第11話 太陽系暗黒大魔王の復活でござる

「あれはいったい何だ?」

 奈良なら飛鳥あすか修行中しゅぎょうちゅう左近さこんは、奇妙きみょう建物たてものを見つけた。

 古代中国こだいちゅうごくにあったような、ふるめかしい一軒家いっけんやである。

 奈良県警ならけんけいのDSP(デビルスペシャルポリス)の責任者せきにんしゃである、大伴おおとも警部けいぶに話すと、その建物たてものには決して近寄ちかよってはいけない、と忠告ちゅうこくされた。

 元々、その建物たてもの常人じょうにんには見えない物で、一部の陰陽師おんみょうじ修行者しゅぎょうしゃだけに、ごくまれに見える事があると言うのである。

常人じょうにんには見えないとは、奇妙きみよう建物たてものですね?」

 気になって左近さこんたずねた。

「あくまでうわさだが、奈良時代ならじだい阿部仲麻呂あべのなかまろと言う高官こうかんが中国に陰陽師おんみょうじ秘伝書ひでんしょを取りに行ったのだが、自身じしんは日本に帰る事が出来できず、他の者に秘伝書ひでんしょたくして、日本に持ち帰らせたそうだ」

 何やら話がむずかしくなって来たが、左近さこん興味きょうみぶかく聞いている。

「その阿部仲麻呂あべのなかまろの息子が、安倍晴明あべのせいめい輩出はいしゅつした安倍一族あべいちぞくであるのだが、阿部仲麻呂あべのなかまろは中国で陰謀いんぼうに巻き込まれくなってしまった」

