第18話 リンゼイ老師VS虎之助 前編

リンゼイ老子達がまっている大帝国だいていこくホテルの一室いっしつに、阿部仲麻呂あべのなかまろがやって来た。

のぞどうり、DSP[デビルスペシャルポリス]の安倍あべって来たぞ」

「さすがに、やる事が素早すばやいのぉ」

 阿部仲麻呂あべのなかまろ早い対応たいおうに、老子は感心かんしんした。

「では、約束やくそく通り、アンタ達の情報じょうほうもらおう」

 ソファにすわって阿部仲麻呂あべのなかまろは、くつろいでいる。

 リンゼイ老子は、タブレットをわたしながら

「好きなだけ見るがよい。ただち出しは禁止きんしじゃ」

 と、ことわった。

俺達おれたち同士討どうしうちをふせために、見るだけだ。しかし、アンタら世界中に支部しぶがあるなぁ。全部ぜんぶおぼえるのに少し時間がかかる」

「ところで、お前さん。半分はんぶんはDSPの左近さこんなんじゃから、ワシらにDSPの情報じょうほうをくれんか?」

「どんな情報じょうほうだ?」

 タブレットを見ながら阿部仲麻呂あべのなかまろは、興味きょうみなさそうに言った。

「DSPの、若い娘の事なんじゃが?」

「ああ、虎之助とらのすけか」

「その娘の情報じょうほうが、しいのじゃ。どのぐらい強いのかもな」

もと忍者にんじゃだ。自分では、史上しじょう最強さいきょう忍者にんじゃだと言っていたな。何かの手違てちがいで、妹の姿すがた転生てんせいしてしまったらしい」

めずらしいケースじゃな」

「何でも、本人の話では、5万年に一人の逸材いつざいらしい」

「やはり、それほどの手練てだれじゃったか」

忍術にんじゅつ剣術けんじゅつ超一流ちょういちりゅうで、陰陽道おんみょうどうも少しは使えるらしい。今はタヌキの式神しきがみを使っている」

「やっかいな相手あいてじゃな」

「そうだ。あと妹はDカップだったが、転生てんせいした自分はAカップしかないとなげいていたな」

「その情報じょうほうは、いらん」


 しばらくパソコンを見ていた阿部仲麻呂あべのなかまろは、ある事に気がついた。

ーーやはりそうか、。国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかいとは、やつらの作った組織そしきだったのか。てきにまわさずに正解せいかいだったなーー

 おそろしい事実じじつ気付きづいた阿部仲麻呂あべのなかまろは、鬼とDSPに同情どうじょうすら感じるのであった。



 夕食時ゆうしょくどき千日前せんにちまえで、30代の男が、青いセーラー服を着た少女と、高級蟹こうきゅうかに料理屋りょうりやで、夕食を食べている

「モグモグ、これは、なかなか美味うまかにでござるな」

 虎之助とらのすけは、機嫌きげんが良い。

「そりゃ、そうですよ。今回こんかい奮発ふんぱつしましたから」

ーーちょっといたいが、数万円すうまんえんで命が助かったと思えば安いもんだ。それにしても、こいつ何故なぜまだポピリンの姿すがたなんだ?ーー

「モグモグ、ところで黒瀬。阿部仲麻呂あべのなかまろとは何者なにものでござる?」

「さあ。我々われわれ鬼連合団体おにれんごうだんたい調しらべているんですが、はっきりした事は、わかっていません」

安倍顧問あべこもんを殺したのは、阿部仲麻呂あべのなかまろでござるな?」

たしか若林が、そう言ってましたね」

「なるほど。では、次回じかい海老えび料理をおごるでござる」

「えっ、今日のかに料理りょうりで、この前のわせは、んだんじゃ」

「何ふざけた事、言ってるでござる!さては、拙者せっしゃ魔法まほうセーラー戦士せんしポピリンだからって、めているでござるな!」

 魔法まほうセーラー戦士せんしおこり出して、短刀たんとうを、黒瀬の首にきつけた。

「とんでもない、めてませんよ。わかりました、つぎ海老えび料理りょうりおごりますから」

 しぶしぶ、海老料理えびりょうりおご約束やくそくをさせられる黒瀬であったが、何故なぜ魔法まほうセーラー戦士せんしに、おどされなければいけないのか、理解りかい出来できなかった。



