第14話 アンドロポプVS虎之助


話しは、前回より少し前にもどる。

 虎之助とらのすけと小太郎は、仲良なかよくアメリカ村で買い物をしていたのだが、2人同時に異変いへん気付きづいた。

 虎之助とらのすけ後方こうほうから来る大男から強烈きょうれつ殺気さっきかんじ、小太郎は前方ぜんぽうから桜田刑事の悲鳴ひめいかすかにこえた。

「姉さん、どうします?」

拙者せっしゃが後の男の相手あいてをするので、小太郎は桜田刑事の方に行くでござる」

承知しょうちつかまつった」

 そう言うと、小太郎は疾風しっぷうのようにけ出した。

 虎之助とらのすけの方は、大男がけて来るのを確認かくにんすると、あえて人気ひとけの無い路地ろじに向かう。



「あれっ、あの娘どこに行きやがった」

 路地ろじに入ったアンドロポプは、いきなり虎之助とらのすけ見失みうしなってしまった。

「なぜ拙者せっしゃける?」

 何処どこからか娘の声が聞こえる。

「上からの命令めいれいでな。かくれても無駄むだだ、悪いが死んでもらう」

 アンドロポプは口から大量たいりょうけむりき出した。

ーーマズい、これはどくガスでござるなーー

 路地ろじのビルのかべいていた虎之助とらのすけは、素早すばや地面じめんせた。

「ほう、姿すがたあらわしたな。だが、俺がどくガスを出している間は近寄ちかよれまい」

 けむりきながらも、そう言うと、アンドロポプはポケットから数本のナイフを取り出し、虎之助とらのすけめがけて高速こうそくで投げつけた。

ブスブスッ!!

 ナイフのさる音がする。

「たわいもない」

ズボッ!!

 勝利しょうり確信かくしんしたアンドロポプの頭頂部とうちょうぶから足元あしもと地面じめんまで、鉄パイプがつらぬいた。

 地面じめんせたのは、わりじゅつの服だけで、虎之助とらのすけ本体はビルの屋上おくじょうから鉄パイプを投げたのである。

「くそう!油断ゆだんした」

串刺くしざしにしたのに、まだ生きてるとは、しぶといでござるな」

「この程度ていどでは死なん」

 なんとアンドロポプは、両手で自分を串刺くしざしにしている鉄パイプをはじめた。

「タフな男でござるな」

 虎之助とらのすけ屋上おくじょうからりて来た時には、鉄パイプをき終わっていた。

「とどめをすでござる」

 虎之助とらのすけは、アンドロポプに向かって走る。

 アンドロポプは、ぎゃく跳躍ちょうやくして虎之助とらのすけ屋上おくじょうに上がった。

ーーこのままブチ殺してやりたいが、さすがにダメージが大きい、とりあえず回復かいふくしなければーー

勝負しょうぶあずける」

 と言い、素早すばやって行ってしまった。

いかけたいでござるが、小太郎の方が気になるでござるな」

 わりじゅついだ服を着ると、虎之助とらのすけは小太郎の向かった方向へ走り出した。



 一方いっぽう、前回から、小太郎と馬頭めずとのたたかいが行なわれていた。

 右腕みぎうでを切り落とされた馬頭めずは、いかくるいながら小太郎に向かって行く。

「姉さんからおそわった、唐沢流からさわりゅう剣術けんじゅつ相手あいてしてやる」

 馬頭めずは、右腕みぎうで再生さいせいさせながら

「ブチ殺す!!」

 と、小太郎になぐりかかる。

唐沢流からさわりゅう千枚切せんまいぎり!」

 すかさず小太郎は、必殺ひっさつ奥義おうぎを出す。

「クフッ」

 バタッと馬頭めずたおれる。

「どうや、一秒に千回攻撃せんかいこうげきした。貴様きさまはもう二度と立てん」

 勝ちほこる小太郎の足首あしくびつかむと、馬頭めずが立ち上がった。

「何が一秒に千回せんかいだ。せいぜい3回ぐらいだったぞ」

「しもた、みがあまかっかた」

「いや、みの問題もんだいじゃ無く、3回しかられてないって」

 馬頭めずに、まれた。

「デタラメ言うな、ちゃんと千回斬せんかいきったわ、このバカ鬼!」

「なんだと!3回だけだったぞ、このアホ男!!」


 小太郎と馬頭めず激戦げきせんおこなっているスキに、狂四郎は牛頭ごず背後はいごから、馬頭めずの落とした金棒かなぼうなぐりかかった。

「死ね!鬼野郎おにやろう!!」

ボコッ!!

「痛てッ!何すんだ、この野郎やろう!」

 牛頭ごず後頭部こうとうぶ命中めいちゅうするが、おこらせただけで、意外いがい効果こうかは無かった。

 腹部ふくぶにダメージをった狂四郎は、あきらかに劣勢れっせいである。

大丈夫だいじょうぶ?狂四郎君」

 桜田刑事は、拳銃けんじゅうかまえているが、このレベルの鬼には効果こうかが無いことは、承知しょうちしている。


 4人が激闘げきとうり広げている間に、虎之助とらのすけ到着とうちゃくした。

「こっちには、鬼がたのでござるね」

「あっ、姉さんや。今こいつを殺すので待っといて下さい」

 小太郎は、っている。

「お前のようなアホに、殺されてたまるか!」

 馬頭めずは、相変あいかわらず切れている。


虎之助とらのすけ!狂四郎君を助けて!」

 桜田刑事がさけんだ。

 意外いがい牛頭ごずは強く、狂四郎が押されている。

承知しょうちしたでござる」

 素早すばやく、狂四郎と対峙たいじしている牛頭ごず後方こうほうから側面そくめんまわると、虎之助とらのすけは刀をいてりかかった。

唐沢忍術からさわにんじゅつ3枚おろし」

パサッ!

