第19話 リンゼイ老師VS虎之助 後編

安倍康晴あべやすはる鬼一きいちは、リンゼイ老師と対峙たいじしていた。

 その後ろで、小太郎と虎之助とらのすけ変身へんしんしたメイド少女戦士しょうじょせんしマリリンが、前回ぜんかいからつづきゲラゲラわらっている。

京八流きょうはちりゅうけんけてみよ!」

 鬼一きいちは、リンゼイ老子に向かってけた。が、まった手応てごたえが無い。

 何度なんどり付けるも、紙一重かみひとえの所で、リンゼイ老子は鬼一きいちやいばけてしまう。

 安倍あべ御札おふだを取り出し、鎧武者よろいむしゃ式神しきがみし、リンゼイ老子に向かわせる。

「こんな手品てじなは、ワシには通用つうようせんぞ」

 リンゼイ老子が、何やら呪文じゅもんとなえだすと、鎧武者よろいむしゃは、一転いってんして鬼一きいち攻撃こうげき仕掛しかけてきた。

 鬼一きいち鎧武者よろいむしゃ攻撃こうげきめると、跳躍ちょうやくしてリンゼイ老子の頭部とうぶける。

ブスッ!

 とっさにけたリンゼイ老子のひたい短刀たんとうさった。

 安倍がける方向ほうこう予測よそくして短刀たんとうげたのである。

 パタッ、とリンゼイ老子はたおれた。

「やったか!」

 と、安倍がさけぶが

「いえ、油断ゆだん禁物きんもつです。この老人は、これぐらいで死ぬようなやつではありません」

 鬼一きいちは、まだかたなをリンゼイ老子にかまえている。

 リンゼイ老子は、たおれたまま、ピクリともしない。

「今のうちに、毒入どくいりコーヒーを飲ますでござる」

 いつのにか、そばに来ていた、メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンが、リンゼイ老子の口をこじけてコーヒーを飲まそうとしている。

「やめんか!馬鹿者ばかもの!」

 ふたたびリンゼイ老子の掌底しょうていらって、メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンはんだ。

 リンゼイ老子は立ち上がり

「せっかく死んだりをしていたのに、とんでもないバカ娘じゃ」

 と、おこっている。

「やはりきていたな」

 鬼一きいちは、かまえくずさない。

 リンゼイ老子は、ひたいさった短刀たんとうきながら

「これしきの事では、ワシは死なん」

 と、血をながしながらも、平然へいぜんとしている。


「姉さん、パンツが丸見まるみえでっせ」

 ばされて、ひっくりかえっているメイド少女戦士しょうじょせんしマリリンのスカートがめくれて下着したぎが見えている。

 小太郎は、ダメージよりパンツに関心かんしんがあるようだ。

「これは、見せパンだから、見られても大丈夫だいじょうぶでござる」

「そんなパンツがあるんでっか。さすがは姉さん、オシャレでんなぁ」

拙者せっしゃのオシャレさは、パリの社交界しゃこうかいで、クフッ………」

「あれっ!姉さんが気をうしなってもうた!姉さん!姉さん!」

 小太郎はあせった。

「そうや、こんな時には水を飲ませればいんや。どこかに水がないかな?おや、こんな所にアイスコーヒーが。姉さんに、このコーヒーを飲ませよう」

 小太郎はメイド少女戦士しょうじょせんしマリリンに、アイスコーヒーを飲まそうとしたが

バキッ!!

「うへーっ」

 メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンになぐられてんだ。

「これは拙者せっしゃ用意よういした毒入どくいりコーヒーでござる、このたわけもん!!」

「クフッ……」

 今度こんどは小太郎がうしなった。

「ジジイの真似まねして、死んだりをしたら、小太郎に毒殺どくさつされかけたでござる」


 安倍と鬼一きいちの2人を相手に、さすがのリンゼイ老子も、されて来ている。

「なかなか、しぶといじいさんだ」

 安倍が呪文じゅもんとなえると、右手にふるびたけんあらわれた。 

すべての妖魔ようま抹殺まっさつする破魔はまけんだ。これでとどめをしてやる」

「そんな玩具おもちゃで、ワシはたおせんぞ」

「それは、どうかな」

 安倍がけん十字じゅうじると、間合まあいいの外にるハズの、リンゼイ老子の腹部ふくぶ十字じゅうじられ、大量たいりょうの血がした。

「なるほど。思っていたよりやりおる」

 血をき出しながらも、リンゼイ老子は平然へいぜんとしている。

「何か、おかしいですよ」

 鬼一きいちは、リンゼイ老子の異変いへん気付きづいた。

 リンゼイ老子の体中からだじゅうからあわが吹き出し、体全体からだぜんたいあわつつまれた。

「死んだのか?」

 何がこっているのか、わからず。安倍がつぶやく。

 あわが少しづつながちてき、本体ほんたいが見えて来た。

 上半身裸じょうはんしんはだかで、こしぬのいた、髭面ひげずらの男があらわれた。おどろく事に、うでが4本ある。

「この姿すがたもどるのは何百年なんびゃくねんぶりかのぉ。ワシの本当ほんとうは、国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい三神さんしんの1人ブラフマー。この姿すがたを見たものには確実かくじつに死がおとずれる」

