転生したらAカップだったでござる

第32話 火星戦記パート2

「いらっしゃいませ」　

　今日（きょう）も、アキレスと虎之助（とらのすけ）は屋台（やたい）で元気（げんき）にタピオカミルクティーを売（う）っていた。

「意外（いがい）と客（きゃく）が来（く）るけど、いったい何処（どこ）から来（く）るんだろう？」

　アキレスは不思議（ふしぎ）がっている。

「お主（ぬし）のような、末端（まったん）の新入（しんい）りは余計（よけい）な事（こと）を考（かんが）えないで、黙（だま）って働（はたら）いていれば良（い）いんでござる」

「お前（まえ）だって新入（しんい）りだろ」

「拙者（せっしゃ）は昨日（きのう）、主任（しゅにん）に任命（にんめい）されたので、お主（ぬし）の上司（じょうし）になったでござる」

「お前（まえ）が俺（おれ）の上司（じょうし）だと！あれっ、そのスカート、もしかしてブランド品（ひん）じゃねえか？」

　良（よ）く見（み）ると、虎之助（とらのすけ）は高級（こうきゅう）ブランドで全身（ぜんしん）をコーディネートしている。

「ブラウスとスカートがプラダで、腕時計（うでどけい）はローレックス、スニーカーがオニツカタイガーでござる」

「ええっ！」

「さらに、バックはルイビトンで、お化粧品（けしょうひん）は全（すべ）てシャネルでござる」

「何（なん）で、そんなに金持（かねも）ってんだ？しかも、化粧（けしょう）なんか全然（ぜんぜん）してないクセに」

「初日（しょにち）に助清社長（すけきよしゃちょう）から貰（もら）ったダイヤを換金（かんきん）して、大金持（おおがねも）ちになったでござる。お化粧（けしょう）は、これから練習（れんしゅう）するでござる」

「火星（ここ）にダイヤを換金（かんきん）してくれる所（ところ）があるのか？」

「街（まち）に宝石商（ほうせきしょう）があったでござる。四井菱友銀行火星支店（よついびしともぎんこうかせいしてん）もあったので、100億円貯金（おくえんちょきん）したでござる」

「銀行（ぎんこう）もあったの？」

「あったでござる。拙者（せっしゃ）は、もうセレブでござる」

　などと、2人が話（はな）していると、屋台（やたい）に銅鬼（どうき）とパクチーがやって来（き）た。

「あなた達（たち）は誰（だれ）ですかぁ？お父（と）タマは？」

　見知（みし）らぬ2人が、屋台（やたい）の店番（みせばん）をしているので、パクチーが尋（たず）ねて来（き）た。

「拙者（せっしゃ）は虎之助（とらのすけ）でござる、コイツはアホのアキレス。2人とも助清社長（すけきよしゃちょう）に雇（や）われているでござる。それで、お父（と）タマって誰（だれ）でござるか？」

「その助清（すけきよ）って言（い）うのが、私（わたし）のお父（と）タマよぉ」

「助清社長（すけきよしゃちょう）のお嬢様（じょうさま）でござるか。社長（しゃちょう）は強（つよ）そうな部下（ぶか）を探（さが）しに街（まち）に行（い）ったでござる。アトゥムと言（い）う奴（やつ）を倒（たお）す為（ため）に、闇（やみ）の軍団（ぐんだん）を作（つく）るって言（い）ってたでござる」

