第28話 グッピーちゃんでござる

 大阪でのサミットをえた『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』のゼウス一行いっこうは、難波なんばから電車に乗って関空かんくうまで行こうとしていた途中とちゅうで、リンゼイ老師が殺されたとの情報じょうほうた。

 結局けっきょく、グリゴリオス局長は、ゼウスにメールで連絡れんらくしたのである。

「ゼウス様、どうされますか?」

 同行どうこうしていた戦闘部隊せんとうぶたい隊長たいちょうであるアキレスがたずねた。

 アキレスは背が高く筋肉質きんにくしつ屈強くっきょう身体からだをしており、6名の戦闘部隊せんとうぶたいれている。

「そうじゃな。ワシはギリシャに帰らねばならんので、お前は戦闘部隊せんとうぶたいと大阪に残り、リンゼイ老師を殺したやつ始末しまつするのじゃ」

 面倒めんどうくさそうにゼウスは、アキレスに指示しじあたえる。

承知しょうちいたしました。ゼウス様」

 アキレスは部下をれて、大阪に残る事になった。


 

左近さこん君がもどったって聞いたんだけど」

 大阪DSP[デビルスペシャルポリス]の宿舎しゅくしゃに、桜田刑事がやって来た。

「それが……」

 言葉をにご鬼一きいち

「このお姉さん、だれ?」

 桜田刑事の声を聞いて、左近さこん玄関げんかんまで出て来た。

だれって、君こそだれなの?」

「僕、左近さこん。よろしくね」

ーーこの子が左近さこん君?まさか。どう見ても小学生にしか見えないけどーー

 桜田刑事が戸惑とまどっていると

「実は、この子が左近さこんなんだ」

 言いにくそうに鬼一きいちが説明する。

「京都の芹沢せりざわさんに治療ちりょうしてもらったら、こうなってしまったんだ」

 奥から岩法師いわほうしも出て来た。

拙僧せっそうも初めはおどろいたんだが」

「そっ、そうなんだ。そう言われて見れば、面影おもかげがあるような、なんだか可愛かわいくなったわね。そうだ、狂四郎君達は?」

「狂四郎は虎之助とらのすけと小太郎と三人で冥界めいかいに、うつ……」

 話している途中とちゅうで、鬼一きいちは岩法師に口をふさがれてしまった。

「あいつらは、3人で出かけている」

 狂四郎が冥界めいかいに落ちたと聞いたら、桜田刑事はショックを受けるだろうと思い、岩法師は誤魔化ごまかした。

「そうなの、残念ざんねんね」

「それで、このお姉さんは誰なの?」

「すまん左近さこん紹介しょうかいがまだだったな。この人は大阪府警の刑事で桜田さんだ。我々DSPの担当たんとうだから、おぼえておくんだぞ」

「わかった、岩法師のおじちゃん。こんにちは桜田刑事、僕は左近さこん

 と、元気良げんきよ挨拶あいさつをするい。

「こんにちは左近さこん君。もしかして、今までの記憶きおくも無いの?」

「そうなんだ、DSPの事は何もおぼえていない。昨日ある程度ていどは説明したが、現場に復帰ふっきするのは、とても無理だな」

 こまった顔で鬼一きいちが言った。

「そうねえ」

 残念ざんねんがる桜田刑事。

拙僧せっそう鬼一殿きいちどので、武術の稽古けいこをつけて行こうと話していたところだ」

「こんな小さな子に大丈夫だいじょうぶなの?」

「お姉さん、心配しなくても大丈夫だいじょうぶだよ。僕は日本一の剣士けんしになるんだ」

 自信ありげに、少年の左近さこんは言った。

「そうなの、頑張がんばってね」

「僕、頑張がんばる」

 左近さこんは明るく大きな声で返事をした。



 大阪鬼連合団体では、定例カンファレンスが行われていた。

「今日はひさしぶりに良いニュースがあります」

 議長は、いつも通り鬼塚である。

「どんなニュースですか?」

 中年の男が聞いた。

「我々とDSPが休戦協定きゅうせんきょうていむすんでいる間に、DSPの小娘が『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』の三神さんしんくださいの一人であるブラフマーをってくれてました」

