第25話 決着でござる

 前回から引き続いて、岩法師いわほうしと狂四郎は、ライアンとマーゴットと戦っていた。

岩法師いわほうし先生。こいつら何かおかしくないですか?」

 ライアン達の戦い方に、狂四郎は疑問ぎもんを感じた。

「確かに。まった殺気さっきが感じられん」

 岩法師もおなよう違和感いわかんを持っていたようだ。

 どうやら、ライアンとマーゴットは、本気で戦っていないようである。

ーーそろそろ、俺達が手をいている事がバレたかな?だが、リンゼイ老師の個人的な動機どうきで俺達まで本気で殺し合う義理ぎりは無いからなーー

 ライアンとマーゴットはリンゼイ老師への対面上たいめんじょう、戦っているフリをしていたのであった。



「死ねジジイ!」

 毒入どくいりクロワッサンを持って、チアガール戦士ピチョリンはブラフマーに向かって行く。

「お前ごときに創造主かみである、ワシにきず1つ付ける事は出来できんわ」

「ごたくは良いから、このクロワッサンを食べるでござる」

 ピチョリンは、ブラフマーにクロワッサンを食べさせようとする。

「どうせ、また毒入どくいりじゃろ。くらえ『悪鬼滅殺波あっきめっさつは』」

 ブラフマーは、口から多量の浄化じょうかエネルギーを出した。

「ビチョー」

 『悪鬼滅殺波あっきめっさつは』を、まともに受けたピチョリンは、っ飛んで道路沿どうろぞいいの喫茶店きっさてんっ込んでいく。

「おや、姉さん。今日は良く会いますね」

 突っ込んだ先の喫茶店きっさてんでは、小太郎が相変あいかわらずコーヒーを飲みながら、くつろいでいる。

「あのジジイ。切りきざんで南港なんこうの魚のえさのしてやるでござる」

 チアガール戦士ピチョリンは立ち上がると、すぐに走りって行った。

「えらい、ぶっそうでんなぁ。おばちゃんコーヒーもう一杯いっぱいおくれ」

 喫茶店きっさてんのウエイトレスが、まだ20代後半なのに、おばちゃんわばりされて不機嫌ふきげんそうにコーヒーのおかわりを持って来た。

「ここのコーヒーは、美味うまいでんなぁ。このゆで玉子は有馬ありま温泉おんせんで作ったんでっか?」

「ウチのなべで作ったのよ」

ウエイトレスは、うざそうに答える。

「おばちゃん、良く見ると可愛かわいい顔してんなぁ。今度、俺とデートせえへんか?綺麗きれい夜景やけいが見える心霊しんれいスポット知ってんねんけど」

「そんな、不気味ぶきみなとこ行かないわよ」

 小太郎が喫茶店きっさてんのウエイトレスを口説くどいているころ、チアガール戦士ピチョリンはブラフマーと死闘しとうを続けていた。

「もう、いい加減かげんあきらめろ。創造主かみであるワシには勝てん」

 ブラフマーは、両手から神気しんきはなつ。

「ビチョー」

 またしても、チアガール戦士ピチョリンは道路沿どうろぞいいの喫茶店きっさてんまでっ飛ばされた。

「おばちゃん、一緒いっしょ通天閣つうてんかくのぼれへんか?うわさではビリケンさんがるらしいで」

 喫茶店きっさてんでは、まだ、しつこく小太郎がウエイトレスを口説くどいていた。

「小太郎!こっちに来るでござる」

 チアガール戦士ピチョリンは小太郎のかみつかみ、小瓶こびんに入っている液体のどくを髪の毛にかけた。

「うわっ!何するんや姉さん」

 無理むりやり店の外に引っ張り出して、ブラフマー目掛めがけて小太郎を高速で投げつけた。

毒入どくいり小太郎を、らうでござる!」

ガチーン!!

 ブラフマーの顔面がんめんに、小太郎が頭から直撃ちょくげきした。

「ぐわっ。なんじゃこりゃ!」

 ブラフマーは小太郎の髪にかけていたどくが、口に入ってしまって苦しみ出した。

「これもうでござる」

 ピチョリンは、無理やり毒入どくいりクロワッサンをブラフマーの口にっ込む。

「やめろ小娘っ」

秘技ひぎ三枚おろし!」

 ズバッ!!

