第20話 デビルスペシャルポリス VS 阿倍仲麻呂 前編

DSP[デビルスペシャルポリス]の宿舎しゅくしゃでは、いつもどおみんなで朝食をっていた。

「今日のスクランブルエッグは、美味うまいでんなぁ」

 小太郎こたろう上機嫌じょうきげんで、トーストとスクランブルエッグを食べている。

「小太郎は、拙者せっしゃ毒殺どくさつしかけたので、トーストを半分はんぶんもらうでござる」 

 虎之助とらのすけが、小太郎のトーストをろうとする。

駄目だめですよ姉さん。俺は姉さんになぐられて、半日はんにち意識不明いしきふめいやったんですよ。姉さんこそ、そのスクランブルエッグを半分はんぶんくださいよ」

絶対ぜったいいやでござる。拙者せっしゃの食べ物をった者は、ぶっ殺して地獄じごくに落とすでござる」

 もめている虎之助とらのすけと小太郎のとなりでは、安倍と鬼一きいち深刻しんこくな顔で朝食をっている。

「しかし、あの老人が創造主かみだったとは。われらも今後こんご対応たいおうを、検討けんとうせねばなりませんな」

 ブラフマーと対峙たいじした時、鬼一きいちおもわずあしがすくんでしまっていた。

「しかし、創造主かみ相手あいてに、どうたたかえばいのだ」

 安倍も鬼一きいち同様どうようブラフマー相手あいてに、弱気よわきになってしまっている。

虎之助とらのすけの使ったどくが、少しはいていたようですが」

ーーたしかに、どくられたあと、ブラフマーは気分きぶんが悪くなったと言って退散たいさんしていったな。とりあえず、どく成分せいぶんいておこうかーー

虎之助とらのすけ、あのアイスコーヒーに入っていたどくは、何処どこから手に入れたんだ?」

「あれは拙者せっしゃ鬼神きしんをブッころようつくっておいた、へびどくもと調合ちょうごうした物でござる」

鬼神用きしんようどくなら、相当そうとう強力きょうりょくどくだな。それにしても、お前はよく創造主かみたいして、ひるまず攻撃出来こうげきできるな」

 2人は、おくすることなく創造主かみかってった虎之助とらのすけを、目の前で見ていた。

「おぬしらは、ダーウィンの進化論しんかろんらないのでござるか?この創造主かみなどないでござるよ。人間にんげんさるから進化しんかしたのであって、創造主かみつくられたのでは無いでござる。あのジジイは、少し戦闘能力せんとうのうりょくたかいだけの、ただのジジイでござる」

 安倍と鬼一きいちは、ダーウィンの進化論しんかろんぐらいは我々われわれも、わかっている。今さら言われるまでも無い。

 とは、おもわなかった。

 ブラフマーや鬼共おにども転生者てんせいしゃと、今まで自分達じぶんたちまわりには、非科学的ひかがく現象げんしょうつずいているためか、すっかりブラフマーに気負きおけしていたのは事実じじつである。

 人類じんるい進化しんか過程かていがどうであれ、てきたおさねばならないのだ

 安倍と鬼一きいち苦笑くしょうしながらも、ブラフマーにたいする勇気ゆうきいて来るのを実感じっかんしていた。


「姉さん、ダーウィンの進化論しんかろんって何でんねん?」

 よこいていた小太郎は、ダーウィンをらないようだ。

「ダーウィンの進化論しんかろんって言うのは」

 虎之助とらのすけ説明せつめいしかけると、狂四郎がさえぎった。

「そのぐらい、俺でも知ってるぜ。進化論しんかろんって言うのは、ハゲ親父おやじ息子むすこは、禿げる確率かくりつが高いってやつだろ」

「ちょっとちがうでござる。それは、どちらかと言うと、メンデルの法則ほうそくに近いでござるな」

「へえ、姉さんは何でも知ってまんなぁ」

 感心かんしんする小太郎。

拙者せっしゃ知識ちしきおおさは、宇宙人うちゅうじんオーソンなみでござるからなぁ」

ーーだれそれ?ーー

 と、宿舎しゅくしゃにいる全員ぜんいんおもった。

「すんまへん。その人、知りまへんので、ナメクジでたとえてもらってもいですか?」

 小太郎は、たとえをえてもらった。

「ええっと、それじゃ。拙者せっしゃ知識ちしきはナメクジなみでござる」

「ブッ!」

 狂四郎が、んでいたコーヒーをした。

相変あいかわらず、狂四郎は食事しょくじマナーがなって無いでござるね」

「いや、お前らの会話かいわがアホぎるからだろ」

「おのれのような、世界的せかいてき阿呆あほに、アホと言われる筋合すじあいは無いわ!」

 小太郎がキレた。

「何だとこのアホさむらいが!」

 狂四郎もキレて、二人はいの、喧嘩けんかはじめた。

「お前らめんか」

 岩法師いわほうしめに入る。

「二人とも、まだわかいでござるな。みじかすぎるでござるよ」

 意外いがい虎之助とらのすけいている。

パコッ!!

