第22話 デビルスペシャルポリス VS 阿倍仲麻呂 後編

京八流きょうはちりゅう奥義おうぎを見せてやる」

 と、息巻いきまいて攻撃こうげきする鬼一きいちであるが、阿倍仲麻呂あべのなかまろは次々と大量たいりょう式神しきがみしてるので、ふせぐだけで精一杯せいいっぱいであった。

「このままでは、らちがあかんな」

 安倍も同様どうよう大量たいりょう式神しきがみ相手あいてに、さすがにつかれてている。

拙者せっしゃのピーグルアイで、あいつの弱点じゃくてんを見つけるでござる」

 メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンはふたたびピーグルアイを使つかった。

「これはっ!」

「どうした虎之助とらのすけなにか、わかったのか?」

ねこ式神しきがみが、うじゃうじゃるでござる。あいつらが、大量たいりょう式神しきがみすのを手伝てつだっているのでござるな」

「なるほど。一人ひとりであれほど大量たいりょう式神しきがみせるのは、おかしいとおもっていた」

 と、納得なっとくした安倍であるが、大量たいりょう式神しきがみおそってことにはわりない。

拙者せっしゃ手裏剣しゅりけんで、皆殺みなごろしにするでござる」

ねこまで、かなり距離きょりがあるが出来できるのか?」

たしかに、ちょっととおいでござるな」

 そう思案しあんしていると、突然とつぜん、次々と式神しきがみえて行く。

なにこったのだ」

 く見てみると、ねこ式神しきがみたちが、何者なにものかにつよほのおやされているではないか。

何奴なにやつじゃ!」

 阿倍仲麻呂あべのなかまろさけぶと。

われらは、処刑鬼しょけいおにたいである」

 川島かわしま処刑鬼しょけいおに隊のメンバーが、そろっており、阿久良王あくらおうくちからほのおして、猫達ねこたちはらっている。

おにどもか」

阿倍仲麻呂あべのなかまろんでもらうぞ」

 川島が合図あいずすると、処刑鬼しょけいおにたい一斉いっせいおそいかかった。

「ちっ、邪魔じゃましおってクズどもが!仕方しかたい、今日きょうのところは一旦いったんくか」

 阿倍仲麻呂あべのなかまろちゅうかび、ってく。同時どうじやみ結界けっかいけて、あかるくなってた。

にがさんでござる」

 メイド少女戦士マリリンは魔法セーラー戦士ポピリンに変身すると、空飛ぶホウキにまたがり、阿倍仲麻呂あべのなかまろを追う。

「空まで追って来るとは、ひつこいやつだな」

「じっちゃんの顔にかけて、お仕置しおきするでござる」

ーーじっちゃんの顔にかけて、ってどう言う事だ?ーー

 一瞬いっしゅん阿倍仲麻呂あべのなかまろにスキが出来た。

「この毒饅頭どくまんじゅうを食べるでござる」

 魔法セーラー戦士ポピリンは、阿倍仲麻呂あべのなかまろの口に毒饅頭どくまんじゅうんだ。

「うわっ!こいつ何しやがる!」

 毒饅頭どくまんじゅうを食べさせられた阿倍仲麻呂あべのなかまろは、そのまま地面まで落ちて行く。

 2人の様子を、地上から見ていた安倍や処刑鬼しょけいおに隊が落下地点までって来た。

「うわーん!左近さこんさん!」

 小太郎が倒れている阿倍仲麻呂あべのなかまろを、泣きながらこそうとしている。

「大丈夫でござる。毒の量を少なく調節ちょうせつしたので、まだ死んではござらん」

「本当ですか!良かった」

「でも、もうすぐ死ぬでござる」

「うわーん!左近さこんさん!!」

 小太郎が、また泣き出した。

「どうします、安倍さん?」

 鬼一きいちが聞いた。

「殺すつもりでいたが、こうなったら仕方しかたが無い」

 安倍が気を込めて、阿倍仲麻呂あべのなかまろのみぞおちに掌底しょうていを打つと「ゲホッ!」と、饅頭まんじゅうき出した。

「とりあえず警察病院に緊急きんきゅう搬送はんそうしよう。もしかしたら左近さこんだけでも助かるかもしれん」

 安倍は、スーツのポケットからスマホを取り出しながら言った。


「姉さん、どうしはりました?」

 魔法セーラー戦士ポピリンは横になってぐったりしており、小太郎が心配している。

「朝ごはんの途中とちゅうで出て来たから、お腹がいて動けないでござる」

「大変や!姉さんは空腹くうふくに弱いでっからなあ。何か食べ物はないかなぁ?おや、こんな所に饅頭まんじゅうが。姉さん、この饅頭まんじゅうを食べるんや」

 小太郎は饅頭まんじゅうを、ポピリンの口に押し込もうとした。

バキッ!!

