第3話 鬼ロボが登場でござる。

今日は、岩法師いわほうし開催かいさいする寺子屋てらこや初日しょにちである。

 岩法師は袈裟けさで、狂四郎と小太郎は、いつものラフな服装であるが、虎之助とらのすけ何故なぜか、こんのブレザーに白いブラウス、グレンチェックのミニスカートをいており、女子高生のような姿で現れた。

「姉さん、本物の女子高生みたいですやん」

 小太郎は、虎之助とらのすけのファッションを、ガン見している。

拙者せっしゃは、何事なにごともファッションから入るタイプでござる」

「さすが姉さんは、何着ても似合にあいますねぇ。でも、姉さんはたしか、生徒じゃなくて名誉めいよ教授きょうじゅやったんとちゃいますか?そのカッコやったら女子高生ですやん」

「女子高生と見せかけて、実は名誉めいよ教授きょうじゅというコンセプトでござる」

ーーどんなコンセプトだよーー

 狂四郎は、めている。

「さすが姉さん、ふかいでんなぁ」

 小太郎は、何故なぜ感心かんしんしている。

 岩法師は、だまってニヤついている。声をけたもの全員ぜんいんが、自分の授業じゅぎょうに出て来たのでうれしいのである。

「でも、意外と似合にあってるなぁ」

 狂四郎が虎之助とらのすけを、ジロジロ見出した。

「コラ!狂四郎。姉さんを変な目で見るな!」

「お前も、見てたじゃないか!」

「俺は、ええんや」

「何で、お前は良いんだよ」

「何でって言われても、俺は良いんだよ」

 小太郎の顔が、真っ赤になった。

「こらこら、喧嘩けんかするんじゃない。授業じゅぎょうを始めるぞ」

 2人は、岩法師にしかられてしまった。

「では、まず宿舎しゅくしゃ近隣きんりんの地理から教えようか。近くの駅や交番こうばん・商店街等の場所や、利用方法を勉強しよう」

小太郎と狂四郎は、真面目まじめにノートとペンを出して、勉強をする準備じゅんびをしている。

「では、拙者せっしゃはサブウェイの、注文ちゅうもん仕方しかたから教えるでござる」

 虎之助とらのすけも、前に出て岩法師とならび、授業を始めようとした。

「いや、同時に教えると、おぼえられないから、名誉めいよ教授きょうじゅである君は、オブザーバーとしてひかえていてしい」

「なるほど、承知しょうちしたでござる」

「では、まず電車の駅の場所から教えようか」

「では、拙者せっしやはキリギリスと、トノサマバッタの見分みわけ方を、教えるでござる」

「いや、だから名誉めいよ教授きょうじゅはオブザーバーだから、今はみんな一緒いっしょに授業をいていてくれたら良いんだよ」

承知しょうちしたでござる」

 と、いう具合ぐあいに、何度か虎之助とらのすけ邪魔じゃまされながらも、何とか、岩法師は授業を進めて行くのであった。



 梅田の高層ビルの最上階では、『大阪鬼連合団体』のカンファレンスが行われていた。

 毎度まいどの事ながら、議長は鬼塚である。

「今日は良いニュースと、悪いニュースがある」

「良いニュースから、お願いします」

 若手の男性から要望ようぼうがあった。

「アホか。こういう時は、悪い方から先に聞くんや!」

 今日の鬼塚は、機嫌きげんが悪い。

「では、悪いニュースを、お願いします」

 ベテランのメンバーが言った。

「あの金鬼きんきが、DSP[デビルスペシャルポリス]の小娘にやられて逃亡した」

「まさか。金鬼きんきが!」

 連合会のメンバーは、動揺どうようしている。

「さらに、弟の銀鬼ぎんき仇討かたきうちに行って、逆に半殺しにされ田舎いなかに逃げてしまった」

ザワザワ‥‥

 会議室が、ザワついた。

