第16話 黒瀬のリベンジ

最初に対決した廃校はいこうのグランドで、虎之助とらのすけ黒瀬くろせ対峙たいじしていた。

 何故なぜこうなったかと言うと、話は少しさかのぼる。



 日本テクノロジーコーポレーションの社長室しゃちょうしつ黒瀬くろせび出されていた。

「京都での修行しゅぎょうで、かなりうでが上がったようやな」

「はい、おかげさまで、エイブラムス戦車せんしゃ120台分の戦闘力がきました」

たいしたもんやなぁ」

「さっそくだが、君に任務にんむあたえる」

 川島が説明せつめいする。

「どのような任務にんむですか?」

れいの、DSP[デビルスペシャルポリス]の小娘を抹殺まっさつしてしい」

ーーある程度ていど予想よそうしていたが、やはりそうかーー

「わかりました、今の私なら勝てると思います」

「ほう、あんだけビビってたのに、えらい自信じしんやんけ」

確実かくじつに勝てると思います。鬼神きしんにお会いした時もおめの言葉ことばいただきました」

「そりゃすごいやんか」

「それで、若林は、どうします?一緒いっしょれて行きましょうか?」

「いや、あいつにもリベンジする相手あいてがいるんや」

「ああ、確か左近さこんとか言うDSPのさむらいですね、奈良で襲撃しゅうげき失敗しっぱいしたって言ってましたから」

「君は、良く知ってるねぇ。あまり知りすぎると、長生ながい出来できんぞ」

 鬼塚にすごまれた。

「すいません、以後いご気をつけます」

 意外いがいな鬼塚の迫力はくりょくに黒瀬はビビってしまった。

「君らは知らんと思うけど、この会社には、知りすぎるた者を抹殺まっさつする処刑鬼しょけいおにがいるんや。気をけるんやで」

「はい、わかりました」

 黒瀬は、ビビリながら退出たいしゅつした。


「社長、処刑鬼しょけいおになんてウチの会社にましたっけ?」

 黒瀬が退出たいしゅつすると、すぐに川島が聞いて来た。

「いるよ」

「誰なんですか?」

「お前や。熊堂子くまどうじむかしから処刑鬼しょけいおにやくなんや」

「そんな事、私は知りませんでしたよ」

「俺も知らんかったけど、ネットで調しらべたらそうやったんや」

「ほな、しゃないですね」

「そやな」

 と言う事で、黒瀬は、因縁いんねんふか虎之助とらのすけ対決たいけつする事になったのである。

「それでは、私が魔界まかいに行って、有望ゆうぼうな鬼を集めて、処刑鬼隊しょけいおにたいを作ってはどうでしょうか?」

 川島の提案ていあん

「グッドアイデアや。じゃあ、俺は地獄じごくに行って、名のある鬼を集めてくるわ」

 鬼塚もめずらしく協力おにずかする事にした。



 ライアンとマーゴットは、相変あいかわらずアメリカ村の公園こうえんでタコ焼きを食べていた。

「あれっ?こっちに向かって来るのはアンドロポプじゃない」

いややつに見つかったな」

「よう、ライアンじゃないか、となり美人びじんさんは誰だい?」

 アンドロポプは、気さくに声をかけて来る。

「俺の同僚どうりょうのマーゴットだ」

「こんな美人とデートなんて、うらやましいな」

「そう言うお前も、女の子をさがしてるんじゃないのか?」

「良く知ってるな、アメリカ支部しぶ情報じょうほうだけは早いからな。さがしているのはDSPの娘だが、何処どこにいるのか知らないか?」

「あの娘はめとけ、お前の勝てる相手じゃない」

「何だとテメエ!俺がけるとでも言うのか!」

一度負いちどまけたじゃないか」

「クソッ!お前らは何でも調べてやがるな。だが、次はかならずブッ殺す!」

無理むりだ。あの娘の強さは、俺達とは次元じげんちがう。俺達が空母くうぼ3隻分せきぶんの強さだとしたら、あの娘は宇宙要塞うちゅうようさいデス・スターなみの強さだ」

「デス・スターって、何だ?」

「スターウォーズに出て来る、球体きゅたいのデカくて黒い宇宙要塞うちゅうようさいだ」

「あの小娘が、そんなに強いハズないだろ」

 アンドロポプは、うたがっている。

「それに、リンゼイ老子が、あの娘の事をねらっている。老子にまかせておけば良い」

「なにっ!あのリンゼイ老子が……」

 さすがのアンドロポプもおどろいている。

「じゃ俺も、しばらくは、ここでタコ焼きを食べてごそう」

「いや、あっち行けよ」

「いいじゃねえか、俺もその美人びじんさんと仲良なかよくなりたい」

 アンドロポプは、いやがられながもライアン達と合流ごうりゅうする事になる。



「では行くでござる」

 虎之助とらのすけが黒瀬に向かって走る。

 黒瀬は、京都で作ってもらった特殊金製とくしゅごうきんせい細長ほそなが金棒かなぼうかまえた。

ーーこの特殊とくしゅ合金ごうきんは、どんな物でも破壊はかいする。悪いが今度こそ俺が勝つーー

ガキっ!!

