第41話・パラノイア-3

カシリアは護衛を連れて、まっすぐに院長室に向かった。院長のラティ侯爵は彼の到着を待っていた。


 院長のラティ侯爵は世間のことを気にせず、政治にも関心を持たず、ただ学術研究に没頭する女性学者で、彼女の配偶者もまた学術界随一の教授。


 だからこそ、深夜に自分を院長室へ呼ぶのがより不自然に感じる。


 「ようこそ殿下。やっと来ていただけましたね。」


 ラティ侯爵は手に答案用紙らしき紙を持っていた。さらにもう一枚王室の印がある紙も持っていた。今回のテストの解答集だ。


 まさかテストが終わって間もないのに、もう成績が出たというのか?


 いや、教授たちは先に有望で優秀な生徒から採点し始めたのだろう。


 「これは主だった者たちの今回のテストの成績とその順位表、そして国王陛下に預けていた標準答案です。」


 ラティ侯爵はカシリアにそれらを渡した。


 今回の王家学術能力テストは学院で行われたとはいえ、あくまでも王家学力テストであり、問題のほとんどは一定の難易度で王室が用意したものだ。


 だから王族が圧倒的に有利だった。


 「今回のテストの成績で、予想外のことが起きました。そこで殿下のご意見をお聞きしたいのです。それから国王陛下へどのように報告するか決めたいと思っています。」


 どのように報告するかだと?


 学院長はいつから父王にそんなに謙虚になった?侯爵は学院の独立性をしっかり守ろうと、王族からの干渉を嫌っていたのではないか?


 カシリアは困惑していたが、ラティ侯爵から渡された答案用紙と解答集、そして順位表の書かれた紙を受け取った。


 順位表には数名分の成績が載っていただけだった。他の生徒の答案は未だ採点されていないのだろう。


 しかし、その中の一人の成績があまりにも異常だった。


 あっ!?


 思わず息が止まった。順位表と答案内容を見て、あまりの驚きで心臓が止まりそうになった。


 院長がなぜ二人きりで話をしたいのか、ようやく理解した。


 これから王族の名誉と威信を大きく揺るがすことが起こる。


 信じられないほどの衝撃がカシリアを襲った。


 それは今まで感じたことのない屈辱感だった。


 王国の第一王子として、未来の王太子として、カシリアは様々な試練と苦難を経験してきた。


 何もしないでただ爵位を継承するだけの貴族のボンボンとは違い、奮闘努力して、一歩ずつ太子の座を確立してきたと言える。


 それでも、目の前に叩きつけられたこの事実は、無慈悲にカシリアの誇り高い自信とプライドを引き裂く悪夢のようだった。


 カシリアは顔をしかめ、答案紙を持つ手もガタガタと震え始めた。強く握られた答案紙が今にも破れそうだった。


 カシリアは初めて心からの恐怖が湧き上がるのを感じた。













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