「その小娘は、そんなに強いのですか?」

金鬼きんきほどの鬼が、手も足も出なかったみたいやな」

ザワザワ‥‥

 また、会議室が、ザワついた。

「良いニュースも、お願いします」

 先程さきほどの若手が発言した。

金鬼きんきが消えたので、四天王が、ちょうど4人になった。もう名前を変える必要が無くなったんで、今後は堂々と四天王を名乗なのれる」

「あの、それが良いニュースですか?」

「そうや。前回はそれでめたやろ」

「確かに、四天王が5人になってめましたけど、どうも良いニュースとは思えないのですが」

「そうかなぁ。四天王が4人になって、みんな安心したやろ?」

「それは有りますが、やはり四天王級の強い鬼は、一人でも多い方が、よろしいのでは?」

「強い鬼はいるぞ。金鬼きんきには、もう一人弟がいて、ドウ‥‥何とか言うたな」

銅鬼どうきですよ、ドウまで言ったら、もう出るでしょう」

 川島に、突っ込まれた。

「そう、その銅鬼どうきが、四天王に入りたいって志願しがんしてるんやが」

銅鬼どうきは、四天王を名乗なのれるほどうつわなんですか?」

「もう、4人居るんだから、無理でしょう」

「せっかく、四天王が4人になったトコなのに、そんなの却下きゃっかしましょう」

「しかし、自ら四天王に入りたいとは、たのもしいやつでは?」

 メンバーの意見は、れている。

「じゃ、牛鬼ぎゅうきと試合させて、勝てれば牛鬼ぎゅうきわりに、四天王入りさせるっていうのは、どうでしょうか?」

 川島が提案ていあんした。

「それや!」

 鬼塚は手をって賛成さんせいした。



 寺子屋てらこやの初日が終わり、メンバーは宿舎しゅくしゃの食堂で、くつろいでいた。

「いやぁ、今日の授業じゅぎょうためになったな」

 狂四郎は授業じゅぎょう満足まんぞくしている。

「そやな、俺ら電車のマナーとか、全然ぜんぜんらへんかったしな」

 小太郎も満足まんぞくそうな様子ようすである。

拙者せっしゃは、かも何故なぜアヒルになったかの授業じゅぎょうを、したかったでござる」

 虎之助とらのすけだけは、不服ふふくそうであった。

「えっ、アヒルってもとかもやったんですか?」

 小太郎は少しおどろjいている。

「そうでござるよ」

「へえ、姉さんは博識はくしきやなぁ」

「でも、それ知ってても役に立たないだろう」

 狂四郎は、興味きょうみ無さそうに言った。

「役に立つでござる」

「立たない」

「立つでござる」

「じゃ、役に立つ方法を教えてくれ」

「わかったでござる。では、新しく出来でき焼肉屋やきにくやで説明してやるので、お前がおごるでござる」

「えっ、俺がおごるの?」

「何言ってるんや、教えてもらうのに、焼肉やきにくぐらいおごるのは、現代では常識やろ」

「そうなのか」

 狂四郎は、しぶしぶ虎之助とらのすけと小太郎を、焼肉やきにく屋に連れて行く事になった。



 日本テクノロジーコーポレーションの所有しょゆうするグランドでは、牛鬼ぎゅうき銅鬼どうきいどんでいた。

 見届みちどけ人は、黒瀬である。

 銅鬼どうきは2人の兄を、小娘にたおされてしまったので、元は鬼界では名門であった一族いちぞくへの風当かぜあたりが、急激きゅうげきに悪くなってしまった。

 一族の名誉めいよ回復かいふくするために、どうしても四天王になる必要がある。

 銅鬼どうき末弟まっていであり、今までは兄達を立てていたが、実力では、自分が一番だと自負じふしていたので、牛鬼ぎゅうきなど容易たやすたおせると思っていたのだが、手合てあわせしてみると意外いがいと強いではないか。