 虎之助とらのすけかたなと黒瀬の金棒かなぼうがぶつかり合い、虎之助とらのすけかたな粉々こなごなくだけた。

ーー今だ!ーー

 チャンスと見た黒瀬が、金棒かなぼう虎之助とらのすけ頭部とうぶける。

 虎之助とらのすけ後方こうほうに下がって金棒かなぼうけた。

「少しはうでを上げたようでござるね」

修行中しゅぎょうちゅうは、毎日が地獄じごくだったからな」

「では、拙者せっしゃ奥義おうぎを出すでござる」

 虎之助とらのすけは、青いマジカルぼうると、魔法まほうセーラー戦士ポピリンに変身へんしんした。

ーー何だ、このわざは?もしかして、ふざけてるのか?ーー

 黒瀬がひるんだスキに、ポピリンの手刀しゅとうが黒瀬の心臓しんぞうねらって来た。

 とっさに、金棒かなぼうむね防御ぼうぎょして

「この、特殊合金とくしゅごうきん金棒かなぼうれた物は、すべ破壊はかいする。防御ぼうぎょ完璧かんぺきだ」

 と、黒瀬は自信満々じしんまんまんである。

「じっちゃんの顔にかけて、お仕置しおきでござる!」

 ポピリンは、さけびながら向かって来る。

ーーじっちゃんの顔にかけてって、どういう意味いみだ?ーー

 一瞬いっしゅん、黒瀬にまよいがしょうじた。

ズボッ!!