「うへーっ!」

 小太郎はポピリンになぐられて、ぶっ飛んだ。

「これは、拙者せっしゃ毒饅頭どくまんじゅうでござる!またしても、小太郎に毒殺どくさつされかけたでござる」

 ポピリンは、フラフラになりながらも激怒げきどしている。


「あの二人、また何かやってますけど?」

 鬼一きいちは、小太郎とポピリンが気になるようだ。

「あいつらは、しばらくほおっておこう。それよりも、あの鬼ども、どうやら我々と戦う気が無さそうだ」

 と、つぶやいた。

「そう言えば、処刑鬼しょけいおに隊と名乗るやつら、こちらに向かって来ませんね」

「あれっ、一人やって来るぞ」

 川島が、ゆっくり歩いて来る。

「君達に提案ていあんがある」

「何の提案ていあんだ?」

 川島は安倍のそばまで来ると

我々われわれ、大阪鬼連合団体は『国際電器保安協会』を倒すまで、君達と休戦したいのだが、どうだろうか?」

 と、意外いがいにも休戦を持ちかけて来た。

「そういう事か。悪く無い話だが、俺の一存いちぞんでは決められ無い。一度上司と相談したいのだが」

 急な事なので、安倍は即答そくとうけた。

「君は、わかって無いな。上司が了承りょうしょうするわけないだろ、俺も上司には言っていない、京都の鬼神達が休戦などゆるすはずないだろ。『国際電器保安協会』をたおすまで、俺と君の部下だけの休戦だ」

ーー実は休戦の発案はつあん者は、上司の鬼塚なのだが、ここはこういう事にしておこうーー

「なるほど、大阪限定の一時的な休戦か。わかった、良いだろう」

「安倍さん、鬼の言う事を信用して良いんですか?」

 鬼一きいちは心配している。

仕方しかたあるまい。今の我々われわれでは、ブラフマーをたおす事すら難しい、鬼まで相手をする余裕よゆうは無い」

「それに、君の部下の2人は、そこで倒れているぞ」

 川島がゆびさす方向には、ポピリンになぐられて失神している小太郎と、空腹くうふくで倒れているポピリンがいた。

ーー2人は倒れているし、自分も安倍さんも今はかなり疲労ひろうしている。仕方しかたがない、今日のところは和睦わぼくするかーー

 しぶしぶ、鬼一きいちも同意した。



 川島は会社にもどると、今日の出来事できごとを社長である鬼塚に報告した。

「良くやった、これでやっと本業の会社経営に専念せんねん出来るな」

 鬼塚は満足げである。

「DSPの連中は良いとして『国際電器保安協会』の対応は、どうします?」

「そんなん、DSPにまかせとこや」

「そう言うわけには、いかないでしょう」

「でも、俺も忙ししいし。ゴルフや家族と温泉旅行に行かなアカンしぃ」

「そう言えば、私もまえまえから妻にヨーロッパ旅行に連れて行く約束してましたわ」

「そやろ。俺らも、給料分は働いたんやから、少し休養きゅうようしようや」

「そうですね」

 という具合ぐあいに、大阪鬼連合団体は休養きゅうように入った。



 鬼達が呑気のんきに休養の話をしているころ、警察病院では安倍と鬼一きいち深刻しんこくな話をしていた。

左近さこんだけ助ける方法は、あるのですか?」

 安倍と鬼一きいちも、出来る事なら左近さこんの命は助けたい。

「それが出来るのは、芹沢せりざわさんだけだな」

「あの、京都DSP[デビルスペシャルポリス]の芹沢せりざわさんですか!」

 鬼一きいちおどろいた。

 京都DSPには、新選組しんせんぐみの初代局長をつとめた芹沢鴨せりざわかもがいる。

 しかし、芹沢鴨せりざわかもの性格は凶暴・凶悪であり、あまり関わりたく無い人物である。

「京都に居る兄の話では、芹沢せりざわさんが治癒ちゆやおはらいの術の達人らしい」

「では、左近さこんを京都で治療ちりょうするのですか?」

「それしか無いだろう。わざわざ芹沢せりざわさんが大阪まで来る事など考えられん」

「それもそうですね」

 結局けっきょく左近さこんは京都DSPで治療ちりょうを受ける事となる。



 大阪市内の高級ホテルの一室いっしつでは、リンゼイ老師とアーナブ、マニッシュの3名が完全復活していた。

創造主かみさからうとどうなるか思い知らせてやるわ」

「あの小娘だけは、絶対にゆるせません!必ず殺します」

「ライアンとマーゴットにも連絡して、一気にDSPを殲滅せんめつしましょう」

 3人は、DSPへの復讐ふくしゅうに燃えていた。

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