 特に自在じざいに動く鋼鉄こうてつようつめが、厄介やっかいであり、スピードもパワーも想像以上である。

 牛鬼ぎゅうきの方も、最大の武器であるつめでの攻撃こうげきが、銅鬼どうきかた皮膚ひふつらぬけず苦労くろうしていた。

 金鬼きんき末弟まっていと言う事で、少しナメていたが、皮膚ひふかたいだけで無く、攻撃こうげき力も半端はんぱでは無い。

 あの剛腕ごうわんからり出される打撃だげきを、まともに受けたら、骨の一本や二本の骨折こっせつではまないだろう。


双方そうほうとも苦労くろうしているな」

 黒瀬からみても、ほぼ互角ごかくの試合である。

 その時、バリバリッという音とともに、グランドの一角いっかくに小さなかみなりが落ちた。

「雨もっていないのに、なぜかみなりが落ちるんだ?」

 黒瀬が不思議ふしぎがっていると、かみなりが落ちた場所に、はだかの男がひざを付いて、しゃがんでいる。

「何だ、ありゃ?」

 銅鬼どうき牛鬼ぎゅうきも、その男に気づいて試合を中断ちゅうだん様子ようすうかがっている。

何故なぜはだかなんだ?」

 牛鬼ぎゅうきは、何だか、こんなシーン映画で見た事ある、たしかヤバい展開てんかいになったような、と思い、警戒けいかいして後ろに下がった。

 男は、ゆっくり立ち上がりまわりを見渡みわたすと、一番近くに居た銅鬼どうきの方にゆっくり歩いて来た。

「オまえふくヲ、ヨコセ」

 はだかの男が銅鬼どうきに言った。

馬鹿ばかか、こいつは」

 銅鬼どうきあきれていると、はだかの男が銅鬼どうきの服を引っ張ってがそうとした。

「何しやがる!イカれてるのか!」

 銅鬼どうきが、思いっきりはだかの男をなぐりつけた。

「痛ッ!」

 なぐった銅鬼どうきの方が痛がり、こぶしをさすっている。

 はだかの男は、両手で銅鬼どうき胴体どうたいを持ち、そのまま上空じょうくうほうり投げた。

 投げられた銅鬼どうきは、大気圏たいきけん突破とっぱして、火星まで飛んで行ってしまった。

「何者だ?」

 黒瀬が、近づいて来た。

われハ、鬼神きしんヨリおくラレタ、おにロボ、デアル」

「鬼神からだと?京都からか?」

大阪支部おおさかしぶノ、責任者せきにんしゃニ、ワセロ」

「鬼神からの使者か、良いだろう会わせてやる。だが、その前に服を着ろ」

 黒瀬は、グランドにあった適当てきとうなジャージを、鬼ロボに渡しながら言った。



 梅田の高層こうそうビルの最上階では、『大阪鬼連合会団体』の緊急きんきゅうカンファレンスが行われていた。

 議長は、当然とうぜんの事ながら鬼塚である。

紹介しょうかいしよう、京都の鬼神より、転送されて来た鬼ロボだ」

 京都の鬼神と聞いて、会議の参加メンバーに緊張きんちょうが走った。

大阪支部おおさかしぶガ、不甲斐ふがいナイノデ、鬼神ガ俺ヲ、送り込ンデ来タ」

「最近はDSPのやつらに、やられっぱなしですからねえ」

 年配ねんぱいのメンバーが言った。

「何デモ、オ前達ハ、若イ小娘ニ、何人モたおサレテルソウジャナイカ」

「良く知ってますね」

「鬼神ノ情報網じょうほうもうヲ、ナメテハ、イケナイ」

「しかし、あの娘は強すぎます」

大丈夫だいじょうぶダ、ソノためニ、私ガ来タノダ」

「じゃ、アンタがあの娘をってくれるんか?」

マカセテオケ、私ガ、ソンナ小娘、秒殺びょうさつシテヤル」

 どうやら、鬼ロボは、京都からのすけらしい。

「ほう、たのもしいやないかい」

 鬼塚は嬉しそうである。

「ところで、アンタは何故なぜはだかで来たんだ?」

 川島が質問した。

 今は服を着ているが、転送された時、鬼ロボははだかであった。

「京都カラ大阪ヘノ転送ハ、膨大ぼうだいナ、エネルギーヲ、使ウノデ、出来ルダケ、質量しつりょうラスためはだかニナッタノダ」

