第20話白い部屋

 そして迎えた朝。

 時間にして午前11時。

 僕はゆっくりと体を起こして、目をこする。

 少しして、体がゆっくりと覚醒してくると、僕は菜乃花の家に向かうための準備をする。

 僕はベッドの近くに置いてあるタンスを開けると、適当に服を引っ張り出す。

 そして適当に取り出した服は、短パンにTシャツと言うなんとも高校生らしくない服だった。

 僕はその高校生らしくない服を着ると、荷物を持って玄関を出て行った。 

 そして昨日来た道を、また歩き出す。

 菜乃花と僕の家は割と近く、歩きで20分ほどで距離にある。

 もし菜乃花の体が弱くなく、しっかりと学校に通えていたなら、僕たちはおんなじ小学校、おんなじ中学校に通えていたのではないかと思ってしまう。

 でも、例えそうだとしても……。

 いや、例えそうだとしたら、僕たちは今みたいな関係にはなれていないのだろう。

 菜乃花の家が僕の家の近くで、菜乃花の体が弱くて、僕たちがあの橋から見える夕焼け空が好きで、たまたま気まぐれであの橋に行ったから、今の僕たちの関係があるんだ。

 どこか一つでも欠けていたら、今の関係はなかった。

 僕たちの今の関係は、そんな偶然が重なったからあるんだ。

 僕は自分らしくもない、そんなちょっとロマンチックなことを考えながら菜乃花の家に向かう。

 そして歩きだしてから20分ほどたち、僕は菜乃花の家の前に着く。

 改めて家に入るのは緊張するので、僕は大きく深呼吸をすると、勢いよくインターホンを鳴らした。

 しかし、一向に誰かが出て来る気配が無かった。

 もしかしたら聞こえなかったんじゃないかと思い、僕はもう一度インターホンを鳴らすが、誰も出てこなかった。

 そういえば菜乃花とは色々なことを話したが、肝心の今日来る時間を聞いていなかった。

 僕はこの後どうしようかと悩んだが、特にやることがあるわけではないので玄関のドアの前で待つことにした。

 一軒家と合体している小さな駐車場には、昨日置いてあった車がなくなっていたので、多分どこかへ出かけているのだろう。

 僕はすぐに戻ってくると思い、ぼーっと下を向きながら菜乃花の帰りを待つことにした。

 けれど僕の予想に反して、待っても待っても一向に菜乃花たちは帰ってくる気配が無かった。

 流石に立っているのが疲れた僕は、玄関の前で座って待つことにした。

 そして座ると不思議なことに、さっきまで全く無かった眠気が急に襲ってきた。

 夏の眩しく明るい日差しは、紅色の夕焼けへと姿を変えて、僕に気持ちのいいそよ風を当ててきた。

 だんだんと意識が朦朧もうろうとしていき、僕は視界に映る夕焼け空を最後にパタンと意識を失った。

 そして僕は意識を取り戻すと、そこは真っ白な部屋の中だった。

 まだしっかりと目が覚めてないが、うっすらと目を開けると、どこも白に染まっていた。

 白い壁に白い天井、そして白いベッド。

 そして、そんな白くて物静かな部屋の中、ペラ、ペラとゆっくり本をめくる音だけがしていた。

 そこで僕はハッと我に帰り、体を勢いよく起こした。

 すると本を読んでいたであろう主は、パタンと本を閉じると。


「おはよう翔太くん。ゆっくり休めた?」

 

 っと、にこやかに僕の方を向いてそう言ってくれた。

 














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