 小太郎をねらった狂四郎のりが、虎之助とらのすけ顔面がんめんにヒットした。

いたいでござる!!」

ブチンッ!

 ブチれた虎之助とらのすけは、メイド少女戦士しょうじょせんしマリリン変身へんしんして

貴様きさまら、全員ぜんいんこの毒入どくいりアイスコーヒーで、毒殺どくさつするでござる!」

 と、ものすごいきおいでいかくるった。

「まずいぞ!」

 安倍と鬼一きいちが、あわててメイド少女戦士しょうじょせんしマリリンをおさえるが

はなすでござる!」

 メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンのいかりはおさまらない。

 結局けっきょく、小太郎と狂四郎も喧嘩けんかめて、メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンをめにはいり、何とかおさえていると、安倍のはと式神しきがみかえってて、安倍に何やら報告ほうこくした。

 はとからの報告ほうこくわった安倍は

んな、よくけ!左近さこん居所いどころがわかった。今からむかかうぞ!!」

 と、怒鳴どなるようにさけんだ。



「まったく、あのバカ娘には、えらい目にあったわい」

 ブラフマーはリンゼイ老師の姿すがたもどっており、メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンにどくを飲まされたおかげで、おなかをくだし下痢げりでトイレにもっている。

 高級こうきゅうホテルに部屋へやをとって、リンゼイ老師一行ろうしいっこう休息きゅうそくしているところであった。

 アーナブとマニッシュは、まだ完全かんぜんどくけていないので、ベッドでよこになりやすんでいる。

 やっとトイレから出たリンゼイ老師は、おちゃを飲みながら

たしかに、ラディッシュとナジャでは、あのバカ娘にはてんな。じゃが、アーナブとマニッシュなら、そう簡単かんたんにはいかんぞ。前回ぜんかい油断ゆだんしたが、つぎかならず殺してやる」

 と、みをかべた。が、その瞬間しゅんかん

「はうっ!」

 うめきごえをあげながら、リンゼイ老師はトイレにんだ。まだ、下痢げりおさまっていなかったのである。



 DSPの一行いっこうは、留守番るすばんに岩法師と狂四郎をのこして、左近さこんあらわれたという現場げんばむかかっていた。

はと情報じょうほうによれば、このあたりなんだが」

「安倍さん。このさきほうに、ただならぬ妖気ようきめています」

 鬼一きいちは、このたぐい気配けはいには敏感びんかんである。

 しばらくすすむと、前方ぜんぽうが黒くやみつつまれていた。

やみ結界けっかいっておるな。われらがことが、わかっていたか」

「そのようですね。どうします、うかつにすすむと危険きけんですよ?」

 安倍と鬼一きいち思案しあんしていると、メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンが小太郎にぬのわたして

「これで目隠めかくしをするでござる」

 と、不思議ふしぎ指示しじしていた。

「何で、小太郎に目隠めかくしさせるんだ?」

 になって、鬼一きいちいてみた。

目隠めかくしすると、結界けっかいの中でも、幻覚げんかくまどわされずにすすめるでござる」

「さすがは姉さん、目隠めかくしすると全然ぜんぜんこわくないですわ」

「では拙者せっしゃを、おんぶして突撃とつげきするでござる」

「はな、きまっせ」

 目隠めかくしされた小太郎は、メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンを背負せおい、結界けっかいむかかってんでった。

「あれ、大丈夫だいじょうぶなんですか?」

 心配しんぱいになった鬼一きいちは、安倍にたずねる。

「いや、全然ぜんぜんダメだろ」

 あきれたかおで安倍はこたえた。



 一方いっぽうそのころ霊気れいきたちはパチンコてん情報収集じょうほうしゅうしゅうをしていた。

「どうや?何か情報じょうほうはあったん?」

 霊気れいきは、となりだいでパチンコをっている三吉鬼さんきちおにたずねた。

難波なんばやす酒屋さかやがあるそうです」

隠形鬼おんぎょうき、あんたは?」

 三吉鬼さんきちおにとなりで、パチンコをっている隠形鬼おんぎょうきにもいた。

「どうやら、港区みなとくにあるパチンコが、穴場あなばだそうです」

「よっしゃ、ほんだら、今から港区みなとく移動いどうや」

 という具合ぐあいに、川島かわしま予想通よそうどおり、霊気れいきひきいる処刑鬼隊しょけいおにたい別働隊べつどうたいは、パチンコ居酒屋いざかやびたっていたのであった。

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