第15話 ライアンVS虎之助

関西国際空港かんさいこくさいくうこうに3人のエージェントがり立った。

 老人1人と若い男女である。

「リンゼイ老子、ここからは車が用意よういされているので、京都まで車でまいりましょう」

 若い男が老人につたえる。

「いや、一旦いったん車で大阪にってくれ」

「老子、我々われわれは『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんください』の京都支部きょうとしぶばれているのですよ」

「わかっておるが、大阪でまさないといけない用があるのじゃ」

「アーナヴわかってあげて、老子は、弟子のラディッシュとナジャを殺した者を、見てみたいのよ」

「しかしマニッシュ。理事会りじかいからの指示しじでは京都に行くようにと」

 若い男がアーナヴで、女がマニュシュと言う名らしい。

「アーナヴ。ワシも『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』の理事りじじゃぞ」

「それは、わかってますが」

「それに、大阪の者も、ワシに用があるみたいじゃ」

 リンゼイ老子がゆびさす先に、一人の男がる。阿部仲麻呂あべのなかまろである。

「アンタをっていた」

だれだ、お前。何の用だ?」

 アーナヴは警戒けいかいする。

「俺は阿部仲麻呂あべのなかまろ過去かこ精算せいさんするためよみがえった。リンゼイ・カーン老子にたのみたい事がある」

「なるほど、ワシの素性すじょうも知っとるのか。では、お前も一緒いっしょに車にれ、中で話を聞く、ワシらはいそぐのでな」



 高層こうそうビルの最上階さいじょうかいでは『大阪鬼連合団体おおさかおにれんごうだんたい』の定例ていれい会議かいぎおこなわれていた。


「本日は、みなさんに良いお知らせと、悪いお知らせがあります」

 今回も議長ぎちょうは、鬼塚おにずかである。

「悪い方からおねがいします」

 若い男が言った。

「では、悪いお知らから行きます。奈良にDSP[デビルスペシャルポリス]のリーダー暗殺あんさつに向かった、チャッピー君が死にました」

「議長。チャッピー君はアンドロイドだから、死んだと言うのは、おかしいのでは?」

「そうかな?じゃ、チャッピー君がこわれました」

なおせますか?」

無理むりだと思います。ついでに、牛頭ごず馬頭めずも、DSPの転送者てんせいしゃりに行ってから行方不明ゆくえふめいです」

戦力戦力がた落ちですね。良いニュースの方は?」

「京都に修行しゅぎょうに出していた、牛鬼ぎゅうき黒瀬くろせが帰って来ました」

「その2人は、かなり戦闘力せんとうりょくが上がったのでしょうね」

「黒瀬の話によると、エイブラムス戦車せんしゃ120台分の戦闘力せんとうりょくがついたそうです」

米軍べいぐん主力戦車しゅりょくせんしゃですか。しかし、わかりにくいたとえですね」

出来できれば、チンパンジーでたとえてくれませんか?」

出来できません」

「では、うまいぼうあじで、たとえて下さい」

出来できるかボケッ!!」

 鬼塚が切れた。

「うまいぼうあじで、戦闘力せんとうりょくたとえれるわけないやろ!!」

「まあ、議長ぎちょういて」

 川島が、なだめる。

「では、ガリガリ君のあじで、たとえて下さい」

「うま塩豚しおぶたカルビあじやな」

 自信じしんありげに、鬼塚は答えた。

「それはたとえれるんかい!!しかも、そんな味無あじないし!!」

 川島にまれた。

「とにかく、チャッピー君と牛頭ごず馬頭めずが消えて、牛鬼と黒瀬が帰って来たっちゅうこっちゃ」

「3人消えて2人帰って来たから、少しマイナスですね」

「まあ、そう言うこっちゃ」

大阪鬼連合団体おおさかおにれんごうだんたい』の定例ていれい会議かいぎは、いつもの事ながら、内容ないよううすかった。



「なるほど、お前さんは世の中から陰陽師おんみょうじや鬼を、一掃いっそうしたいと言うんじゃな」

 車中しゃちゅうで、リンゼイ老子は左近さこんこと阿部仲麻呂あべのなかまろと話し合っている。

「そうだ。陰陽師おんみょうじと鬼は、この世にってはならぬ者。すべて抹殺まっさつする。そのために俺はDSP[デビルスペシャルポリス]の左近さこん融合ゆうごうしたのだ」

「それで、どちらもほろぼした後、おぬしは、どうするのじゃ?」

冥府めいふもどる。俺もまた、この世に存在そんざいしてはいけない者だ、この国に陰陽師おんみょうじつたえた責任せきにんもあるしな」

たしかに、お前さんの目的もくてきは、われらの組織そしき目的もくてきと同じではある」

「老子、この男の言う事を、鵜呑うのみにしては危険きけんです」

 アーナヴは、阿部仲麻呂あべのなかまろの言う事を信用していない。

「話を聞くと、お前さんは阿部仲麻呂あべのなかまろであるが、同時にDSPの左近さこんでもある。左近さこんとして、今までの仲間なかまを殺す事が出来るのかを、アーナヴはうたがっているんじゃよ」