ーーそんなにエネルギーを使うのなら、普通に電車で来れば良いのにーー

 鬼ロボ以外のメンバーは思った。

「ええっと、鬼ロボには、女性型もいるのですか?」

 若いメンバーが質問した。

「今ハ、ナイガ、今後ハカラン」

「お前、女の鬼ロボがったら、どうするつもりなんや?」

 鬼塚は疑問ぎもんに思った。

「いえ、別に。ただ、私は女が転送して来る所を、見たいと思いまして」

「いや、見たら駄目だめやろ」

駄目だめって言われても、見たいモノは見たいんです」

駄目だめなもんは、駄目だめや、このド助平すけべいが」

「いや、決して助平すけべいな気持ちでは無く、男として本能的ほんのうてきに見たいのです」

世間せけんでは、そういうのを、助平すけべいと言うんや」

「いい加減かげんに、して下さい。そんな事より、鬼ロボがDSPの小娘をたおす計画を立てましょう」

 川島が切れ気味ぎみ提案ていあんした。

「それも、そうやな」

「じゃ、鬼ロボが銅鬼どうきとやり合った時に、現場に居た黒瀬の意見を聞こうか」

 川島が仕切しきり始めた。

「そうですね。牛鬼ぎゅうき銅鬼どうきは、ほぼ互角ごかくの試合をしていたのですが、銅鬼どうきは割り込んで来た鬼ロボに、速攻そっこう空高そらたかくく放り投げられてしまいましたから、鬼ロボの強さは相当そうとうな物だと思います」

 と、黒瀬は証言しょうげんした。

「放り投げられた銅鬼どうきは、どこへ行ったんや?」

「あのいきおいだと、おそらく大気圏外たいきけんがいまで行ったと思われます」

 見た通り正直に答えたのだが、まわりから胡散うさんくさい目で見られてしまった。

「俺ノ計算デハ、火星アタリマデ、飛ンダ、ハズダ」

 鬼ロボが冷静に言うと、会議のメンバーはみな背筋せすじが寒くなった。

「ごっつい力やなぁ、コイツならDSPの小娘もイチコロや」1人、鬼塚だけは、喜んでいる。

『大阪鬼連合団体』の会議は、もうしばらく続くのだが、今回は、めずしく意味ある会議であった。



 焼肉やきにく屋では、虎之助とらのすけ達が、狂四郎のおごりで焼肉やきにくを食べていた。

「姉さん、やっぱり焼肉やきにく美味うまいですねぇ」

「モグモグ、牛タンもカルビも美味おいしいでござるな」

「姉さん、ハラミもイケますよ」

拙者せっしゃにもハラミを、よこすでござる」

「ホルモンも、美味おいしいですよ」

拙者せっしやにもホルモンを、よこすでござる」

「もうそろそろ、役に立つというのを、教えろよ」

 シビレを切らした狂四郎が虎之助とらのすけに言った。

「ええっと、確か、仮想通貨かそうつうかで10万円を1億円にする方法だったでござるね」

 面倒めんどくさそうに、虎之助とらのすけが言った。

ちがうわ!」

 狂四郎はおこっている。

「では、拙者せっしや紹介しょうかいする未公開株みこうかいかぶで、もうける話だったでござる、モグモグ」

 ハラミを食べながら虎之助とらのすけが言った。

ちがうって!何で、お前が未公開株みこうかいかぶの情報なんか知ってるんだよ!」

「じゃ、必ずもうかる、元手もとで保証ほしょう投資とうしの話だったでござるね」

「いや、そんなあやしいもうけ話じゃなくて、アヒルの話だよ」

「アヒルの話は、そこのカフェで、タピオカミルクティーを飲んでから、するでござる」

「てめえ!いい加減かげんにしろ!」

 狂四郎がキれた。

「くらえ!新田家にったけ仙道透視術せんどうとうしじゅつ!」

 狂四郎は仙道せんどう奥義おうぎを使って、虎之助とらのすけを見た。

「何してるでござるか?」

 虎之助とらのすけが、不思議ふしぎそうに聞いた。

「今、透視術とうしじゅつでお前の下着したぎを見ているのだが、お前のブラジャーってスポーツブラだし、Aカップしか無いじゃないか見てそんしたぞ」

バキッ!

