第36話・兆しのない悪意-2

前世では何度も繰り返して見た顔だった。幾ら自分が低く出て媚を売っても、笑わせることは一度も出来なかった。


 今は何もしてないのに、殿下をこんなに暗い顔にしてしまった。


 今後の学院生活で一体どう殿下と付き合えばいいのか本当にわからない。


 私は静かに殿下の向かいに腰を下ろし、暖かい笑顔をしまい、いつものように優しい表情を見せることにした。


 殿下からのお話を待つつもりだったけど、何か難しいことでも考えているかのようにずっと黙っている殿下がいた。


 ただ二人の間に沈黙が訪れたことで、部屋中がとてつもなく憂鬱な雰囲気に陥ってしまった。


 「…」


 本当に息苦しくて鬱陶しい沈黙。私に何かを話させている?それとも何か新手の刑罰なの?だとしても、自分が殿下に何かした覚えはない。


 「さっきメイドから聞いた話だが、君はもう大分元気になったそうだな」


 殿下が先にこの沈黙を打ち破り、妙な質問をしてきた。


 「はい…確かに、もう大分良くなりましたが、病み上がりのせいか、まだだるく感じます。」


 なんだか嫌な予感がするけど、ひょっとして…


 「今回のテストの結果だが、昔のように掲示板で公表するのではなく、父王自らパーティーを開き、そこで結果発表をすることになった。既にカスト公爵から聞いたとは思うが。」


 殿下は無表情に語っていた。


 それを聞くと、心の中をぎしっとガラスの破片に刺されたかのように痛くなる。


 なにそれ。


 なぜ殿下はわざわざこんなタイミングでパーティーのことを言い出すの?


 私に恥を晒せって言ってるの?


 私は欠席したせいで成績が悪いのは知っているくせに、私を侮辱するために、私にパーティーに出ろと言いに来たわけ?


 本当に、いくら何でもひどすぎるわ。


 私は疑問と怒りで一杯になったが、それでも表には出さなかった。


 「はい。父上から聞かされました。しかし申し訳ありません。体の調子まだ良くないので、パーティーに出席出来る状態ではありません。どうかお許し下さい。」


 私は無理やり善意溢れる目線を保ったが、内心では崩壊寸前までになっていた。


 前世から殿下がエリナ以外の全ての貴族に対してはすべて嫌味を帯びた態度で接していることは分かっていた。


 それにしても、病み上がりの私にこんな残酷なことを言う必要はないでしょう。


 それとも殿下に対しての私は、ただのどうでもいい脇役で、自分で勝手に倒れた私を、仕方なく面倒を見た殿下こそが、被害者に過ぎないとでも思っているわけ?


 両手でこっそりスカートを握り締めて我慢している。


 殿下は、ずっと私のことを何とも思ってはいないと知っている。それどころか厄介な存在だということもわかってる。


 けど、今だけは、私の気持ちをちょっと考えて欲しいと願ってやまない。













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