第6話待ち切れない出会い
朝、目が覚めると、また昨日のことを思い出す。
ほんの数分の出来事、会話はほとんどなく、ただ二人で夕焼けを眺めていた時間。
あの夢のような時間がまたくる……。
またあの少女に会える……!
そう思うと僕は、気が気でなかった。
早くあの時間になって欲しいと思った。
しかし時間を意識すればするほど、時間というものは遅く感じるようになっている。
なのでその時間を意識しないために、僕は図書館で勉強することにした。
そうすれば時間を忘れられて、なおかつ勉強もできるという一石二鳥だからだ。
そうと決まれば僕は、いつも学校に持っていく鞄を背負うと自転車に乗り図書館に向かった。
図書館の中は人がそこそこいて、勉強をしている学生もいれば、パソコンで何かをしている社会人もいる。
そんな中、僕は空いている机に座ると鞄から教材を取り出して勉強を始める。
まずは次のテスト範囲の場所を勉強しようと決め、そのページを開く。
そしていつも通りのペースで進めようと思ったが、僕のシャーペンは一向に進まない。
どうしてだ?
いつもならもう勉強に集中できているはずなのに、今日はやけに周りの音がうるさく感じる。
どうしてか周りをきょろきょろとしてしまい、1分おきごとに時計を確認してしまう。
全く集中できない。
こんなこと今までなかったのに……。
どうしてこうなったんだ?
僕は全く集中できないまま、一文字も書けずに1時間が過ぎてしまったことに気がついた。
このままここにいてもダメだと思った僕は、家に帰ることにした。
家に帰ると僕は自室に行き、横になった。
このまま夕方まで待とう。
そう思い、僕はベッドに数時間横たわっていた。
時刻は午後四時半。
待ちきれなかった僕は、もう家を出ることに決めた。
昨日の少女が言っていたあの言葉……。
夕焼け空が一番綺麗な時間とは、一体何時なのか……?
それがわからない僕は、早めに家を出る。
そして昨日と同じように橋に着くが、そこに少女の姿はなかった。
僕が早く来過ぎただけだから大丈夫。
っと思い待っていたが、少女は一向に来る気配がなかった。
僕は腕時計を確認すると、長針は11を指していた。
時刻は4時55分。
もしかしてこないんじゃないか?
そう思い不安になりながらも、待つことしかできない僕は、夕焼け空を眺めながら少女を待っている。
そして59分。
後1分で5時のチャイムが鳴ろうとした時だった。
不意に肩をトンと叩かれ後ろを振り向くと、昨日と同じ少女がワンピース姿で立っていた。
「やぁ」
少女は笑顔で一言そう言った後に、僕の隣で夕日を眺め始めた。
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