第31話 火星戦記パート1


「えい!やー!」

 少年しょうねんになった左近さこんは、DSP[デビルスペシャルポリス]の宿舎しゅくしゃ庭先にわさき一生懸命いっしょうけんめい竹刀しないっている。

いぞ左近さこん、その調子ちょうしだ」

 岩法師いわほうしが、左近さこん修行しゅぎょう見守みまもっていると、鬼一きいち庭先にわさきに出て来た。

頑張がんばってるな、左近さこん

左近さこんは、もともと練習熱心れんしゅうねっしんでしたから。それより、虎之助達とらのすけたちは、まだもどらんのですか?」

携帯けいたい電話でんわしても圏外けんがいるようで、電波でんぱつながらない。まだ冥界めいかいかもれん」

「しかし、冥界めいかいなんかってかえってれるんですかね?」

普通ふつう無理むりだ」

よわりましたね。よし左近さこん練習れんしゅうは、それぐらいにしてめしにしよう」

ぼく、ハンバーグがべたい」

「じゃあ、夕食ゆうしょくはハンバーグ定食ていしょくにしよう」

 岩法師達いわほうしたちが、食事しょくじはなしをしていると

「ただいま」

 と、小太郎こたろう狂四郎きょうしろうかえってた。

「おまえら、冥界めいかいからかえってれたのか?」

 鬼一きいち岩法師いわほうしおどろいている。

冥界めいかいからは、なんとかかえってたのですが……」

 狂四郎きょうしろう言葉ことばにごす。

「おまえら2人だけか、虎之助とらのすけは、どうした?」

 岩法師いわほうしは、虎之助とらのすけこと心配しんぱいしてたずねた。

ねえさんは、へんなオッサンに、火星かせいれてかれてもうた」

 小太郎こたろうは、半泣はんなききである。

「なんだと!」



 そのころ火星かせいでは

今日きょうから、君達きみたちには、ここではたらいてもらうでヤンス」

 タピオカミルクティーの屋台やたいの前で、助清すけきよ虎之助とらのすけとアキレスに、仕事しごと説明せつめいおこなっていた。

「この俺様おれさまに、くだらんことをさせるんじゃねえ!」

 アキレスは、怒鳴どなりながら拒否きょひしている。

「お給金きゅうきんは、いくらくれるのでござるか?」

 アキレスとはちがって、虎之助とらのすけ給料きゅうりょうがく心配しんぱいなようである。

報酬ほうしゅうなら、ワスが天王星てんのうせいひろった、1000カラットのダイヤモンドをあげるでヤンス。日本円にほんえんにすると100億円おくえんはするでヤンス」

「ありがとうでござる」

 虎之助とらのすけは、助清すけきよからダイヤモンドをった。

君達きみたちには、屋台やたいほか重大じゅうだい使命しめいもあるでヤンス」

「どんな使命しめいでござるか?」

「ワスと一緒いっしょに、太陽神たいようしんアトゥムをたおすでヤンス」

「ちょっとて。太陽神たいようしんたおすって、アンタはいったい何者なにものだ?」

 屋台やたい手伝てつだいから、いきなりはなしのスケールがおおきくなったので、アキレスはおどろいている。

世間せけんでは、ワスのこと太陽神暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおうぶでヤンス。ワスと一緒いっしょやみ軍団ぐんだんひきいてアトゥムをたおすでヤンス」

「それで、お給金きゅうきんは、いくらもらえるのでござるか?」

きみには、さっきダイヤモンドをあげたでヤンス」

「このダイヤは屋台やたい手伝てつだいのぶんでござる。太陽神たいようしんたおすなら、もっともらうでござる」

おもったより、しっかりしたでヤンスね。いくらしいのでヤンスか?」

毎日まいにち一皿ひとさらずつ、タコやきべたいでござる」

こまったでヤンスな。火星かせいには、タコやきいでヤンス」

うそでござる!そこらじゅうに、タコがたくさんるでござる」

「いや、かれらはもとはタコだが、今は火星人かせいじんでヤンス。べたらむすめのパクチーにおこられるでヤンス」

「じゃ、毎月まいつき手取てどりりで16万円まんえんよこすでござる。ボーナスはねん2かい2ヶ月分かげつぶんでござる」

「わかったでヤンス。それぐらいなら大丈夫だいじょうぶでヤンスよ」

おれことわる」

 アキレスは、キッパリとった。

おれはゼウスさま部下ぶかであり、ひかり戦士せんしだ。やみ軍団ぐんだんなどには、けっしてくわわらない」

生意気なまいきうなでヤンス!」

バチーン!

 いきなり助清すけきよにビンタされ、アキレスはんだ。

「グフッ、なんてパワーだ。あらゆる攻撃こうげきかないおれが、こんなにばされるとは」

「おぬしは、がままでござるな」

 さっそくエプロンをけて、虎之助とらのすけ屋台やたい手伝てつだはじめている。

「おまえは、もとから悪魔側あくまがわ人間にんげんだから大丈夫だいじょうぶかもれないが、おれひかり戦士せんしなんだよ!」

拙者せっしゃも、ひかり戦士せんしでござるよ」

うそつけ!おまえようひかり戦士せんしがいるか」

「グタグタってないで、さっさとはたらくでヤンス」

ことわる!」

 アキレスの意志いしかたい。

ドカッ!

 助清すけきよのアッパーカットで、アキレスは100メートルほど上空じょうくうんだ。

ドタッ!

 そして、アキレスは地面じめんちてた。

「うぐっ。何故なぜだ?おれにはどんな攻撃こうげきも、かないはずなのに」

 きながらアキレスはうめいている。

「ワスは太陽神暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおうでヤンスよ。そんな、ちゃちな防御能力ぼうぎょのうりょくはワスからすればいにひとしいでヤンス」

「くそっ!このオッサン、ちがって、なんてつよさだ」

「サボってないで、おまえも、しっかりはたらくでござる」

 アキレスは、虎之助とらのすけにまで注意ちゅういされてしまった。虎之助とらのすけ報酬ほうしゅう満足まんぞくしているようで、真面目まじめはたらいている。

 その何度なんどかアキレスは助清すけきよいどむが、その都度つどボコボコにやられて、結局けっきょくタピオカミルクティーの屋台やたいはたらかせられることとなった。

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