 ハラりと牛頭ごずは横から3枚にれて、そのままたおれた。

「わっ!大変たいへんだ!!」

 3枚におろされた牛頭ごずを見て、あわてた馬頭めずが、3枚にられた牛頭ごずかかえて逃げ出した。

「俺におそれをなして逃げたな。口ほどにも無いやつだ」

 逃げて行く馬頭めずに向かって、小太郎は勝ちほこっている。

「助かったわ、ありがとう虎之助とらのすけ

 初めて桜田刑事からめられた。

 狂四郎は、はらを押さえてうずくまっている。

大丈夫だいじょうぶ?狂四郎君」

 う桜田刑事。

「やっぱり、あの2人は出来できてまんなぁ」

 確信かくしんする小太郎。

「お腹が減《》ったでござる」

 空腹くうふくうったえる虎之助とらのすけ



 アメリカ村での戦闘せんとう一旦いったん終わったが、はなれた所でライアンとマーゴットが、たたかいの一部始終いちぶしじゅうを、タコ焼きを食べながら見ていた。

「やはり、あの小娘はクセ者だな」

「アンドロポプは、大した事ないじゃん」

「いや、アイツは強いハズなんだけどなあ」

「姉ちゃん、手ぇにぎってもええ」

駄目だめに、決まってるでしょ!って何で、ここにるのよ!」

 いつの間にか、小太郎がマーゴットの手をにぎろうとしている。

拙者せっしゃにも、タコ焼き、ちょうだい」

「うわっ!お前もか!!」

 虎之助とらのすけも来ている。

「このタコ焼きあげるから、あっちに行ってなさい!」

 小太郎と虎之助とらのすけは、タコ焼きを渡されて、追っ払われてしまった。



「ここまで来れば大丈夫だな」

 馬頭めずは、瀕死ひんし状態じょうたいである牛頭ごずかかえて難波なんばまで逃げて来た。

「おい、大丈夫だいじょうぶか?」

 少しずつ治癒ちゆして来ているが、さすがに3枚におろされた牛頭ごずは、まだ返事へんじ出来でき状態じょうたいでは無い。

トン!

 見知みしらぬ男とかたがぶつかったので、馬頭めず

失礼しつれい

 と、謝罪しゃざいして立ちろうとしたが、男にうでつかまれた。

「待て、お前達は鬼だな」

「なんだと、お前は何者だ?」

「俺の名は阿部仲麻呂あべのなかまろ、今から死ぬお前には、おぼえる必要ひつようは無いがな」



左近さこん行方不明ゆくえふめいになった」

 DSP(デビルスペシャルポリス)の宿舎しゅくしゃでは、めずしく安倍顧問あべこもんを中心にミーティングが行なわれていた。

奈良県警ならけんけい大伴おおとも警部けいぶより連絡れんらくがあった。飛鳥あすか複数ふくすうの鬼とたたかった形跡けいせきがあり、鬼の遺体いたいは数体あったのだが、左近さこん遺体いたいは無く、行方ゆくえがわからないそうだ」

重傷じゅうしょうって、何処どこかへ運ばれたとか?」

 一番仲の良かった、岩法師が心配しんぱいそうに聞いた。

奈良県警ならけんけいが、近隣きんりん病院等びょういんなどに問い合わせてみたが、左近さこんらしき者は来ていないそうだ」

不思議ふしぎな話でんなぁ。左近さこんさんが自分で動ける状態じょうたいなら、病院か奈良県警にもどっているハズですもんね」

 小太郎も心配しんぱいしている。

「とりあえず、俺のチワワ、岩法師のヤモリ、虎之助とらのすけのタヌキの式神しきがみ捜索そうさくしてみよう。もしかすると、大阪に帰って来ているかもしれん」

「俺のゴキブリの式神しきがみは」

 小太郎は自信じしんりげに聞いた。

「それは、いらん!」

 キッパリとことわれた。

「あと、大伴おおとも警部けいぶが気になる事を言っていたのだが」

「どんな事ですか?」

 桜田刑事が聞く。

飛鳥あすかには、陰陽師おんみょうじ修行中しゅぎょうちゅうまれではあるが、阿部仲麻呂あべのなかまろの家があらわれるそうだ」

「それは、誰でござるか?」

陰陽師おんみょうじを日本にんだ、奈良時代ならじだいの俺の先祖せんぞだ。左近さこんにも阿部仲麻呂あべのなかまろの家が見えたそうだ」

「その男が、あやしいでござるね」

「それは、まだ、わからんが。とにかく式神しきがみを使える者は、早速さっそく捜索そうさくしてくれ」

「俺のゴキブリの式神しきがみは?」

「それは、いらん!」

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