第7話 十八歳処女のハーフエルフはおいくら?

 ――バルデュックの街にて翌朝。


 奴隷商人ブッチギーネから宿屋に迎えが来た。

 頭に耳の生えた子供だ。尻尾もある。

 ネコ系の獣人っぽいな。


 後をついて歩くと、奴隷商人のブッチギーネの店についた。

 なかなか立派な店構えだ。


 それに店と言うよりは、控えめに言って施設、悪く言えば刑務所だね。

 ブッチギーネの店の左右は、壁に囲まれていて、中に建物がいくつか見える。

 外からは壁の中の広さは、うかがい知れない。


 入り口で奴隷商人のブッチギーネが出迎えてくれた。


「ミネヤマ様。ようこそ! いらっしゃいませ!」


「ブッチギーネさん、どうも。迎えやら宿屋の手配やらありがとうございます。お陰で快適に過ごせました」


「それは良うございました」


 俺が外国の貴族と言う設定だからか、ビップ扱いだ。

 ジャージ、スニーカー、ポロシャツにリュックと言う日本庶民スタイルだが、お忍びと言う設定で押し通せば問題ないのだ。


「早速ご案内いたします」


 ブッチギーネが先を歩いて施設の中を案内してくれた。

 ざっと見た感じ、合宿所付きの訓練所って印象だ。


 広いグランドがあって、そこかしこで戦闘訓練が行われている。

 剣と盾を持った戦闘訓練、素手の格闘訓練、弓の訓練、魔法の訓練。


「凄いですね……。みんな強そうだ」


「戦闘力のある奴隷は重宝されますから、当店では戦闘訓練に力を入れております」


「なるほど」


 屋外のベンチに座って奴隷たちの戦闘訓練を眺める。

 男女合わせて五十人はいるかな?

 これどうやって選べば良いのだろう?


「ミネヤマ様は、護衛が出来る性奴隷がご希望と言う事でよろしいでしょうか?」


 ブッチギーネがズバリと聞いてきた。

 ちょっと恥ずかしいが、ここでハッキリ言わないと話が進まない。

 俺は照れる気持ちとはやる気持ちを押し殺して返事をする。


「そうですね。家があるのが魔の森の中ですから、ある程度戦闘力があって……その……まあ……見た目もねえ……」


「もちろんです。性奴隷でございますので、容姿も重要な判断材料です」


「ですよねえ!」


 ブッチギーネは真面目くさって答える。

 まあ、彼にとってはこれが仕事だからな。

 俺は下心満載でドキドキな訳だが、彼はドライにビジネスライクだ。


「それならオススメは、エルフか獣人ですね」


 エルフか獣人……いきなり異世界感を満喫できそうなオファーだ。


「エルフか獣人ですか……」


「はい。ミネヤマ様は人族でいらっしゃいますよね? 異人種間では子供が出来づらいのですよ」


 子供が出来づらい……それはつまり……生……。

 おっと!

 何か座りづらくなって来た!

 落ち着け俺!


 色々とやましい事を考えながら平静を装い返事をする。


「へえ……」


「ですので、人族が性奴隷を持つなら、まず人族以外をおすすめします。そしてエルフは容姿に優れ、弓や魔法の才のある者が多いです。例えば右側の彼女です」


 ブッチギーネが魔法の訓練場を指さした。

 広いスペースに木製の的が設置されている。

 その的に向かって二人の魔法使いが、魔法攻撃をしている。


 右側……おおっ! 確かに美人だ!

 スラッとした体に、白い肌、光り輝く金髪、整った顔立ち。


「彼女は今年二十五歳になったエルフです。エルフの寿命は約三百年、あの美しい容姿を長い期間維持できますので、ミネヤマ様がお年を召すまでお楽しみいただけますよ」


「うーん、なるほど!」


 素晴らしい!

 でも、美人で魔法が使えて長寿で……って言ったら、値段もそれなりだよね?


「それでエルフの彼女はおいくらでしょうか?」


「エルフの奴隷は希少価値がございますので、2000万ゴルドでございます。当店で最も高額な奴隷でございます」


「ほう……」


 2000万ゴルドねえ。

 奴隷なんて買ったことがないから、高いのか安いのか良く分からない。

 手持の金が500万ゴルド弱だから、買えないけど。


「獣人なら彼女あたりはいかがでしょう?」


 今度は戦闘訓練場を指さした。

 剣を持ったネコミミと尻尾のある女の子が、素早く動いている。

 小柄で愛嬌のある顔立ちをしているな。


「彼女はコドコド族と言うネコ系の獣人です。今年十五歳になったばかりです。獣人は身体能力が高いので、戦闘に向いています。寿命は人族と変わりません」


「なるほど……。彼女はいくらですか?」


「400万ゴルドでございます」


「ほう」


 獣人ねえ。

 尻尾とケモノ耳以外は、人間と変わらない見た目だな。


 身体能力が高いって事はアスリートみたいに体も締まっているのかな?