 さらに、ブラフマーはピチョリンの手刀しょとうで三枚におろされた。が、3つに別れたブラフマーは、それぞれが再生して3体のブラフマーへと変化して復活した。

おろか者が、こんなわざはワシにはかぬわ」

 3人のブラフマーは、同時に攻撃こうげき仕掛しかけて来る。

 攻撃をけながら、チアガール戦士ピチョリンは

「ジジイが3人になるなら、拙者せっしゃ分身ぶんしんじゅつで3人になるでござる」

 と、分身ぶんしんじゅつを使って、自分を3人に増やした。

 しかし、何故なぜえた2人はプレアデス星人であった。

「ちよっと待て!何で分身ぶんしんじゅつでプレアデス星人が出て来るんだ!普通ふつうは、お前が3人になるんだろ?」

 おどろいたブラフマーは、怒って抗議こうぎする。

いぼれの戯言たわごとかぬでござる。問答無用もんどうむよう。プレアデス星人、ジジイを殺すでござる」

 2人のプレアデス星人が、殺人ビームをブラフマーに向けてはなつ。

「クフッ」

 3体のブラフマーのうち、2体が殺人ビームの直撃を受けて消え去り本体1人となった。

「これで残るは、おぬしだけでござる。プレアデス星人、とどめをすでござる」

「おのれ小娘が」

 ブラフマーはすさまじい神気しんきはなったが、2体のプレアデス星人も殺人ビームをはなつ。

 互角ごかく威力いりょくであった。ブラフマーとプレアデス星人の中間地点でおたがいのエネルギーがぶつかり合い、力が相殺されているので、双方そうほうとも攻撃こうげきを続けたまま動く事が出来ない。

ーー今でござるーー

火遁かとんの術」

 そのスキを付いて、ピチョリンは右手から炎を出しブラフマーに攻撃する。

 プレアデス星人の殺人ビームに集中して、無防備むぼうびになっていたブラフマーはいきおいよく燃え出した。

「ぐわっ。まさか、このワシがこんな小娘に」

 炎が全身にまわり、苦しむブラフマー。断末魔だんまつまともに、ついにブラフマーは燃えきた。

「やっと、ジジイをブッ殺せたでござる」

 ピチョリンはプレアデス星人のそばに行くと

「ご

協力きょうりょくありがとうでござる。おれいに、これをあげるでござる」

 と、2人のプレアデス星人にかきピーを2袋渡した。

「ピッピッピッピッ、ピーナッツ」

 と、歌いながらプレアデス星人は、宇宙に飛び去って行く。

「サヨナラでござる。クフッ」

 プレアデス星人に手をっていたピチョリンは、はげしい戦いの疲労ひろうのため、そのままパタリと倒れ込んだ。



「ちよっと、ライアン。リンゼイ老師がられたわよ」

 岩法師と戦いながら、マーゴットがライアンにつたえる。

「マジかよ!まさかリンゼイ老師が負けるとはな。そうなると、ここにる理由は無い。マーゴット、退散たいさんするぞ」

 ライアンはマーゴットを連れて、急いでって行った。

「何じゃ、あいつらは?」

 不思議ふしぎそうに岩法師がつぶやいた。

「どうやら、やつらのボスがAカップ娘にたおされたようですね」

「なるほど、そう言う事か」

 


 ピチョリンがたおれている近くの地中から、2センチほどの小さなブラフマーがい出てきた。 

「ワシは、まだ死んでおらん。今はエネルギー不足ぶそくでこんなにちじんでしまったが、復活して必ずや小娘を殺してやる」

「ううっ、何でか知らんが頭がいたいし、何が起こったのか記憶きおくがない」

 失神しっしんしていた小太郎が意識いしきを取りもどすと、目の前に小さな生き物がいた、ブラフマーである。

「何やこれは、食えるんかな?」

 小太郎は、その生き物をつまんで口に入れると、ポリポリと食べてしまった。

「意外に歯ごたえがあって美味いな。食ったら、何故なぜか元気が出て来たぞ」

 ブラフマーは小太郎に消化しょうか吸収きゅうしゅうされ、この世から完全に消滅しょうめつした。



「何か、姉さんが軽く感じるわ」

 小太郎がたおれているピチョリンを背負せおって、岩法師と狂四郎と4人で宿舎へ帰るところである。

「そいつは、もともと軽いだろ」

 狂四郎はめている。

「いや、ちゃうねん。何かパワーが付いた気がするねん」

「むにゃむにゃ、拙者せっしゃは42キロでござる」

 ピチョリンの寝言ねごとが聞こえた。

「やっぱり、軽いじゃねえか」

「それが、3キロぐらいに感じるんや」

「そんなわけねえだろ」

「お前ら、虎之助とらのすけは敵のボスと戦って怪我けがもしてるんだから、静かに運んでやれ」

 岩法師たち4人は、なんとか『国際電器保安協会』から勝利して、宿舎へ帰って行くのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る