第10話 M1A2エイブラムス戦車108台分でござる

「アイツは、鬼ロボのチャッピーや!」

 チャッピーを見つけた小太郎こたろうは、岩法師《》いわほうしと虎之助とらのすけつたえた。

「やはり、まだ公園内こうえんないたのか」

「チャッピーは、拙者せっしゃるでござる」

「気を付けろ、やつは強いぞ」

 岩法師が警告けいこくしたが、虎之助とらのすけは、すでにチャッピーに向かって走り出している。

 間もなくチャッピーを攻撃こうげき射程しゃてい圏内けんないとらえるという所で、いきなり背後はいごからライアンが飛び出して来た。

 ライアンは、後から虎之助とらのすけ背中せなか深々ふかぶかとナイフをき立てた。ズブッ!っという音がして、虎之助とらのすけは、そのままパタリとたおれる。

ったぞ!DSP(デビルスペシャルポリス)の小娘をたおした」

 ライアンは、そのままチャッピーに向かって行く。

「ああっ!姉さんがられてもうた」

ガチッ!

 チャッピーが右腕みぎうででライアンのナイフをはじいた。

「誰、お前?チャッピーを攻撃こうげきするやつは、みんな殺す」

 チャッピーの左ストレートがライアンをおそう。

ガシッ!

