第9話 国際電器保安協会の逆襲でござる

外車修理専門店がいしゃしゅうりせんもんてん『ワールドモータース』の店内では、エージュントホルスと初老しょろうの男が密談みつだんをしていた。

「どうだった氾会はんかい?」

 初老しょろうの男は氾会はんかいと言う名らしい。

「大阪府警でDSP(デビルスペシャルポリス)の情報じょうほうを見て来たのだが、あの安倍あべと言う男、俺のステルス機能きのう通用つうようしなかった、ただ者では無いな。非常用ひじょうようステルス機能きのうを使って逃げて来んだが、非常用ひじょうようは1分しか持たないから、今後はバージョンアップが必要ひつようだ」

「俺なんか、狂四郎と言う若造わかぞう心臓しんぞうを、えぐり出されたぞ」

「そいつも要注意ようちょういだな。そう言えば、インドのエージュントは2人とも、虎之助とらのすけと言うDSPの小娘に殺されたらしいな」

「我々は、少しDSPをめていたようだ。氾会はんかい、俺もバージョンアップをしてくれないか」

「わかっている。元々、俺は強化手術きょうかしゅじゅつ専門せんもん技術職ぎじゅつしょくだからな。戦闘せんとうは、お前達エージュントにまかせるよ」



 氾会はんかいはスマホをディスプレイにつなぐと、安倍顧問あべこもん端末たんまつから撮影さつえいした映像えいぞううつし出した。

「コイツが、安倍と言って大阪府警でのDSPの責任者せきにんしゃだ」

「アンタが大阪府警で会った、陰陽師おんみょうじ安倍一族あべいちぞくやつだな」

「次は左近さこんだ、一応いちおう、大阪DSPのリーダーだ。武士で実力は不明」

「リーダーだから、やっぱり一番強いんだろうな」

「その次が岩法師いわほうし。元々は僧侶そうりょらしく法力ほうりきを使う」

陰陽師おんみょうじ法力ほうりきは、どこがちがうんだ?」

「俺にも良く分からんが、法力ほうりきの方が攻撃力こうげきりょくおとるが、防御ぼうぎょじゅつは多いな」

僧侶そうりょが使うから、そうなるのかもな」

「こいつが小太郎、武士だ。まだ若造わかぞうたいした事はない」

 エージュントホルスは真剣しんけんに聞いている。

「これが虎之助とらのすけ。インドのエージュント2人をったやつだから要注意人物ようちょういじんぶつだ。もと忍者にんじゃらしい」

「アイツら、こんな小娘にられたのか?」

「転生者を外見がいけん判断はんだんすると痛い目にあうぞ。最後が、お前とやり合った狂四郎だ。武士らしいが仙道せんどうを使う」

仙道せんどうには、してやられた。元々は、お前の国の仙人せんにんじゅつか?」

おそらく、法力ほうりき仙道せんどうも中国が源流げんりゅうだ。それより、バビエルが来れなくなり、インドの2人もられてしまったので、本部にエージュントの補充ほじゅう依頼いらいしている。それまではお前の強化きょうか専念せんねんするから、無駄むだな行動はひかえろよ」

「わかってるよ」

「わかってるでござる」

「あれっ?返事へんじが1人多いな」

「誰かが侵入しんにゅうしたのでござるな」

「誰だ?」

「誰でござる?」

「いや、お前だろ!」

拙者せっしやでござるか?」

「あっ!お前は、さっきディスプレイで見たDSPの小娘!」

 と、さけんだ瞬間しゅんかんエージュントホルスの首が落ちた。

「次はお前でござる」

 虎之助とらのすけは刀を氾会はんかいに向けた。

「どうして、ここが分かった?」

「姿を消しても、式神しきがみのチワワが、ずっとお前のにおいいを追っていたのでござる」

「クソっ!」

 氾会はんかいは、急いで非常用ひじょうようステルス機能きのうを使って姿すがたを消した。

拙者せっしやに、そんな小細工こざいく無駄むだでござる」

 かすかな音と気配けはい察知さっちして、虎之助とらのすけ氾会はんかいたてに真っ二つにった。

 氾会はんかいは声を出す間もなく、左右に別れてパタリとたおれた。

 虎之助とらのすけが表に出ると、店の前で式神しきがみのチワワが待っていた。

首尾しゅびはどうだったワン」

「2人とも、死んだでござる」

 『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』にうらみを持つ虎之助とらのすけうは、安倍顧問あべこもん式神しきがみであるチワワをりていたのである。

