第17話 安倍顧問の死

タヌキの式神しきがみ案内あんないされて、虎之助とらのすけ岩法師岩法師安倍顧問あべこもん死亡しぼうしたと思われる現場げんばにやって来た。

「ここでござるな」

 あた一面いちめん黒焦くろこげげになっており、まだくさい。

すさまじいほのおかれたようだな。これほどほのおを出せるのは、りゅう式神しきがみ使いであろう」

 岩法師は、げた地面じめん調しらべている。

「どうかしたでござるか?」

 タヌキが何か見つけたようだ。

「これは、安倍顧問あべこもん拳銃けんじゅうだ」

 かなりほのおにやられて劣化れっかしているが、拳銃けんじゅう原型げんけいとどめている。

現場げんばは、ここで間違まちがいないな。鑑識かんしきぼう」

 岩法師は、スマホで警察署けいさつしょ連絡れんらくをしている。

「これだけのほのおを出せるりゅうでござるか」

 虎之助とらのすけあたりの様子ようす観察かんさつしている。

拙僧せっそう予想よそうでは、おそらく応竜おうりゅうだな。古代中国こだいちゅうごく最強さいきょうレベルのりゅうだ。今の安倍一族あべいちぞくでも、び出せる者はないだろう」

「では、やはり、阿部仲麻呂あべのなかまろでござるか?」

「それ以外いがいかんがえられぬ」

 しばらくすると、鑑識かんしきの車が数台やって来た。



 安倍顧問あべこもん葬式そうしきが終わった後も、DSP[デビルスペシャルポリス]の宿舎しゅくしゃは暗くしずんでいた。

 そんな宿舎しゅくしゃにニ人の男がたずねて来た。

 一人は、お葬式そうしきにも出席しゅっせきしていた、安倍顧問あべこもんすえの弟である安倍康晴あべやすはるである。

 長身ちょうしんでスーツの似合にあうう、モデルのようなイケメンである。

 彼はれの男を紹介しょうかいした。

くなった兄のわりに、大阪DSPの顧問こもんつとめる事になった、鬼一きいち君です」

鬼一法眼きいちほうげんです、よろしく」

 鬼一きいちは、礼儀れいぎ正しく挨拶あいさつおこなった。

 安倍康晴あべやすはるとはちがい、小柄こがら華奢きゃしゃ体格たいかくであり、女性と間違まちがわれそうな、中性的ちゅうせいてき顔立かおだちの若い男である。

「よろしく、お願いします」

 桜田刑事と転生者てんせいしゃ達は、挨拶あいさつを返すが元気が無い。

鬼一きいち君は陰陽師おんみょうじです。今まで、東京DSPのリーダーかくであったので、たよりになると思います」

鬼一きいちさんは転生者てんせいしゃなんですか?」

 イケメンの2人に、桜田刑事が興味きょうみったようだ。

「そうです。転生前てんせいまえ平安時代へいあんじだいました」

「えらいむかしでんなぁ」

 小太郎は感心かんしんしている。

鬼一きいち君は、京八流きょうはちりゅう剣豪けんごうでもある」

「実は、俺も剣豪けんごうなんですよ、今度こんど試合しあいをやりましょう」

 何故なぜか、小太郎がっている。

「私も、しばらくは大阪にるつもりです」

 安倍康晴あべやすはる言葉ことばさえぎられ、小太郎はスルーされた。

「やはり、お兄様にいさまけんですか?」

 桜田刑事は気になっていた事をたずねた。

「それもあり、京都本部きょうとほんぶからも、しばらく大阪にとどまる許可きょかいただきました」

 桜田刑事の予想通よそうどおり、安倍康晴あべやすはるは兄のかたきつつもりだろう。


 挨拶あいさつえると、安倍康晴あべやすはるは、中庭なかにわに出て大量たいりょう御札おふだねんちゅういた。

 御札おふだは、さまざまな鳥の式神しきがみへと変化へんかして、飛び去って行く。

阿部仲麻呂あべのなかまろ情報収集じょうほうしゅうしゅうですか?」

 鬼一きいちが聞いた。

岩法師いわほうし鑑識かんしきからの報告ほうこくでは、兄を殺したのは、おそらく阿倍仲麻呂あべのなかまろだ。とにかく情報じょうほうしい、式神しきがみ達が、何かつかんで来てくれれば良いのだが」