「お父（と）タマったら、まだ、アトゥムを倒（たお）す事（こと）を諦（あきら）めて無（な）かったのぉ」

　パクチーはガッカリした。せっかく親子（おやこ）で、平穏（へいおん）に暮（く）らせると思（おも）っていたのに。

「拙者（せっしゃ）と、このアホのアキレスも、闇（やみ）の軍団（ぐんだん）に入（はい）ったでござる」

「俺（おれ）は、お前（まえ）と違（ちが）って、殴（なぐ）られて無理（むり）やり入（い）れられたんだ」

「もう、お父（と）タマったら！闇（やみ）の軍団（ぐんだん）なんて、今すぐ解散（かいさん）よ！」

　パクチーは、怒（おこ）っている。

「解散（かいさん）と言（い）う事（こと）は、拙者（せっしゃ）のお給金（きゅうきん）も無（な）しでござるか？」

「そんなの、無（な）しよぉ」

「じゃ、もう、拙者（せっしゃ）は家（いえ）に帰（かえ）るでござる。ただ働（ばたら）きは、しないでござる」

「俺（おれ）も帰（かえ）ろう。って、どうやって地球（ちきゅう）に帰（かえ）るんだ？」

　アキレスは、火星（かせい）から帰（かえ）ろうとしている虎之助（とらのすけ）に尋（たず）ねた。

「街（まち）の空港（くうこう）に、関西国際空港行（かんさいこくさいくうこうい）きの便（びん）があったので、それに乗（こ）って帰（かえ）るでござる」

「火星（かせい）に、そんなのがあったのか」

「あったのでござる」

「俺（おれ）も、その便（びん）に乗（の）るぞ」

「お主（ぬし）は、お金（かね）を持（も）って無（な）いから乗（の）れないでござる」

「地球（ちきゅう）に帰（かえ）ったら返（かえ）すから、貸（か）してくれよ」

「拙者（せっしゃ）の利息（りそく）は高（たか）いでござるよ」

「お前（まえ）、意外（いがい）とケチだな。セレブのくせに」

「ちょっと、お嬢（じょう）ちゃん。聞（き）きたい事（こと）があるんですが」

　虎之助達（とらのすけたち）の会話（かいわ）を聞（き）いていた銅鬼（どうき）は、思（おも）わず尋（たず）ねた。

「何（なん）でござるか」

「さっきの話（はなし）は、本当（ほんとう）ですか？」

「本当（ほんとう）でござる。拙者（せっしゃ）の利息（りそく）は、法律（ほうりつ）スレスレまで高（たか）く設定（せってい）しているので、計画性（けいかくせい）が無（な）い人（ひと）は、ご利用（りよう）をお勧（すす）めしないでござる」

「いや、その話（はなし）ではなくて、地球（ちきゅう）に行（い）く便（びん）があるって話（はなし）ですよ」

「お主（ぬし）は、何者（なにもの）でござる？タコでは無（な）いし、もしかして地球人（ちきゅうじん）でござるか」

「コイツは地球（ちきゅう）の鬼（おに）だ！俺（おれ）には、コイツから闇（やみ）のオーラが見（み）える」

　アキレスが指摘（してき）した。

「実（じつ）は、そうなんです。鬼（おに）ロボっていう奴（やつ）に、火星（ここ）まで飛（と）ばされて来（き）たんです」

「鬼（おに）ロボは、拙者（せっしゃ）が倒（たお）したでござる」

「鬼（おに）ロボを倒（たお）した。まさか君（きみ）はＤＳP［デビルスペシャルポリス］の転生者（てんせいしゃ）で、金鬼（きんき）と銀鬼（ぎんき）を倒（たお）した娘（むすめ）さんでは？」