「おれい骨付ほねつきカルビを、あげるでござる」

「うれしいんだワン」

 チワワは、尻尾しっぽって喜んだ。



出来できました、岩法師先生」

「カエルの式神しきがみか、虫から両生類りょうせいるいに進化したな。この調子ちょうし哺乳類ほにゅうるいが出せるよう頑張がんばろう」

 大阪城公園おおさかじょうこうえんで、小太郎は岩法師に式神しきがみの出し方をならっていた。

「ようし、哺乳類ほにゅうるいが出るまで頑張がんばるでぇ!」

 小太郎は、っている。

 そんな2人を、少しはなれた所から見ている人影ひとかげがあった。

 アンドロイド鬼のチャッピーである。

 チャッピーが、こちらに向かって歩いて来る。

「小太郎、後ろから来る男に気を付けろ」

 岩法師に、そう言われて小太郎は、チラッと振り向いてみた。

「普通の人に見えますが、あの人が何か?」

「奴からは生気せいきを感じない、鬼が送り込んで来たロボットかも知れぬ」

 チャッピーは、ゆっくり近づいて来る。

 小太郎は刀に手をかけた。

 チャッピーが、いきなりもうスピードで走り出した。

 あと、1メートルという所で小太郎が刀をいた。

ズバッ!

小太郎流抜刀術こたろうりゅうばっとうじゅつや」

 と、言いはなった小太郎の刀が粉々にくだった。

「あれっ、おかしいな?」

 不思議ふしぎがっている小太郎をよそに、チャッピーは岩法師に向かって来る。

ガシッ!

 金属同士きんぞくどうしがぶつかる音がする。

 チャッピーのこぶしを岩法師がなたで受け止めた。

「何者だ!」

 岩法師が怒鳴どな

「僕、チャッピー。お前らみんな殺す」

ガキンッ!