 ライアンはチャッピーのこぶしを、手のひらめ、チャッピーの後頭部こうとうぶにハイキックをたたき込む。

「小娘は瞬殺しゅんさつしたけど、アンドロイドとは互角ごかくみたいね」

 マーゴットは、たこ焼きを食べながら呑気のんき観戦かんせんしている。

「そうでござるな」

 いつの間にか、すぐとなり虎之助とらのすけがいる。

「えっ!アンタさっきられたんじゃ?」

 マーゴットは、死ぬほどおどろいた。

わりじゅつでござる」

 虎之助とらのすけゆびさす方向には、虎之助とらのすけのジャンバーとスカートを着た丸太まるたころがっている。

ーーこいつ、下着姿したぎすがたのままで、敵である私のすぐそばまで来るとは、ただ者じゃないわねーー

「姉さん!生きてたんでっか!」

 小太郎が喜びながらって来た。

拙者せっしゃの強さは、エイブラムス戦車せんしゃ108台分でござる。ナイフぐらいでは死なないでござる」

ーーええっ!この娘やっぱり、エイブラムス戦車せんしゃ108台分の強さなんだ!ライアンの言った通りだわーー

「この女も敵でっか?」

「たぶん敵でござる」

綺麗きれいな外人さんやなぁ」

 小太郎はマーゴットに見惚みとれている。

ーーこの若い男の方は弱そうねーー

 小太郎は手を差し出しながら

「ネーチャン、手握てぇにぎってもええ?」

 と、マーゴットに聞いてみた。

駄目だめに決まってるでしょ!!」

 マーゴットにおこられてしまった。

「小太郎はアホでござる」

 虎之助とらのすけは、ゲラゲラ笑いだした。

虎之助とらのすけ、服を着なさい」

 笑っていると、岩法師が丸太まるたから服を取って来てくれた。

「ありがとうでござる」

虎之助とらのすけ、この女性は誰だ?」

「敵でござる」

拙僧せっそうの気のせいか、小太郎が言いよってるように見えるが?」

 虎之助とらのすけの横で、小太郎がマーゴットを口説くどいている。

「ネーチャン、一緒いっしょにコーヒー飲みに行けへんか?」

「行くわけ無いでしょう!」

「小太郎!いい加減かげんにしないか。この女は敵だぞ!」

「あっ、岩法師先生。すいません」

拙者せっしゃにも、タコ焼き1つちょうだい」

 虎之助とらのすけがマーゴットに、タコ焼きをねだる。

「何で、敵にあげなきゃいけないのよ!」

 キッパリとことわれてしまった。

「こら!虎之助とらのすけ。敵に食べ物を、ねだるんじゃない!それよりも早く服を着なさい、みんなにジロジロ見られてるじゃないか」

 岩法師にもおこられた。

「姉さんもおこられてはるわ」

 小太郎が笑っている。

 しぶしぶ、虎之助とらのすけは服を着だした。



 チャッピーと互角ごかくの戦いをしていたライアンは、さすがにつかれて来た。

 相手は、つかれを知らないアンドロイドである、戦闘せんとうが長びくと、やはり押され気味ぎみになって来る。

ーーマーゴットは何してるんだ?2人がかりならたおせるのにーー

 と思い、チラッとって見ると、たおしたはずの小娘達と談笑だんしょうしているではないか。

「クソっ!頑張がんばってるのは俺だけか。やってられねえ、退却たいきゃくするぞ!」

 ライアンは、マーゴットに合図あいずすると素早すばく走りって行った。



「あれっ?ライアンが退却たいきゃくしちゃった。仕方しかたない、残りのタコ焼きアンタにあげるわ」

 そう言うと、マーゴットもタコ焼きを虎之助とらのすけに渡して、って行ってしまった。

「モグモグ、いそがしい女でござるね」

 マーゴットにもらった、タコ焼きを食べながら虎之助とらのすけは、あき口調くちょうで言った。

虎之助とらのすけ、そんなの食べてる場合じゃないぞ。鬼ロボがこっちに向かって来るぞ」

 チャッピーが、こちらに気付きずいて向かって来る。

「アイツはヤバいやつや!姉さん逃げましょう」

「モグモグ、タコ焼きを食べ終わったら、拙者せっしゃがやっつけるでござる」

虎之助とらのすけ!もう時間が無いぞ、すぐそこまで来ている」

 岩法師はなたかまえる。

「しょうが無いでござる。小太郎、タコ焼きをっておくでござる」

 タコ焼きを小太郎に渡すと、素早すば虎之助とらのすけはチャッピーに向かった。

 いきなり、虎之助とらのすけ手刀しゅとうがチャッピーの首をねらう。

 チャッピーは右手で防御ぼうぎょしながら、虎之助とらのすけ心臓しんぞうねらって手刀しゅとうり出す。

 小太郎は、タコ焼きのさらから、マーゴットが使った爪楊枝つまようじさがす。

スパッツ!

 するどい音がして、虎之助とらのすけとチャッピーが交差こうさしたあと、虎之助とらのすけのジャンバーの布が飛び散り、チャッピーの防御ぼうぎょしていた右手が首ごと落ちた。

「やったな!虎之助とらのすけ

「また、ジャンバーがやぶれたでござる」

「やった!さっきのネーチャンの爪楊枝つまようじ見つけたで!」

 小太郎がさけんだ。

「おい、あさましい真似まねは止めろ!」

 岩法師に注意ちゅういされるが、小太郎は爪楊枝つまようじはなさない。

「それは、拙者せっしゃが使っていた爪楊枝つまようじでござるよ」

 戻って来た虎之助とらのすけが言った。

「えっ!ほんまでっか?」

 小太郎は、虎之助とらのすけの顔を見た。

 こっちはこっちで、可愛かわいらしい顔をしている。

パクっ!

 小太郎は持っていた爪楊枝つまようじを口にくわえた。

「こっちでも良いんかい!」

ボカッ!