ーー安倍一族あべいちぞくと言うと、安倍顧問あべこもん家系かけいだなーー

「あの建物たてものは、中国で阿部仲麻呂あべのなかまろんでいた建物たてものである」

「何ですと?」

阿部仲麻呂あべのなかまろは、日本に陰陽師おんみょうじを持ち込んだ功労者こうろうしゃであるが、死後、鬼になったと言われている」

「鬼にですか。では、まだ生きており、建物たてものごと日本に帰って来ていると言う事ですか?」

「そう言い伝えられている。鬼の家という事なので、左近さこん君も決して近寄ちかよらないようにしてくれよ」



「チャッピーが死んで無かったとは、えらい事になりましたなぁ、姉さん」

 DSP[デビルスペシャルポリス]の宿舎しゅくしゃでは、転生者てんせいしゃ達が、くつろいでいる。

「そんな事より、拙者せっしゃのジャンバーがやぶれてしまったので、また買わないといけないでござる」

「姉さんの服は、良くげたりやぶけたりしまんなぁ」

 狂四郎きょうしろうはコーヒーを飲みなが、虎之助とらのすけと小太郎の会話を聞いている。

拙者せっしゃは、お色気いろけキャラだから仕方しかたないでござる」

「ブッ! 」

 狂四郎が飲んでいたコーヒーをき出した。

行儀ぎょうぎが悪いでござるね、狂四郎は」

「いや、お前は絶対ぜったいに、お色気いろけキャラじゃ無いだろう!」

「そんな事は無いでござるよ。拙者せっしゃちまたでは、リアル峰不二子みねふじこばれているでござる。小太郎こたろうも、そう思うでござろう?」

 小太郎はこまった顔をしてる。

「いや、ちょっと、その峰不二子みねふじこという人を知りまへんので、すんまへんが、チンパンジーにえて説明せつめいしてもらえまへんか」

「ええっと、じゃ、拙者せっしゃちまたでは、リアルチンパンジーとばれているでござる」

「なるほど分かりました。姉さんの色気いろけはチンパンジーなみと言う事ですね?」

「そうでござる」

「ブッ!」

 またしても狂四郎は、飲んでいたコーヒーをした。

「またでござるか、狂四郎は、お行儀ぎょうぎが悪いでござるね」

「お前らがアホぎるからだろ!」

「本物の阿呆あほのお前に、アホとばれる筋合すじあいは無いでござる!」

「何だと!このAカップ娘!」

「いや、二人とも、落ち着いて」

 小太郎は、オロオロしながら、2人をめようとした。

「何のさわぎだ! 」

 さわぎを聞いて、岩法師いわほうしが部屋から出て来た。

「それが」

 小太郎に、いきさつを説明せつめいされて、岩法師が虎之助とらのすけと狂四郎を見てみると、2人共まだにらみ合っている。

「2人とも!仲間同士なかまどうし喧嘩けんかしてないで、不死身ふじみのチャッピー対策たいさくを考えろ!! 」

 岩法師に怒鳴どなられてしまった。

「アイツは、雷遁らいとんじゅつ電撃でんげきでも、生き返ったでござる」

 虎之助とらのすけも、不思議ふしぎがっている。

「俺の仙道せんどう通用つうようするかな?」

むずかしいだろうな」

拙者せっしゃは、おなかいたでござる」

「まあ、たしかにはらってはいくさ出来できんと言うし。今日は、特別とくべつ拙僧せっそう美味おいしいうなぎ屋にれて行ってやろう」

「やったー」

 みんな大喜おおよろこびで、岩法師にうなぎおごってもらう事になった。



 ビジネス街の高層こうそうビル最上階さいじょうかいでは『大阪鬼連合団体おおさかおにれんごうだんたい』の定例会議ていれいかいぎが行われていた。

 議長ぎちょう鬼塚おにずかである。

 今回は、チャッピーも参加さんかしている。

「ではみなさん、定例報告ていれいほうこくおこないます。牛鬼ぎゅうき黒瀬くろせが京都で修行中しゅぎょうちゅうと言うことで、京都の鬼神きしんから送られて来た、アンドロイド鬼のチャッピー君ですが、さっそく『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』のエージュントとDSPを相手に、1人でやりって帰って来ました」

「1人で、そんなにうとは、たいしたモンですなぁ。それで、何人殺したんです?」

 古株ふるかぶの男が聞いた。

「『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』のエージュントには逃げられ、DSPの小娘からは半殺はんごろしのいました」

「何か、微妙びみょう成績せいせきですなぁ」

「お安心下あんしんください。チャッピー君は、半殺はんごろしにされると、さら戦闘力せんとうりょくが上がって復活ふっかつするという、サイア人のようなシステムがいてますので」

「チャッピーそんなシステムいて無いよ」

「本人が、いて無いって言ってますよ」

 若い男にっ込まれた。

 鬼塚はチャッピーと、小声こごえで3分ほど確認かくにんし合うと

「そんなのいて無いそうです」

 と、訂正ていせいした。

「ついて無いんかい!!」

 一斉いっせい野次やじが飛んで来た。

嘘付うそつき! 」

「帰れアホ鬼!」

「うるさいなあ、お前らは。いてたらゆめがあって良いなぁ、って思ったんや」

「思っただけで、会議かいぎの場で言いきったら駄目だめですよ!小学生じゃあるまいし」

 川島にも注意ちゅういされた。

「まあ、それはそれで良いとして。現在げんざい四天王してんのうが1つ空いているのは、みなさん、ご存知ぞんじだと思うのですが」

「また、四天王してんのう問題ですか?」

「もう、四天王してんのう解散かいさんしたのかと思ってましたよ」

過去かこ遺物いぶつですな」

「平成時代のなつかしい思い出ですね」

「あの人は今、って感じかな」

四天王してんのうのメンバーは今頃いまごろ、何してるんでしょうね」

「お前らぼけた事言いやがって。俺と川島と牛鬼ぎゅうき現役げんえきバリバリの四天王してんのうや!しかも、俺と川島は目の前にるやろ!」

「そうでしたっけ?」

「そうなんだよ!」

「それで、四天王してんのうがどうかしたのですか?」

「新しい候補者こうほしゃが見つかったので、紹介しょうかいしよう。牛頭ごず君と馬頭めず君や」

 鬼塚は2人の男を、みんなに紹介しょうかいした。

 大柄おおがらで、いかつい筋肉質きんにくしつの男が牛頭ごずで、細みの優男やさおとこ馬頭めずらしい。

「彼らは、地獄で獄卒ごくそつつとめていた鬼のエリートや、みんなよろしくな」

「よろしくは良いのですが、二人も増えたら、また四天王してんのうが5人になりますけど?」

「あっ、ホンマや」

大阪鬼連合団体おおさかおにれんごうだんたい』の会議は、またしても四天王してんのう問題になやまされるのであった。



 そのころ、火星では。

太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』をふうめている宮殿きゅうでんあやしい人影ひとかげがある。

 泥酔でんすいしたタコ四十郎しじゅうろうである。

 火星が平和になり、つい飲み過ぎてしまったタコ四十郎しじゅうろうは、自分の家と宮殿きゅうでん間違まちがえて入ってしまったのである。

「うぃー、もっと酒がしいでチュー」

 あたりを見まわすと、古臭ふるくさつぼを見つけた。『太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』が寝ているつぼである。

「お酒が入ってないでチュかね〜」

スッポン!

 タコ四十郎しじゅうろうは、つぼふたを開けてしまった。

 つぼからいきおいよくけむりが吹き出す。

「何でチュか、これは?」

 けむりいきおいでタコ四十代郎しじゅうろうは、ひっくり返り、吹き出すけむりの中から人影ひとかげあらわれる。

 ついに『太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』が、この世によみがってしまった。

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