「もちろん、この身体からだ左近さこんであるが、DSPの左近さこん最強さいきょうになる事だけをのぞんでいた。今の俺にとってはDSPの連中をるなど、造作ぞうさもない事である」

「わかった。では、手始てはじめにDSPの転送者てんせいしゃ一人殺ひとりやって来てくれ。そうすれば、お前さんに協力きょうりょくしよう」

承知しょうちした」


 話がき、左近さこんが車をりた直後ちょくごに、アーナヴが予想通よそうどお

いのですか、あの男を信用しんようしても?」

 と、確認かくにんしてきた。

「あの男は、小細工こざいくなど必要ひつようないほどすさまじい力を持っている。あれほどの男がたのみに来たのじゃ、信用しんようしてやらねばいかんじゃろ」

「老子が、それほどまで言われるのでしたら」

 アーナヴも納得なっとくしたようである。



 前回ぜんかいは、虎之助とらのすけのジャンバーを買いそびれてしまったため虎之助とらのすけと小太郎は、ふたたびアメリカ村にやって来た。

「あれっ、姉さん。あの2人、この前いた『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』のやつらとちゃいますか?」

 ライアンとマーゴットが、また公園こうえんでタコ焼きを食べている。

「タコ焼きをもらいいに行くでござる」

「俺は、あの姉ちゃんを、デートにさそおう」

 虎之助とらのすけ達がマーゴットの方へ向かっていると、黒塗くろぬりりの高級車こうきゅうしゃから1人の男がりて来て、ライアンに話しかけている。

「お前達、またサボっているな」

 アーナヴがあきれながら、ライアンに向かって言った。

「なんだ、お前か。日本に来ていたのか」

「俺だけじゃないぞ、リンゼイ老子も一緒いっしょだ」

「マジで!老子が大阪なんかに何の用だ?行くなら京都か東京だろ?」

弟子でしのラディッシュとナジャをったやつを、見てみたいそうだ」


「アンタら、あっち行きなさいよ」

拙者せっしゃは、そのタコ焼きが食べたいでござる」

「姉ちゃん、手ェにぎらしてぇや」

 ライアンのすぐとなりで、マーゴットが虎之助とらのすけと小太郎にからまれている。


「それなら、あの娘だ」

 ライアンが虎之助とらのすけゆびさした。

うそだろ?あんな娘にられる2人じゃないぞ」

 アーナヴは、信じない。

「本当だから仕方しかたないだろ。氾会はんかい達も、あの娘にられたんだから」

「そうなのか?」

 しばらく、虎之助とらのすけを見ていたアーナヴは、車にもどると、リンゼイ老子に虎之助とらのすけの事を報告ほうこくした。


「あんな小娘に、ラディッシュとナジャがけたと言うのか……」

 さすがにリンゼイ老子はおどろいて、車のまどから虎之助とらのすけを見つめる。

「しばらく大阪にる事になりそうじゃな。アーナヴ、すまないが大阪にホテルをとってくれんか」

「わかりました。しかし、アイツら何やってんですかね?」

 アーナヴは、まだ虎之助とらのすけを見ている。

「よほど余裕よゆうがあるか馬鹿ばかか、どちらかじゃな」

 リンゼイ老子の車は走りって行った。



「姉ちゃん、面白おもしろプール行かへんか?」

「行かないわよ!そんなへんなトコ」

「タコ焼き1個ちょうだい」

「あげないわよ!アンタ達、敵でしょう!」

 まだ、マーゴットはからまれている。

「敵でも、タコ焼きしいでござる」

「敵とか、そんなんどうでもエエやん」

「おい!お前ら、いい加減かげんにしろ!!それに、面白おもしろプールって何だ?」

 ライアンが中途半端ちゅうとはんぱおこり出した。

「何やお前!この姉ちゃん、お前の彼女か?」

 小太郎は、喧嘩けんかごしである。

「タコ焼きくれたら、あっち行くでござる」

「クソッ!大阪DSPの連中れんちゅうは聞いてたのより、たちが悪いな。千円やるから、そこの店でタコ焼き買って来いや!」

 ライアンが、千円札せんえんさつ虎之助とらのすけに渡そうとした時、虎之助とらのすけ素早すばや小刀こがたなをライアンの首元くびもとてて

「お前が買って来るでござる」

 と、おどした。

ーーはやい!コイツいったい何者だ。動作どうさまったく見えなかったーー

 結局けっきょく、ライアンにタコ焼きを買って来てもらい、上機嫌じょうきげん虎之助とらのすけ達はって行った。

「どうしたの?あんな小娘の言いなりになって?」

 マーゴットは、ライアンが虎之助とらのすけおどされてタコ焼きを、買って来た事が理解りかい出来できなかった。

「あの娘、おそろしく強い。ことわったら確実かくじつに殺されていた」

 ライアンのひたいからは、あせが流れていた。

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