「それは、確かに良いニュースですが。何かDSPに助けてもらっているみたいで、我々の存在そんざいうすくないですか?」

なさけないぞ。俺達は鬼武者おにむしゃだろ!」

「このカス鬼!」

「死ねば良いのに」

 いろんなヤジがとんで来た。

「うるさいなぁ。なに言うてんのや、そんなん言うんやったら、お前らが残りの『国際電器保安協会』のやつらをってこいや!」

 切れ気味ぎみに鬼塚が言うと。

「いや、実は昨日、ジョギング中に足をくじきまして」

「私はイボ悪化あっかして無理です」

「僕は水虫みずむしがあるので、絶対に駄目だめです」

「私はスマホ依存症いぞんしょうなので、そんな無駄むだな時間はありません」

 と、んな、それぞれおどろくほど低レベルな言いわけを始めた。

「お前らは、ホンマに使えんなぁ。まあ、そんな事だろうと思って、日本テクロノジーコーポレーションで戦闘用せんとうようアンドロイドを開発かいはつしたんや。川島、れて来たって」

 鬼塚がそう言うと、川島が一人の女性をれて来た。

 背が高めでスタイルの良い、20才前後の美しい女性である。

みなさん。これが以前、お京都からすけに来ていたアンドロイドのチャッピー君の技術ぎじゅつもとに、が日本テクロノジーコーポレーションが開発した『グッピーちゃん』です」

「私、グッピーちゃん。よろしくね」

 グッピーちゃんが、んなに挨拶あいさつした。

「べっぴんさんですね。どのぐらい強いのですか?」

 中年の男性がい質問しつもんする。

「グッピーちゃんの戦闘力せんとうりょくは、チャッピー君の約70%です」

 川島が説明する。

「下がってますやん!」

「ご安心下あんしんください。戦闘力せんとうりょくが下がった分、再生能力さいせいのうりょくが80%上がっております」

「全体的には、微妙びみょうなところですなぁ」

 カンファレンス参加者達さんかしゃたち反応はんのううすい。

「大丈夫ですよぉ。私は無敵むてき超人ちょうじんですからぁ」

 自信じしんありげにグッピーちゃんがアピールするが、戦闘せんとうかんしては、みんなあまり期待きたいしていない様子きたいである。

「あのぉ、服を着ていないグッピーちゃんも見たいのですが」

 唐突とうとつに若い男が質問して来た。

「何で、そんなモン見せなアカンねん。この助平すけべいが」

 鬼塚は、ウザそうに答える。

「いえ。決して助平すけべいな気持ちでは無く、綺麗きれいなグッピーちゃんを見ていると本能的ほんのうてきはだかが見たいなぁ、と思いまして」

「それを、世間せけんでは助平すけべいやって言うんや」

「いや、議長は誤解ごかいされています。僕は純粋じゅんすいな気持ちで、グッピーちゃんのはだかを見て、一人の男として興奮こうふんしたいだけなんです」

助平すけべいそのままやないかい!!」

 鬼塚がれた。

「では、下着姿したぎすがただけでも見せて下さい」

駄目だめに決まってるやろ、このド助平すけべいが!」

「このド助平すけべいがぁ!」

 グッピーちゃんもれた。

「ほら、グッピーちゃんも助平すけべいって言ってるやろ」

 鬼塚はほこっている。

「まあ、議長。助平すけべい議論ぎろんは、そのへんにしといて、今後の作戦を話し合いましょう」

 川島は、アホな会話を止めさせて会議を進めようとする。

「あっ、そうやった。今後の『国際電器保安協会』との戦い方やけど、グッピーちゃんが、SNSを始めるので見て下さい。以上」

「えっ、それだけですか?」

 おどろいた川島がたずねる。

「そうやで。グッピーちゃんのSNSをんな、チェックするんや」

「そんなんで良いんですか?」

「良いねんで」

んな、私のSNSを見て応援おうえんしてねぇ」

 グッピーちゃんは笑顔で言った。

応援おうえんは、しますけど。それだけで良いんですか?」

 川島は不安ふあんになって来た。

いねん。お前らは、何にも心配せんでいねんで」

 鬼塚の言葉で、川島は余計よけいに不安になるのであった。

 というわけで、大阪鬼連合団体からの指示しじは、グッピーちゃんのSNSをチェックする事になった。

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