 背後はいごから小太郎が短刀たんとうでチャッピーのわきすが、短刀たんとうれてしまった。

「こいつ、刃物はものが通じへん。やはりロボットや」

「やむをん」

 岩法師が、おきょうとなえると、あたりにきりがかかり岩法師と小太郎の姿すがたかくれた。

「どこだ?」

 まわりを見回みまわすが、岩法師と小太郎の姿すがたは見えない。

「これは、あの坊主ぼうず法力ほうりきと言うやつか」

 しばらくするときりれて、通常つうじょう景色けしきもどった。

「逃げられた様だ」

 チャッピーは、あきらめて歩き出した。



あぶなかったな小太郎」

「岩法師先生、さっきのわざは?」

霧箱きりばこと言うじゅつだ。相手をきりの中にめるのだが、コチラからも攻撃こうげき出来できないのが欠点けってんだな」

 宿舎しゅくしゃもどると岩法師と小太郎は、とりあえず安倍顧問あべこもんに電話でチャッピーのけん報告ほうこくした。

「どうかしたのでござるか?」

 虎之助とらのすけは食堂で、豚の生姜しょうが定食ていしょくを食べている。

「鬼のロボットにおそわれて、逃げて来たんです」

「また、ロボットでござるか」

「狂四郎は、どこだ?」

 岩法師が聞いた。

大阪城公園おおさかじょうこうえん仙道せんどう特訓とっくんをするって言って、出かけたでござる」

「あそこはヤバいで!さっきの鬼ロボットが、まだるかも知れまへん」

「スマホで、連絡れんらくしてみるでござる」

 虎之助とらのすが電話をかけるが、狂四郎は出ない。

仕方しかたない、拙者せっしゃがタヌキと一緒いっしょに見て来るでござる」

「姉さん1人じゃあぶないから、俺も行きますよ」

大丈夫だいじょうぶでござるよ。拙者せっしゃの強さは、M1A2エイブラムス戦車せんしゃ108台分でござる」

「ええっ!米軍べいぐん戦車せんしゃ108台分でっか、さすが姉さんでんなぁ」

「2人ともアホな事言ってないで、全員で行くぞ」

 岩法師に言われ、結局けっきょく3人で狂四郎をむかえに行く事になった。



 そのころ、狂四郎は大阪城公園おおさかじょうこうえんに行くと言いながら、じつは桜田刑事と心斎橋しんさいばしのフレンチレストランで食事をしていた。

「すいません、こんな高い食事をおごってもらって」

「いいのよ、狂四郎君には助けてもらったから、そのおれいよ」

「桜田刑事を助けるのは当然ですよ。DSPの仲間で、いつも親切しんせつにしてもらってるし。それに‥‥」

「それに、なに?」

「それに、桜田刑事は僕にとって大切なひとだから」

 そう言い終わった時には、2人の顔は真っ赤になっていた。

 狂四郎のバックパックの中から、スマホの着信音ちゃくしんおんっているが、2人の耳にはとどいていない。

 仲間の心配しんぱいをよそに、二人のなか急接近きゅうせっきんして行く。



 大阪城公園おおさかじょうこうえんでは『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』からのすけである、ライアンとマーゴットが、タコ焼きを食べながら大阪おおさか観光かんこうをしていた。

「ホルスと氾会はんかいのやつ、俺達を呼んでおいといて連絡をつとは、ふざけてるな」

 ライアンはおこっている。

「もしかして、敵にられたんじゃないかしら」

「ホルスはともかく、もの氾会はんかいが、鬼や転生者にられる事は無いと思うけどなぁ」

氾会はんかいって本当にものなの?アンタの見積みつもりはあまいから」

「俺は、人を見る目だけは自信じしんがあるんだ。だいたい、第一だいいち印象いんしょうで相手の器量きりょうが分かる」

「じゃ、さっきから、このへんをうろついている、あの男が何者なにものか分かるの?」

 先程さきほどから、チャッピーが公園内こうえんないを、うろついている。

「アイツは、人間では無いな。たぶんアンドロイドだ」

「なに適当てきとうな事言ってんの。じゃ、あの女の子は?」

 マーゴットは、大阪城公園おおさかじょうこうえん到着とうちゃくしたばかりの虎之助とらのすけゆびさした。

「あの女の子の戦闘力せんとうりょくおそろしく高いぞ。米軍べいぐんのM1A2エイブラムス戦車せんしゃ108台分ぐらいある」

「そんなに強いの!もしかして、あの娘が転生者じゃない?」

「きっとそうだ。しかし敵ながらおそろしい女の子だ。だが、俺も空母エンタープライズ3隻分せきぶん戦闘力せんとうりょくを持つと言われた男だ、戦車せんしゃごときに負けはせん。あの女の子は俺がる」

 しくも、大阪城公園おおさかじょうこうえんに、アンドロイド鬼と『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』のエージュントと、転送者達の3組が鉢合はちあわせてしまった。



 火星では、『太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』が中で寝ているつぼ刺激しげきしないため、宮殿きゅうでんには誰も入れないように警備けいびをつける事にした。

「これで500年は安心ですぅ」

 パクチーは、ニコニコしている。

「そうですか、それなら良いんでチュが」

 タコ太郎達は、まだ『太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』の復活ふっかつおそれている。

 念願ねんがんであった打倒だとう『山田タコ14世』をたしえた銅鬼どうきは、不意ふい故郷こきょうである地球に帰りたくなって

「あの、パクチーさん。つかぬ事をお聞きしますが、アナタの魔力まりょくで私を地球まで送る事は、出来できないでしょうか?」

 と、たずねてみた。

「そうですねぇ、太陽から膨大ぼうだいなエネルギーが、こちらに向かって出てるので、逆方向ぎゃくほうこうの木星なら行けますよぉ」

「木星ですか……」

ーー木星なら、まだ火星の方がマシだーー

 落ち込んでいる銅鬼どうきを見てパクチーは

「おタマなら、何とか出来できるかも知れないですぅ」

 と、提案ていあんした。

「いえっ!お父様とうさまこさなくて結構けっこうです」

 『太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』にきられては、たまったもんじゃ無い。

大丈夫だいじょうぶだよ、銅鬼どうきには僕たちがるでチュよ」

 様子ようすを見ていた、タコ太郎もはげましてくれた。

ーーそうだ、火星には、タコ太郎や9人の鬼仲間おになかまる。俺は火星で生きて行こうーー

 火星でらして行く事を、決心けっしんする銅鬼どうきであった。

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