貴族間で様々な後継争いが行われ、やがて止めどのない内乱となり帝国は分裂し滅亡していった。
そうして新しく成り立ったメニア王国は帝国の轍を踏まないよう法を定めた——貴族は一夫一妻制とし、長子を後継者とし、他に私生児等があっても一族に入れてはならない。
王族を除いて全ての貴族は一夫一妻ではあるが、実際には自分の欲望を抑えきれずに外で隠し子を作る貴族も珍しくなかった。
だが法律のため、私生児は家の名も爵位も継げず、一生平民のままでいた。
経済的には貴族のような暮らしができるかもしれないが、貴族の社交界に入る事は決してなかった。
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