 黒瀬の自信じしんむなしく、ポピリンの手刀しゅとう金棒かなぼうごとむねつらぬかれ、心臓しんぞう破壊はかいされた。

「ゴフッ!」

 血をきながら、黒瀬は地面じめんひざをつく。

ーーこっ、この娘には、まだ勝てんーー

 粉々こなごなにされた特殊合金とくしゅごうきん金棒かなぼうを見て。自分では、とても虎之助とらのすけに勝てない事を、黒瀬はさとった。

「では、とどめをすでござる」

 咄嗟とっさに黒瀬はスマホを取り出して

「待て、取引先とりひきさきから重要じゅうような電話が入った!今度こんど美味うま蟹料理かにりょうりおごって、このめ合わせをするから、ちょっと待ってくれ」

 くるまぎれに、スマホを耳に当て、電話がかかって来たふりをした。

かに料理りょうりでござるか。なるほど、こやつ殺すにはしい男でござる」

「では、いずれ。また、連絡れんらくする」

 と言いし、黒瀬はむねを押さえながら、全力ぜんりょくで走りって行った。

取引先とりひきさきからの電話なら仕方しかたないでござるね」

 と言いながらも、魔法まほうセーラー戦士ポピリンは蟹料理かにりょうり想像そうぞうして、ヨダレをくのであった。



 一方いっぽう牛鬼ぎゅうきこと若林わかばやしは、左近さこんらしき男が見つかったという情報じょうほうた。

奈良ならでははじをかかされたが、今度こそ、とどめをしてやる」

 と、やる気満々きまんまんで向かったのだが、見つけた左近さこんは、すでにちがう男と対峙たいじしている。

「お前は俺の子孫しそんらしいが、これも運命うんめいだ。死んでもらう」

貴様きさま左近さこん身体からだったのか?」

 安倍顧問あべこもん阿部仲麻呂あべのなかまろこと左近さこんである。

人聞ひとぎききの悪い事を言うな。左近さこん納得なっとくして、俺と融合ゆうごうしたのだ」

貴様きさまの様な妖怪ようかいが、実直じっちょく左近さこんだますのは簡単かんたんだろうからな」

「いや、左近さこんだましてなどおらん」

「行け!」

 天狗てんぐ河童かっぱ式神しきがみ左近さこんおそうが、左近さこんれた式神しきがみもと御札おふだもどりポトリと地面じめんに落ちてしまった。

「俺に式神しきがみ通用つうようしない」

「ならば、これはどうだ!」

 牛鬼ぎゅうきが後ろから右爪みぎづめ心臓しんぞうした。

「お前は?」

「お前達まえたち事情じじょうは、良く分からんが、左近こいつは俺がたおす」

 牛鬼ぎゅうきつめ阿部仲麻呂あべのなかまろ心臓しんぞう深々ふかぶかつらぬく。

「この小僧こぞうが!」

 阿部仲麻呂あべのなかまろ心臓しんぞうさったつめくと、傷口きずぐち自然しぜんふさがっていく。

「お前、鬼になったのか?」

 もと左近さこんだと思っていた牛鬼ぎゅうきおどろいた。

「こいつは左近さこんでは無い、左近さこん身体からだっ取った阿部仲麻呂あべのなかまろと言う鬼だ!」

 安倍顧問あべこもん説明せつめいする。

「何かややこしそうだけど、とりあえず、こいつは俺がる」

 若林のリベンジの相手あいて左近さこんである。

「2人まとめて、あのに行け」

 阿部仲麻呂あべのなかまろが、念仏ねんぶつとねえだした。

 すると、地面じめんから無数むすううでびて来て、安倍顧問あべこもん牛鬼ぎゅうきの足をつかみ、地中ちちゅう引張ひっぱもうとする。

「うわっ!何だこれは?」

「そのまま冥府めいふまで送ってやる」

「これはヤバいぞ」

 安倍顧問あべこもんあせっている。

 牛鬼ぎゅうきは自分の足をつかうでを切りはらうが、数が多すぎて間に合わ無い。 二人ともひざまで地面じめんまって来ている。

「この化物ばけものが!」

 牛鬼ぎゅうき右爪みぎづめ阿部仲麻呂あべのなかまろの首をねらってびて来たが、なんなくはらわれてしまう。

「おうぎょうぎわがわるいな」

 阿部仲麻呂あべのなかまろふところから御札おふだを取り出すと、巨大きょだいりゅう式神しきがみあらわれて、2人に向かってほのおき出した。

 2人のた所は、はげしいほのおによって跡形あとかたも無くはいになって行く。

応竜おうりゅうほのお一万度いちまどえる、2人共これで始末しまつ出来できたな」

 そう言うと、阿部仲麻呂あべのなかまろは立ちって行った。



 DSP[デビルスペシャルポリス]の宿舎しゅくしゃでは、みんなで晩御飯ばんごはんを食べていた。

「このビーフシチューは美味うまいでんなぁ」

 小太郎は、ご機嫌きげんである。

「あれっ、拙者せっしゃのタヌキが帰って来たでござる」

 虎之助とらのすけ式神しきがみであるタヌキが、何かをくわえてもどって来た。

たしか、左近さこんさがしに行ってたはずでござるが」

 タヌキがくわえていた物を受け取り見てみると、一枚いちまい御札おふだである。

「それは、安倍顧問あべこもんのチワワの御札おふだだ!」

 そうさけぶと、岩法師いわほうし虎之助とらのすけから御札おふだを取り、読み上げた。

死参しさんと書いてある……」

 岩法師の手がふるえている。

「死して参上さんじょうする、という意味いみでござるな」

「それじゃ、安倍顧問あべこもんは死んだという事でっか?」

「そうでござる」

「何バカな事言ってんのよ、安倍顧問あべこもんが死ぬわけ無いでしょう!」

「いや、桜田刑事。虎之助とらのすけの言う通り、安倍顧問あべこもんは死んだ……」

 声をふるわせながら、岩法師は言った。

 ビーフシチューを食べていた手が止まり、小太郎は茫然ぼうぜんとした。

 桜田刑事は泣き出して、狂四郎きょうしろうがなだめている。

「タヌキに案内あんないさせて、現場げんばを見に行くでござる」

拙僧せっそうも行こう」



「ここは、何処どこだ」

 目をました若林わかばやしは、まったく知らない所にた。

「私のりてるアパートよ」

 女性の声が聞こえたので、見てみると霊鬼れいきである。

霊気れいきさん。どうして?あなたは岡山県にるはずでは?」

「岡山にはパチンコ屋が少なくて、じゃなくて、強烈きょうれつ霊気れいきを感じたから来て見たら、アンタがき殺されそうになってたんで、霊体れいたいになってこっそり助けてあげたのよ」

「そうだったのですか。ありがとうございました」

ーー霊鬼れいきさんが来てくれてなかったら確実かくじつに死んでたな。しかし、あの左近さこんじゃなく阿部仲麻呂あべのなかまろと言う男は強すぎる。牛鬼ぎゅうきの力は完全かんぜん覚醒かくせいしたのに、まったが立たなかったーー

「そうだ、僕と一緒いっしょにいたDSP[デビルスペシャルポリス]の男はどうなりました?」

「彼は鬼じゃなく人間だったから、手遅ておくれだったわ」

ーーそうだな、彼には鬼の耐久力たいきゅりょく治癒ちゆ力も無いから。一時いっときでも共闘きょうとうした相手あいてとしては残念ざんねんだがーー

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