「私も、やはり阿部仲麻呂あべのなかまろと消えた左近さこんが気になります。私は、2人の情報じょうほうさぐってみます」

 鬼一きいちは、そう言うと、大量たいりょうのヤモリの式神しきがみはなった。



 日本テクノロジーコーポレーションの社長室しゃちょうしつに、霊気れいきが若林をれて来た。

霊気れいき姉さん、どうしたんでっか?岡山にてはるハズでは?」

 社長の鬼塚おにずかは、おどろいて聞いた。

若林わかばやしが殺されかけてたから、助けてあげたのよ」

「えっ、じゃ、あの左近さこんって言うやつに、若林わかばやしけたんでっか?」

「社長、あいつはもう左近さこんじゃありません。阿部仲麻呂あべのなかまろ名乗なのっていました」

 若林が説明せつめいする。

「それだれや?」

「鬼塚。あんた、何にも知らへんなぁ。阿部仲麻呂あべのなかまろって言うたら、平安時代へいあんじだいの日本に陰陽道おんみょうどうんだ男や」

「その男が、自分で左近さこん融合ゆうごうしたって言ってました。僕より先にたたかっていた、DSPの安倍あべという男は殺されました」

安倍あべってたしか、大阪DSPの責任者せきにんしゃやんけ」

「その安倍と2人がかりでも、完敗かんぱいでした。あの、阿部仲麻呂あべのなかまろという男は、強すぎます」

「そんなに強いんか?」

 鬼塚はこまった顔をした。

「実は、黒瀬もDSPの小娘にリベンジに行って、かえちにあったんや」

「ああ、あの娘はムッチャ強いわよ。私も一度負いちどまけたもの」

だれか、その2人をってくれるやつおれへんかなぁ。ワシら数ヶ月前までは、平穏へいおんらしとってんけどなぁ」

「あんた、大阪鬼連合団体おおさかおにれんごうだんたいのトップでしょう!なになさけない事いってんのよ!」

「そう言われましても。出来できれば使いたくなかったんやが、処刑鬼隊しょけいおにたい出動しゅつどうさせまひょう」

「何やの、その処刑鬼隊しょけいおにたいって?」

「俺と川島が魔界まかい地獄じごくから、名のある鬼をスカウトして、最強さいきょう部隊ぶたい編成へんせいしたんですわ」

「へえ、アンタら、やる時は、やるねんな」

まかせといて下さい。もうDSPと『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』には、デカいつらさせませんよって」

 と言いながら、鬼塚は内線ないせんで川島をび出した。

霊気姉れいきねえさんが来られているから、今から処刑鬼隊しょけいおにたいれて来てくれ」


 しばらくすると、川島が6人の男をれて来た。

「おひさしぶりです霊気れいきさん。我々われわれ編成へんせいした、処刑鬼隊しょけいおにたい紹介しょうかいします。まずは阿久良王あくらおう温羅うらです」

 体格たいかくの良い、いかにも強そうな2人である。

「うわぁ、強そうやな」

 霊気れいきよろこんでいる。

「次は風鬼ふうき

 標準ひょうじゅん体型たいけいの鬼である。

風鬼ふうきは風をあやつる事が出来できます」

「そんな特殊とくしゅ能力のうりょくがあるんや」

 霊気れいき感心かんしんしている。

「次は水鬼すいきです、彼は水をあやつります」

 細い体型たいけいの鬼である。

「なるほど、水をねぇ」

「次は穏形鬼おんぎょうきです。彼は気配けはいを消す事が出来できます」

 いかにもかげうすそうな男である。

「何かさちうすそうやな」

「姉さんほどでは無いですよ」

 鬼塚にまれた。

「最後は三吉鬼さんきちおにや。こいつは無類むるい酒好さけずきや」

 三吉鬼さんきちおには小さいオッサンである。

「そいつとは、気が合いそうやわ」

「たぶん、霊気れいきさんと合うと思います」

 霊気れいきは、穏形鬼おんぎょうき三吉鬼さんきちおにうでつか

「じゃ、コイツとコイツは、私がもらって行くわ」

 と、れて行こうとした。

「いや、れて行かれたらこまりますよ、霊気れいきさん」

 川島がめるが

「ええやないの、処刑鬼隊しょけいおにたい別働隊べつどうたいとして、私があずかるわ」

 霊気れいきは、かまわずれて行こうとする。

「ちょっと、社長。めて下さいよ」

「まあ、エエんちゃう。別働隊べつどうたい霊気れいき姉さんにまかせようや」

「でも、あの3人じゃ、居酒屋いざかややパチンコ屋に、入りびたるだけですよ」

 川島の心配しんぱい他所よそに、霊気れいきは2人をれて行ってしまった。


「良いんですか、処刑鬼隊しょけいおにたい戦力せんりょく分散ぶんさんされましたけど」

 霊気れいき達が出て行った後で、川島が不機嫌ふきげんそうに言った。

「別に良いねん。あの2人は、何かこうはなが無いし」

 鬼塚は気にしていない様子ようすである。

「いや、処刑鬼隊しょけいおにたいに、はなはいらんでしょう」

「でも、あった方が良いやんか」

「まあ、よろしいわ。それで、この若林はどうします?」

 川島が若林を指差ゆびさす。

「そうか、お前まだったんか?」

「ずっとましたけど」

 た事をわすれられて、若林は少し不貞腐ふてくされている。

「お前は、左近さこんに2連敗れんぱいしたから、死刑しけいや」

「ええっ!マジですか?」

 当然とうぜんおどろく若林。

「ギロチンか首吊くびつりか、どっちがええ?」

「どっちもいやです。と言うか、社内しゃない死刑しけいって、おかしくないですか?」

「別に、おかしくないで。今日きょうび、何処どこの会社でも死刑制度しけいせいど導入どうにゅうしとるし」

「そんなわけないでしょう!社長。アンタは、阿呆あほや!」

 さすがに、若林がおこった。

「アホは、お前じゃ!」

 鬼塚がおこり返す。

「アホ言う者が、アホじゃ!」

「ちょっと、2人とも小学生しょうがくせいレベルの言い合いは、めて下さい」

 さすがに川島が、とめに入った。

「ほんでも、このガキが俺の事を、アホって言うから」

「社長は元々もともとアホなんですから、別に良いじゃないですか」

 川島が説得せっとくする。

「いや、俺も、中三ぐらいまでは、普通ふつうやってんけどな」

「高校に入ってからアホに、なったんですか?」

「中三の冬休ふゆやすみみに、六甲山ろっこうさん蝉取せみとりに行ってからやな」

「冬に、せみりに行く時点じてんで、すでにアホですけど」

「今、考えたら自分でも、真冬まふゆ六甲山ろっこうさん蝉取せみとりは、どうかと思うわ」


 という具合ぐあいに、若林の処分しょぶんは、うやむやになり、処刑鬼隊しょけいおにたい結成けっせいされたのであった。

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