 安倍康晴あべやすはる鬼一きいちは、大量たいりょう式神しきがみから情報じょうほうあつめ、阿部仲麻呂あべのなかまろ左近さこん居所いどころさぐっていた。

「この大帝国だいていこくホテルから、左近さこんが出て来たようですよ」

 鬼一きいちは、自分の情報じょうほうを、安倍あべつたえる。

やつは、ここにまっていたのか、それとも誰かに会いに来たのか?」

「ヤモリからの報告ほうこくでは、ここの21階に数日前すうじつまえから、あやしいインド人の3人組が宿泊しゅくはくしています」

何故なぜあやしいんだ?」

高級こうきゅうホテルにまってますが、警察けいさつ公安こうあんのリストにはっていません、おそらく偽名ぎめいでしょう。『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』の可能性かのうせいがあります」

左近さこん国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかいが、つながっているのか?」

「それを調しらべるために、とりあえず、そのインド人の部屋に行ってみましょう」

 2人はホテルに入ろうとした。



 そのころ虎之助とらのすけと小太郎も、タヌキの式神しきがみを使って左近さこん行方ゆくえっていた。

「姉さんのタヌキの式神しきがみは、優秀ゆうしゅうでんなぁ」

式神しきがみは、出した術者じゅつしゃ能力のうりょくによって、性能せいのうが変わってくるでござる」

「じゃ、姉さんは、優秀ゆうしゅう能力のうりょく術者じゅつしゃと言う事に、なりまんなぁ」

「そうでござるよ。拙者せっしや能力のうりょくは、レオナルド・ダ・ヴィンチなみでござる」

「すんまへん。その、レオナルド何とかさんって人、知りまへんので、ダンゴ虫でたとえてみてくれまへんか」

「ええっと、それじゃ、拙者せっしや能力のうりょくは、ダンゴ虫並むしなみでござる」

「へえ、そうでっか。あれっ、タヌキがあのホテルに向かって行きまっせ」

高級こうきゅうそうなホテルでござるな。拙者せっしや達の服装ふくそうでは、入りづらいでござるね」

 虎之助とらのすけは、MA1ジャケットにスカートで、小太郎は、ダウンジャケットにジーンズという、ラフな服装ふくそうである。

「姉さん、あの2人は、安倍顧問あべこもんの弟さんと、新しい顧問こもんとちゃいまっか」

 小太郎が、大帝国だいていこくホテルに入って行く2人を見つけた。

拙者せっしや達も一緒いっしょに行くでござる」

 虎之助とらのすけ達は、2人に向かって走り出した。



 安倍康晴あべやすはる鬼一きいちが、ホテルの1階ロビーでエレベーターを待っていると。

「待つでござる、拙者せっしや達も行くでござる」

 と、虎之助とらのすけと小太郎がやって来た。

ーーコイツは、兄が警戒けいかいしていた、転生前てんせいまえなぞの娘だーー

 安倍は少し警戒けいかいしたが、ここまで来てしまえば仕方しかた無いと思い。

「では、いて来てくれ」

と、不本意ふほんいであるが、一緒いっしょにエレベーターで、21階に向かった。


「2101室に、あやしいインド人の3人組が宿泊しゅくはくしている」

 21階に着いて、安倍が虎之助とらのすけと小太郎につたえると

「アハハハ………」

 虎之助とらのすけきゅうわらい出した。

「どうしたんだ?何がおかしい?」

 安倍と鬼一きいちおどろいている。

「すんまへん。姉さんは時々ときどき、おかしくなるんです」

 小太郎が、とりあえず、適当てきとうわけするが

ポカっ!

