第33話・幸せの二律背反-3

再び目を覚ますと、もう翌朝だった。


 カロリン医師はもういなくて、ただ彼女の用意してくれた食事だけが残されていた。そしてロキナと殿下のメイド達がいた。


 「カロリン医師はもうお薬を使ったそうです。今日と明日の二日間しっかりご休憩なさいましたら、すぐ良くなるそうです。」


 ロキナは私が起きたのを見て、教えてくれた。


 今回も薬を飲んだ記憶はなく、腕に明らかな注射の跡が増えていた。ということは今回も注射なの?なんだか変な感じがするけど、具体的にどうしたのかは分からない。


 この様子だと、成績が出る日までずっと休むことになるのかしら?私は少し不安になった。そういえば父上が見当たらない。きっとエリナやミカレンと一緒にいるのね。


 前世で成績が出る日は、父上が二人を初めて家に連れてきた日だった。


 【その日、私は父上と徹底的に決裂した。】


 しかし今回私は学院で倒れてしまった。父上は前世と同じように二人を連れて来るのかしら?


 いや、きっとそんなことしないわ。


 だって父上はとても優しい人だもの。私が病気の時にそんなひどいことするはずがないわ。


 前世でこのタイミングでエリナとミカレンを連れてきたのは、きっと私が思いがけずテストで一位を取って喜んでいる時なら、彼女たちを受け入れるだろうとの算段だったのよね。


 「お嬢様?お嬢様、お食事を召し上がってください。」


 ロキナは考え事に耽けていた私に気づいて、声をかけてきた。


 このまま自分一人で考えたところで、悩みが深まるだけね。いったん考えるのを止めましょう。


 今日はとりわけリラックスできる一日になるかもしれないわ。沢山のメイドが四六時中私の世話をしてくれるし、ロキナもいてくれる。病気で体が弱っているせいか、心がやけに落ち着いていた。やっとゆっくりできるわね。


 【しかもカシリア殿下も何かの仕事でずっとここに戻ってこなかったようね。】


 この広い王家休憩室が、今や殆どリリス専用の寝室になっていた。


 夕方になって、父上がやっと戻ってきた。


 「どうだいリリス、体調の方は?」


 「殿下のおかげで、大分良くなりました。明日には完治すると思います。」


 「なるほど…」


 少し他愛のない世間話を話した後、父上は急に話題を変えた。


 「ところで、明日の夕方国王陛下が、学院の全生徒とその家族が参加できる成績発表祝賀会を開催するそうだ。どうだ?参加するか?勿論体調が悪いなら、行かなくても問題ない」


 父は私の体を心配し、予め行かなくても良いと言ったようね。


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