第24話話題転換
翌日の午後4時40分。
そろそろ菜乃花の家に行く時間だ。
結局のところ、看病するとかいっておきながら、ただただ菜乃花と話しているだけだ。
あんなこと言った手前、なにか看病っぽいことをしてあげたいが、そもそも看病というものが何をすればいいのかよく分からない。
病人につきっきりで一緒にいるとか?
でも高校生の僕にはそんなことできないし、そもそもそれなら菜乃花のお父さんで十分じゃないか?
僕の存在意義ってあるのか……。
またそんな暗いことを考えながら、僕は一歩ずつ地面を踏みしめながら、菜乃花の家へと向かった。
それから20分した時。
午後5時を知らせる鐘の音が響き渡ると同時に、僕は菜乃花の家に到着した。
ピンポーンとインターホンを鳴らして、誰かが出てくるのを待つ。
少しすると、インターホンからガチャッと音がして、いつも通りの声のトーンの菜乃花が出てきた。
「あ、翔太くん? 玄関開いてるから勝手に入っていいよ」
そんな不用心なことを言われるが、僕は言われたまま玄関に入り、お邪魔しますと一声かけてから階段を上っていった。
階段を登りきり、すぐ右にあるドアをトントンとノックすると、入ってどうぞとドア越しに菜乃花の声が聞こえてきた。
僕はドアノブをガチャリとひねり、ドアを開けてから菜乃花の方を見て。
「お邪魔します」
もう一度、次は菜乃花に向かって挨拶をする。
すると菜乃花は、ふふっと小さく笑いながら。
「お邪魔されました」
と嬉しそうに言った。
僕は早速部屋の中に入ると、持ってきた鞄の中から一冊の本を取り出す。
「見てよこれ。菜乃花の家で読んだ小説なんだけど、もう一回読みたかったから僕も買ったよ」
菜乃花の家に行くまでの時間、僕は昨日読んだ小説を近くの本屋で探していた。
僕は出した小説の表紙が菜乃花に見えるようにしながら話した。
菜乃花はそんな僕のことを、ニヤニヤした表情をしながら。
「昨日あんなに泣いてたもんね」
と言ってきた。
正直あまり思い出したくない。
一人だったらまだ良かったのだが、菜乃花の前であんなに泣いてしまうなんて少し
僕はこれ以上このことについて触れられたくなかったので、自分から出した話題だがそれを逸らすように。
「それよりさ、菜乃花って将来の夢とかないの?」
突拍子もなくそんなことを聞いてみた。
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