「くふぅ」

 狂四郎は虎之助とらのすけに、思いっきり頭をなぐられ、そのまま救急きんきゅう搬送はんそうされ、一週間ほど入院する事となる。



 警察病院けいさつびょういんでは、左近さこんが退院する所であった。

「やっと退院か」

 病院前のロータリーまで行くと、安倍顧問あべこもんが車でむかえに来てくれていた。

「いつもすいません」

 車に乗り込みながられいを言った。

「傷は、もう良いのか?」

「はい、もう大丈夫です」

「何度目の入院だ?」

「えっ、たぶん五回目ぐらいだと」

「お前も、わかっていると思うが、最近は出現する鬼が強くなって来ている」

「そのようですね」

「もう、お前の剣だけでは、この先の戦いはきびしくなる」

 左近さこんは、だまっている。

「これからは、岩法師の法力ほうりきや、虎之助とらのすけ忍術にんじゅつのような特殊能力とくしゅのうりょくが必要となって来る」

 まだ、左近さこんだまっている。

「いい加減かげん観念かんねんして、俺の陰陽道おんみょうどうまなべ。お前なら、誰よりも強くなれる」

「でも、俺は剣が」

「わかっている、お前は武士の出だ。だが、そのせいで余計よけいなプライドを持っている」

左近さこんは、まただまった。

「そんな物は、捨てろ。俺も陰陽師おんみょうじとしてのプライドは、とっくに捨てている」

安倍顧問あべこもんが?」

「そうだ。安倍一族は、血統けっとうでは無く実力で任務にんむが決まる。一番才能いちばんさいのうがあるやつが京都府警、二番目が警視庁の顧問こもんとなる」

「では、大阪府警にいるアンタは?」

「俺は安倍一族に産まれ、当初は秀才と持てはやされていた」

左近さこんだまって聞いている。

「だが、後で産まれた弟2人が天才であった。当然とうぜんながら、すぐに陰陽師おんみょうじとして弟達にかれてしまった。今は次男が京都、三男が東京へと任務にいている。

 俺も任務にんむいた当初とうしょは、弟達に対しての意地があり、陰陽道おんみょうどう見返みかえそうとしたが、陰陽道おんみょうどうにこだわり過ぎて、任務にんむに失敗し一般市民に犠牲者ぎせいしゃを出してしまった。

 以来いらい、俺は陰陽師おんみょうじとしてのプライドを捨て、じゅうでも何でも使える物は使うようになった」

ーーそうだったのか。今まで、エリートと思っていたのだが、人には色んな事情があるものだ……俺も剣に対するプライドにこだわっていては、この先、一般市民を守る事がむずかしくなるだろうーー

「お前には、人並ひとなはずれた忍耐力にんたいりょく集中力しゅうちゅうりょくがある。俺が指導しどうすれば、弟よりも優秀な陰陽師おんみょうじになれるやもしれん。しかし、そのためには武士としてのプライドを、捨てなければならない。だが逆に、そうしなければ忍者にんじゃ僧侶そうりょ出身しゅっしんの者にで負ける事になる」

「わかりました、俺に陰陽道おんみょうどうを教えて下さい、誰よりも強くなってみせます」

 左近さこん安倍顧問あべこもんに、深々ふかぶかと頭を下げた。



 安倍顧問あべこもん左近さこんが熱くかたっている同時刻どうじこくに、はるか遠く離れた場所では、それ以上に熱いおとこがいた。

 鬼ロボに火星までばされた銅鬼どうきは、タコ型の火星人、タコ太郎と友達になっていた。

 タコ太郎の話では、火星は『山田タコ14世』と呼ばれる独裁者どくさいしゃが、圧政あっせいいており、火星人達は苦しんでいると言う。

 土地はせており、作物は不作ふさくが続いているが、ぜいは高く、農民の生活はまずしい。

 さらに、ぜいの取り立てはきびしく、はらえない者は、火星王家かせいおうけ親衛隊しんえいたい逮捕たいほされ、ダコにされて、『山田タコ14世』の朝食にされるらしい。

「『山田タコ14世』か、とんでもない外道げどうだ。ゆるせぬ!」

 銅鬼どうきは、その生涯しょうがいけ、『山田タコ14世』をたおす事を、決意けついするのであった。

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