第28話答え

「というか翔太くん、まだお父さんと仲直りしてなかったの?」


 不意に思い出したかのように、菜乃花は話を変える。

 僕は菜乃花の言葉を軽く否定するように。


「別に喧嘩してるわけじゃないよ。ただ話さないだけ」


 そんな僕の言葉に、菜乃花は。


「それは一緒だよ。喧嘩のあり方なんて千差万別。言い争いだけが喧嘩ってわけじゃないよ」


 呆れたような表情で、僕のこ言葉を否定し返してくる。

 そんなことを言われても、本当に喧嘩をしているわけじゃないのでなんて言ったらいいか分からない。

 喧嘩とかそういう話ではない。

 これが喧嘩なのだとしたら、僕は父親と数10年喧嘩していることになる。

 まえ、菜乃花に『認められてもらいたい』と言われて、確かにそう感じている自分もいると思った。

 でも、それは間違いでなくても、正解でも無かったと、僕は心の中で結論づけた。

 父親に認められたい、認めさせたい……。

 そう思って僕は今まで勉強をしてきた。

 でもそれは意味がない。

 あの父親が、僕のことを認めるはずもないし、そもそも認めさせたところで何になるって言うのだ?

 今まで自分がしてきた行為を無駄に感じた僕は、あの日の夜、父親のことについて考えるのをやめた。

 僕は、はぁとため息をついて、指を両手で交差させて俯き、独り言を喋るように、


「別にもういいんだよ、父親のことなんて……。今更どうこうする気も起きないし、このまま何もせずにただ時間が過ぎるのを待ってれば、いずれは解消される問題なんだから」


 手をぎゅっと握り締め、真っ白な布団を見続ける。

 また逃げ出してしまう……。

 そんな僕の様子を見た菜乃花は、寂しそうな声音で、


「その問題を解決しない限り、君は前に進めないと思うな……」


 助言なのか、すぐに弱音を吐いてしまう僕に対しての哀れみか、菜乃花はさっきと違い悲しそうに話す。

 そんなこと言われたって、どうすれば……。

 これは学校のテストとは違う。

 具体的な答えなんてないんだ。

 そんな問題を、今まで父親とほとんど関わってこなかった僕がどうやって解けばいいんだ?

 明確な答えのないものに、どうやって答えを出せばいいんだ……?

 それが分からない僕はまた、菜乃花にその答えの出し方を聞こうと顔を上げる。

 しかし、菜乃花の寂しそうな顔を見て、出そうになる言葉を引っ込める。

 ”また”菜乃花に頼るのか?

 ”また”菜乃花にすがるのか?

 八月の夜、生暖かい部屋の中で、僕はこれ以上ないほどにこの先の未来について考え、苦悩した

       



















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