 すぐに岩法師になぐられた。

「小太郎はアホでござる」

 虎之助とらのすけは笑っている。


「お前ら全員殺す」

 なんと、自分の首を左手できかかえたチャッピーが、こちらに向かって歩いて来るではないか。

「ひぃー、オバケでござる」

 虎之助とらのすけおどろいて逃げようとしたが、岩法師にめられた。

「オバケでは無い。あれは、ただの機械きかいだ」

機械きかいと言うと、スマホみたいな物でござるな」

「そうだ。だからこわがる必要ひつようは無い」

「でも、見た目がこわいでんなぁ」

おそらく、頭脳ずのう動力源どうりょくげんよう急所きゅうしょ破壊はかいすれば、動かなくなるはずだ」

「それは、どこでござるか?」

「男性やったら股間こかんとちゃいますか?」

「それは、ちがうと思うでござる」

胸部きょうぶあやしいな」

「たぶん、そこでござるな」

 虎之助とらのすけ達が相談そうだんしている間に、チャッピーは自分で頭部とうぶ右腕みぎうで胴体どうたい接続せつぞくしてなおしている。

「あれっ!鬼ロボがもともどってまっせ」

「あの野郎やろう、自分でなおしやがった」

もともどったら、全然ぜんぜんこわく無くなったでござる」

 虎之助とらのすけが、チャッピーに向かって走り出した。

 チャッピーは、両足を少し広げてわきめ、空手のかまえを見せた。

「チャッピーの正拳せいけんきは、音速おんそくえる一撃必殺いちげきひっさつわざだ、受けてみよ小娘」

バギッ!!

 何かがれる音がした。

手応てごたえあり!チャッピーが勝った」

 虎之助とらのすけは、チャッピーの足元あしもとたおれたまま動かない。


「うあっ!姉さんが、また死んでもうた」

 小太郎は、うろたえている。

「落ち着け小太郎!たぶんわりじゅつだ。と、拙僧せっそうは思う。と言うか、思いたい」

 岩法師も心配しんぱいそうである。

拙者せっしゃも、そう思うでござる」

 虎之助とらのすけは、また下着姿したぎすがたである。

 良く見てみると、チャッピーの足元あしもとたおれているのは、虎之助とらのすけのスカートをいた丸太まるたであった。

「うあ〜ん!良かった、姉さん」

 小太郎は、思わず虎之助とらのすけきついたが

「こら!小太郎。下着姿したぎすがたの娘にきつくんじゃない」

 無理やり岩法師にはなされてしまった。


「あれっ。チャッピーが勝ったと思ったのに変だな?」

 チャッピーが、なやみながら、こちらに向かって来る。

「また、来たで」

「アイツは、首を切っても死なないでござる」

「鬼じゃなくて、鬼のロボットだから弱点じゃくてんちがうんだ」

面倒めんどうくさいでござるが、じゅつを使うでござる」

 虎之助とらのすけは、またチャッピーに向かって走り出した。

「チャッピー、今後こそ殺す!」

雷遁らいとんじゅつでござる」

 虎之助とらのすけ手刀しゅとうがチャッピーのむねさり、百万ボルトの高圧電流こうあつでんりゅうが流れた。

 プシュー

 メインのバッテリーがいて、チャッピーの体内に流れる電気系統でんきけいとう停止ていしした。

「くフッ」

 チャッピーは、くずれ落ちるようにたおれる。

たおしたでござる」

「さすが姉さんは無敵むてきでんなぁ」

 小太郎は、虎之助とらのすけの強さに何の疑問ぎもんいだいていないようだが、強敵きょうてきであるチャッピーをたおしたあと、下着姿したぎすがたのままで何喰なにくわぬ顔をしている虎之助とらのすけを見てーーこの娘はわれらと何かがちがうーーと、岩法師はあらためて思い知らされた。

「じゃ、後は処理しょりはんまかせて帰りましょう」

「いや、ちょっと待て。狂四郎を、まだ見つけていないぞ」

「でも、もうココには、敵がおれへんから、大丈夫だいじょうぶちゃいますか」

「まあ、それもそうだな。一旦いったん帰るか」

「帰って、カキフライ定食ていしょくを食べるでござる」

虎之助とらのすけ、スカートぐらいはきなさい」

 岩法師が、また丸太まるたからスカートをがせて、持って来てくれた。

 


