第3話出会い

 健の姿が見えなくなった後、僕は歩いて階段を降りていく。

 そして下駄箱で革靴に履き替えて、駅まで真っすぐ進む。

 時間は午後4時。

 駅に着くと電車を待つ。

 この電車が来るまでの時間はとても暇でしょうがない。

 携帯は持っているが、親に連絡をするための道具としてしか使っていない。

 なので暇な僕は、ずっと空を見ている。

 この夕焼け空を見ていると、無性に悲しくなる。

 何故だかは分からない。

 でも夕焼け空を見ると僕は、儚いや悲しいといつも思ってしまう。

 夕焼け空を見ながらぼーっと待っていると、僕が乗る電車が来た。

 その電車に乗ると、空いていた席に座りまた夕焼け空をながめる。

 ぼーっと見ていると、次は僕の降りる駅だった。

 何も考えていない時間ほど時間が経つのが早く感じるのはどうしてだろう?

 そんなどうでもいいことを考えながら、僕は電車を降りる。

 そして電車を降りて、まっすぐ家に帰ろうと思っていたのだが、なんの気まぐれかもう少しこの空を見ていたくなった。

 別にいつでも見れるはずなのに、今日は家までの道を遠回りしてまで見ていたいと思う。

 いつもなら北側へ行く道を、今日は反対の南側へ進んで歩く。

 大きく遠回りをして、僕はある場所へ行く。

 この空を一番堪能できる場所へと、僕は進んで行く。

 長い通路を抜けてしばらく歩くと、小さな橋がある。

 この小さな橋から見る川と夕焼け空がうまいことマッチして、とてもきれいな光景になる。

 橋に着くと、すぐに橋の中央に行こうとする。

 僕だけが知っている絶景スポット。

 そのはずだったのだが、一人の少女が橋の欄干らんかんに手を付けて夕焼け空を見ている。

 まさか他に人がいるとは思いもしなかったが、僕は気にせずにその橋の真ん中に行こうとすると、その少女が顔をこちらに向けてきた。

 僕はその少女を見て、美しいという感情を抱いてしまう。

 どうしてそう思ったか……。

 それは、その少女がこの夕焼け空を一番きれいに見えるこの場所で、泣いていたのだから。

 子供のように泣きじゃくっているのではなく、ただ静かに、目から涙だけを流している。

 夕日に染まる紅を背景に、腰まである長い髪をなびかせながら、泣いている。

 その少女を見て、気が付くと僕は。


「どうしたんですか?」

 

 声をかけていた……。

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