 アリだな。

 それもアリだ。


「その……ここにいる女の子は、みんな性奴隷兼戦闘奴隷なのでしょうか?」


「奴隷にその辺りの区別はございません。奴隷は主人の所有物でございますので、お買い上げになった後はお好きになさいませ」


 な、なるほどね。

 奴隷の体も主人の物ですか。

 なかなかの鬼畜仕様。


 ブッチギーネが次の奴隷、次の奴隷と紹介してくれる。

 人族の奴隷も紹介してもらった。


 女奴隷の値段は200万ゴルドから400万ゴルドくらいが相場みたいだ。

 容姿が良ければ値段が高くなるらしい。


 2000万ゴルドの魔法を使えるエルフだけは別格と言う事か。


 ちなみに容姿はかなりバラツキがある。

 最初の2000万エルフがTVや映画に出て来る女優クラスとすれば、200万の奴隷はごく普通の容姿だ。


 じっくりと上から下まで吟味していると訓練場に新しく一人の女の子が入って来た。


 おっ! 可愛い!


 サラリとした長い髪が印象的なスラッとした女の子だ。

 髪の色は明るい茶髪で、陽の光を浴びてキラキラ輝いている。

 彼女は弓の訓練を始めた。


 上手いな!

 的へ確実に当てている。


 顔立ちが日本人に近くて親しみやすい。

 細身だけれど、む、胸も大きい!

 素晴らしい!


 俺はジッと彼女を見ているのだが、奴隷商人のブッチギーネは薦めて来ない。

 俺の方から質問してみる事にした。


「彼女は?」


「彼女は……十八歳のハーフエルフです……」


「ハーフエルフ?」


「エルフと人族の子供です」


 へえ。

 そう言えば、最初の2000万円エルフは耳が細長い。

 けれどハーフエルフの彼女の耳は、人族と同じ耳だ。

 耳は人族の特徴が出ているのかな?


「ああ、なるほど。彼女は、美人だし、弓の腕前もなかなかですよね?」


 ブッチギーネはハーフエルフの彼女についてあまり話したがらないが、俺がしつこく聞くと話し始めた。


「彼女の弓の腕前はピカイチですね。剣もかなり使えるので、軽戦士でも行けます。戦闘力はかなり高いです。ただし、魔力が少ないので魔法は期待できません」


「魔法が使えなくても護衛としては十分ですよね?」


「それがですね……彼女は口がきけないのですよ。言葉が喋れないのです」


「えっ!? まったく喋れないのですか?」


「はい。声が全く出ません」


「あー」


 なるほど。それでハーフエルフの彼女を薦めて来なかったのか。


「それは怪我とか、病気ですか?」


「調べましたが、体に異常はないです。しかし、声がまったく出ません」


 怪我や病気じゃないのか……。

 何かショックで声が出なくなったとか?


「ご覧の通り見た目も良いですし、弓や剣の腕前も良いのです。ハーフエルフですので、人族より寿命も長く、容姿が美しい期間も長い。本来なら高く売れるのですが……」


「声が出ないとダメな物ですか?」


「そうでございますね。まず戦闘の際は仲間とコミュニケーションが取りづらいと言うのがあります。特に弓士ですと後ろから弓を射るので、『伏せろ!』とか仲間に声を掛けられないと戦闘が成り立ちません」


 それはそうか。

 とっさに声掛けが出来ないと言うのは、戦闘では危険そうだ。

 命に係わる事だからな。


「それで敬遠されると?」


「ええ。そして性奴隷としても、声が出ませんと楽しみが減りますので」


 あー。

 ヒイヒイ言わせる事が出来ないと。

 淫語を言わせるとかも無理だよな。


 けれど、それにしても……。


 彼女の見た目はストライクだな。

 当面奴隷は一人で良いと思っているし、剣と弓が使えるなら戦闘能力も十分じゃないか?


 夜の方は……。

 コスプレさせるとか、色々と工夫すれば声が出なくても楽しめそうだが。

 四十歳独身貴族は、楽しみの選択肢が多いのだ。


「彼女はいくらですか?」


「えっ!? 彼女ですか? 声が出ませんがよろしいので?」


「見た目が好みです。特に顔立ちが好きです」


「ああ、ミネヤマ様と雰囲気が似ていますね。この辺りでは珍しい顔立ちです」


「その……子供の方は……ハーフエルフの場合どうなんでしょうね?」


「人族と比べると子供が出来づらいですが、エルフ程ではありません」


 ふむ……なら潔く最初は生で……。


 俺が悶々と妄想に耽る間、ブッチギーネは頭の中でそろばんを弾いたようだ。


「そうでございますね。ミネヤマ様がお気に召したのなら、彼女も良いかもしれません。十八歳処女のハーフエルフ、弓と剣が使え――」


「待て! 待て! 処女って! どうやって確認したの?」


「魔法でございます」


 はー、びっくりした。

 そんな事を確認出来る魔法があるのね。


「弓と剣が使え戦闘をこなせる奴隷です。文字の読み書きが出来ます。お値段は150万ゴルドでいかがでしょう?」


 おっ! 相場より安いな!

 もうちょい値切ってみるか?


「声が出ないと言っていた割には、高いのでは?」


「その分、見た目が良いですし。私どもも彼女を手元に置いて食事を与え、教育を与えておるますので、その投資を回収させていただきたいのです」


 むっ……そうなのか……。

 ブッチギーネの顔を見ると値引いてくれそうにない感じだ。


 まあ、あんまり買い叩いても感じ悪いだろうし。

 この世界に知り合いはいないから、ブッチギーネと関係をこじらせるのもなんだ。


「わかりました。150万ゴルドで良いです。彼女が使っている弓、剣や革鎧を付けて貰えますか?」


「よろしいでしょう。彼女の装備品をサービスいたしましょう」


 よし!

 交渉成立!


 これで細身巨乳なハーフエルフは俺のモノだ!

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