 狂四郎きょうしろうが桜田刑事と別れて、DSP[デビルスペシャルポリス]の宿舎しゅくしゃに帰ると

「狂四郎、大丈夫だいじょうぶだったか?」

 岩法師に、いきなり心配しんぱいされた。

全然ぜんぜん大丈夫だいじょうぶですけど。何かあったんですか?」

大阪城公園おおさかじょうこうえんに、鬼のロボットが出て来て大変だったでござる。狂四郎のスマホに電話したのでござるが」

 そう言われ、狂四郎は自分のスマホを見てみた。

「ホントだ。着信履歴ちゃくしんりれきが入ってる」

「ちゃんと、スマホをチェックしておかないと、駄目だめでござるよ」

 と、虎之助とらのすけ注意ちゅういされた。

「そう言えば、姉さんは転生者のわりに、スマホを使いこなしてまんなぁ」

拙者せっしゃ知能ちのうが高いから、スマホなんて簡単かんたんでござる」

「へえ、さすが姉さんでんなぁ」

 小太郎は感心かんしんしている。

拙者せっしゃかしこさは、アインシュタインと諸葛亮孔明しょかつりょうこうめいとチンパンジーをして、3でったぐらいでござる」

ーー何故なぜ、そこにチンパンジーを入れる?ーー

 岩法師と狂四郎は不思議ふしぎに思った。

「すんまへん、そのショカツなんとか言う人を知りまへんので、その人をはぶいて、説明せつめいしてもらえまへんか」

「しょうが無いでござるね。拙者せっしゃかしこさは、アインシュタインとチンパンジー2匹をして、3でったぐらいでござる」

ーーはぶいた分は、チンパンジーをして行くのか!ーー

「やっぱり、そのアインなんとかさんも知りまへんわ」

「ええと、じゃ、拙者せっしゃかしこさは、チンパンジー3匹を、3でったぐらいでござる」

「なるほど、やっと分かりました。姉さんのかしこさは、チンパンジーと同じぐらいと言う事ですね?」

計算上けいさんじょうは、そうなるでござる」

ーーそうなって良いのか!!ーー

 岩法師と狂四郎はあきれている。

「さすが姉さんでんなぁ」

 何故なぜか、小太郎は感心かんしんしている。

「狂四郎は、どれぐらいかしこいんやろ?」

「カメムシぐらいでござる」

 自信じしん満々まんまん虎之助とらのすけが答える。

「へえ、何かくさそうでんなぁ」 

「俺は、もっとかしこいわ!」

「いや、狂四郎は阿呆あほでござる」

「このAカップ娘!ぶっ殺してやる!!」

 狂四郎が切れた。

「こら!お前らめないか。せっかく強敵きょうてきたおしたと言うのに」

 2人を止める岩法師に電話がかって来た。

「はい、岩法師ですが‥‥‥‥何ですと!それは本当ですか?」

 何やら、深刻しんこくな話のようだ。

 電話を切ると

「チャッピーが生き返ったそうだ」

 と、みんなにげた。



 1時間ほど前

 虎之助とらのすけ達がった後、警察けいさつ特殊とくしゅ処理班しょりはんがチャッピーの回収作業かいしゅうさぎょうを行っていた。

「ようし、じゃこの鬼ロボをストレッチャーにせるぞ」

 2名の処理班しょりはんがチャッピーをかつごうとした時、チャッピーの非常用ひじょうようシステムが作動した。

補助電源ほじょでんげんオン。今から再起動さいきどうおこなう。

 虎之助とらのすけたおしたはずのチャッピーは、再起動さいきどうされ立ち上がった。

「あいつらどこ行った?」

 虎之助とらのすけ達をさがすが、すでに立ちった後であり、何処どこにも見あたらない。

「うわっ!コイツ生きてる!」

 警察けいさつ処置班しょりはんの男が、おどろいてさけんだ。

「チャッピーは、死なない。アイツら全員ぶっ殺す」

 おどろ処置班しょりはんの2人を後にして、チャッピーはって行った。

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