 さすがの、安倍と鬼一きいちも、数歩すうほ退しりぞき、距離きょりけた。

「安倍さん、ヤバいですよ。やつからは、得体えたいの知れない強大きょだいなエネルギーをかんじます」

「わかっている。アイツは、ただの強化人間きょうかにんげんなどでは無い。ブラフマーと言えばインドの最高神さいこうしんの一人だ、もしや、あの男」

「そのとうり、ワシは最高神さいこうしんブラフマー。おぬし人間にんげんどもをつくった、三神さんしんの一人じゃ」

「お前が神なら、何故なぜわれ人間にんげん敵対てきたいするのだ?」

 鬼一きいちは、まだかたなかまえたままである。

人間にんげん敵対てきたいなどしておらん。お前たち異能者いのうしゃ鬼共おにどもは、人間にんげん創造そうぞうするにあたって不具合ふぐあいようするにバグじゃ。われらはバグを消去しょうきょしているだけじゃ」

ーー人間にんげん創造そうぞうた神だと。そんな者を相手あいてたたかって、われらにはあるのか?ーー

 ブラフマーは、全身ぜんしんからすさまじい神気しんきし、圧倒あっとうされた安倍と鬼一きいち後退こうたいして行く。

ーーこれは、とても我々われわれてる相手あいてでは無いーー

 さすがに、安倍と鬼一きいちは、戦意せんいうしないかけている。

 が、くと、いつのにか、リンゼイ老子のすぐ横に、メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンがており

「ジジイ、能書のうがきは、いいから。さっさと毒入どくりコーヒーを飲むでござる」

 と、無理むりやりブラフマーに毒入どくいりコーヒーを飲まそうとした。

「うわっ!何だこのバカ娘は!やめんか!!」

 ブラフマーは、抵抗ていこうするが、少しコーヒーを飲んでしまった。

「おえーっ!神に毒入どくいりコーヒーを飲ませるとは、このバチたりが!」

ーーメイド少女戦士しょうじょせんしマリリン。味方みかたながら非常識ひじょうしきおそろしいやつーー

 安倍と鬼一きいちあせをかきながら、見守みまもっている。

「メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンは、一度狙いちどねらった相手あいては、かならず殺すでござる」

貴様きさま最高神さいこうしんである、このブラフマーにてると思っているのか!」

「ゴチャゴチャ言ってないで。お前は、このコーヒーをんで、死ぬでござる」

 また、少しコーヒーを飲んでしまった。

「クソっ!気分きぶんわるくなって来た。こんなバカ娘は相手あいて出来できん。今日のところは、これまでだ。またおう」

 そう言うと、ブラフマーはちゅうかび、そのままえてしまった。



 ある居酒屋いざかやでは、若林わかばやし黒瀬くろせ愚痴ぐちっている。

たしかにぼく左近さこんに2連敗れんぱいしましたけど、いきなり死刑しけいは無いでしょう」

「まあ、でも結局けっきょくは、うやむやになったんだろ?俺なんか3ヶ月の減棒げんぼう処分しょぶんだ」

 一応いちおう、黒瀬は若林をなだめるが、自分も境遇きょうぐうである。

「黒瀬さんも、虎之助とらのすけさんにかえちされたんですよね」

「ほんま、やってられないな」

 おたがい、愚痴ぐちいになって来た。

「あれっ、あそこにるのは、霊気れいきさんじゃないですか?」


 2つとなりのテーブルでは、隠型鬼おんぎょうき三吉鬼さんきちおにれた霊気れいきが、たのしそうにさけを飲んでいる。


霊気れいきさんは僕のいのち恩人おんじんなんで、ちょっと挨拶あいさつして来ます」

 若林はせくつと、霊気れいきのテーブルにかった。

 黒瀬は若林のうしろ姿すがたを見ながら

ーーそろそろ、俺も田舎いなかかえろうか。出来できれば、大阪で彼女がしかったけどなぁーー

 と、おもいながら、わびしくハイボールを飲むのであった。


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