 と、あたまかる虎之助とらのすけなぐられてしまった。

「おかしくなって無いでござる。こんな時のためみ出した、拙者せっしや必殺技ひっさつわざを出すでござる」

 虎之助とらのすけは、ぎんのおぼんを取り出すと、メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンに変身へんしんした。

 黒ベースで白いエプロンとフリルのメイド姿すがたである。

 ぎんのおぼんには、いつのにか、アイスコーヒーが3つならんでいる。

「もし『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』のやつらだったら、メイド姿すがた油断ゆだんさせて、この毒入どくいりアイスコーヒーで、3人とも毒殺どくさつするでござる」

 メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンは、自信満々じしんまんまんである。

「さすが姉さん、やる事が過激かげきでんなぁ」

 小太郎は感心かんしんしている。

「君は、大変たいへん勘違かんちがいをしているぞ」

 鬼一きいちがメイド少女戦士しょうじょせんしマリリンに言った。

「何をでござるか?」

「日本のホテルには、メイドはいないぞ」

ないのでござるか?」

普通ふつうない」

 安倍もねんを押して言った。

「では、力ずくで、毒入どくいりアイスコーヒーをませるでござる」

「いや、そんなの無理むりだって」

 鬼一きいちめるが、メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンは、2101号室にかって行く。

カチャ。

 ドアがひらく音がして、部屋へやからアーナヴが出て来た。

「何だ。さわがしいな」

「これをむでござる」

 メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンが無理むりやり、アーナヴにアイスコーヒーをませた。

「うぐっ、くるしい」

「どうしたのアーナヴ?」

 マニッシュが心配しんぱいして出て来た。

「お前も、アイスコーヒーをむでござる」

 マニッシュも、無理むりやりアイスコーヒーを飲まされた。

「おい!ムチャはめろ!」

 安倍が制止せいししようとするが、メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンはやめない。

「やっぱりコイツら3人は、『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』でござる。前にアメリカ村で確認かくにんしたでござる」

「そう言えば、あの男、アメリカ村でやつらのエージェントと話してたな」

 小太郎もおもした。

何事なにごとじゃ!」

リンゼイ老子も出て来た。

親玉おやだまが出て来ましたよ」

 鬼一きいちが安倍に、ささやいた。

「このジジイにも、アイスコーヒーを飲ませるござる」

「ダッ、ダメです老子、ゴフッ、毒入どくいりコーヒーです。われらも飲まされてしまいました。グフッ!」

 アーナヴが必死ひっしめる。

「ジジイも飲むでござる」

 メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンが、リンゼイ老子にアイスコーヒーを飲ませようとする。

「やめんか!このおろか者が!」

 リンゼイ老子の掌底しょうていでメイド少女戦士しょうじょせんしマリリンは、ばされた。

無茶苦茶むちゃくちゃな娘じゃな。てよ、く見ると弟子達でしたちを殺した小娘じゃな」

 リンゼイ老子は、ふところから丸薬がんやくを取り出すと、どくにやられたアーナヴとマニッシュにわたした。

「これを飲んで静養せいようしておれば、どくえるじゃろう。あとはワシにまかせるのじゃ」

「すいません老子。油断ゆだんしました」

 アーナヴとマニッシュは、非常階段ひじょうかいだんに向かって退避たいひしようとしている。

「姉さん、あいつらげようとしてまっせ!」

 小太郎が、ばされたメイド少女戦士しょうじょせんしマリリンを、こしながら言った。

「あのジジイ!可憐かれんなメイド少女をばすとは、非常識ひじょうしきやつでござるな」

「いえ、非常識ひじょうしきさでは、姉さんもけてまへんで」

拙者せっしや非常識ひじょうしきさは、三千年続さんぜんねんつづ一子相伝いっしそうでん非常識ひじょうしきさで、ござるからなぁ」

「さすがは姉さん、なに言ってんのか、サッパリわかりまへんが。カッコええでんな」

 メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンと小太郎は、ゲラゲラわらい出した。


 笑っている2人を他所よそに、安倍と鬼一きいちはリンゼイ老子と対峙たいじしていた。

 リンゼイ老子からは、ただならぬ妖気ようきめている。

「安倍さん、この老人ただ者じゃないですね」

「俺は、目の前の老人より、後ろでわらっている2人が気になる」

「気持ちは、わかりますが。あの2人は、ほっといて、この老人をたおす事に専念せんねんしましょう」

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