「金鬼（きんき）も銀鬼（ぎんき）も、拙者（せっしゃ）が倒（たお）したでござる」

ーーこんな所（ところ）で、兄達（あにたち）の仇（かたき）と出会（であ）うとはーー

「それで、本当（ほんとう）に地球（ちきゅう）に帰（かえ）る便（びん）があるんですか？」

「街（まち）の空港（くうこう）に、関西国際空港行（かんさいこくさいくうこう）きの便（びん）があるでござる」

ーーそれが聞（き）けたら、もう遠慮（えんりょ）する事（こと）は無（な）い。兄達（あにたち）の仇（かたき）を討（う）たせてもらうーー

「俺（おれ）は、金鬼（きんき）と銀鬼（ぎんき）の弟（おとうと）の銅鬼（どうき）だ。勝負（しょうぶ）してもらうぞ小娘（こむすめ）！」

　銅鬼（どうき）は、虎之助（とらのすけ）に向（む）けて剣（けん）を構（かま）える。

「駄目（だめ）よ、銅鬼（どうき）！こんな可愛（かわい）らしい女の子に剣（けん）を向（む）けるなんてぇ」

　パクチーが、止（とめ）に入（はい）った。

「しかし、パクチーさん。この娘（こ）は兄達（あにたち）の仇（かたき）なんです」

「仇（かたき）と言（い）うと、お兄様達（にいさまたち）は殺（ころ）されたんですかぁ？」

「いえ、この娘（こ）との戦（たたか）いに敗（やぶ）れて、今（いま）は岡山県（おかやまけん）で元気（げんき）に暮（く）らしています」

「じゃ、別（べつ）に仇（かたき）と言（い）うほどでは無（な）いですぅ」

「そう言（い）われれば、そうなんですが、この小娘（こむすめ）とは決着（けっちゃく）を付（つ）けたいのです」

　銅鬼（どうき）の訴（うった）えに押（お）されてパクチーは

「銅鬼（どうき）が、こう言（い）ってますが、どうしますぅ？」

　と、虎之助（とらのすけ）に聞（き）いてみた。

「別（べつ）に良（い）いでござるよ。このアキレスに勝（か）てたら、拙者（せっしゃ）の相手（あいて）をしてやるでござる」

　虎之助（とらのすけ）はアキレスを、銅鬼（どうき）の前（まえ）に突（つ）き出（だ）した。

「えっ、何（なん）で俺（おれ）が？」

　アキレスは、訳（わけ）がわからないという顔（かお）をして、戸惑（とまど）っている。

「ごちゃごちゃ言（い）ってないで、この鬼（おに）を倒（たお）すでござる」

「まあ、鬼（おに）を倒（たお）すのが俺（おれ）の仕事（しごと）だから、良（い）いんだけど。何（なん）で、俺（おれ）がお前（まえ）より格下扱（かくしたあつか）いになってるんだ？」

「お主（ぬし）が、拙者（せっしゃ）より格下（かくした）だからでござる」

「そんな訳（わけ）ねえだろ！俺（おれ）の方（ほう）が強（つよ）いわ！」

　アキレスはキレかけている。

「お主（ぬし）は、格下（かくした）のザコ助（すけ）でござる」

「なんだと、このチビ助（すけ）！」

「拙者（せっしゃ）はチビじゃないでござる！チビって言（い）う奴（やつ）がチビでござる！」

「俺（おれ）もチビじゃねぇよ！って言（い）うか、お前（まえ）の言（い）ってる事（こと）は根本的（こんぽんてき）に変（へん）だぞ」

「ちょっと、お前（まえ）ら！俺（おれ）は、その小娘（こむすめ）と戦（たたか）いたいって言ってんだろ！」

　虎之助（とらのすけ）とアキレスが言（い）い争（あらそ）っている間（あいだ）に、銅鬼（どうき）が割（わ）って入（はい）ったが

「テメエはすっこんでろ！」

「お主（ぬし）は鬼臭（おにしゅう）がキツいから、あっちに行（い）ってて欲（ほ）しいでござる」

　と、ボロカスに言（い）われてしまった。

「俺（おれ）に鬼臭（おにしゅう）なんかあるか！二人共（ふたりとも）、ブッ殺（ころ）してやる！！」

　ブチ切（き）れた銅鬼（どうき）がアキレスに殴（なぐ）りかかる

バキッ！

　が、反対（はんたい）にアキレスに殴（なぐ）られて、銅鬼（どうき）は倒（たお）れてしまった。　

「俺（おれ）のアキレスパンチは無敵（むてき）だ」

　勝（かち）ち誇（ほこ）っているアキレスに対（たい）して、パクチーが睨（にら）みつけている。

「よくも、私（わたし）の友達（ともだち）を殴（なぐ）ったわねぇ」

ーーヤバい！太陽系暗黒大魔王（たいようけいあんこくだいまおう）の娘（むすめ）の友人（ゆうじん）を、殴（なぐ）ったのはマズかったかーー

　銅鬼（どうき）を介抱（かいほう）しているパクチーを見（み）て、焦（あせ）るアキレスであった。