第17話 王様への献上品
繊維商人三人は、取引が終わるとジャージ生地を抱えて商人ギルドを出て行った。
次に宝石商人のイシルダさんが声を掛けて来る。
「ミネヤマ様。続いて宝石のお取引をお願いいたします」
億越えの衝撃から目を覚まして、なんとか自分を再起動させる。
顔がニヤつかないように、厳めしい表情を作ろう。
「うむ、よかろう。サラ、宝石の入った箱をお渡ししろ」
「はい。ご主人様」
外国の貴族っぽい態度を装いサラに指示を出す。
俺は外国の貴族様と言う設定で、サラはお付きの奴隷だ。
こういう商談の場面では、上手に人を使わないとな。
家でもサラを使っているぞ。
性奴隷としてだが。
あんなとこや、こんなとこ、サラのあちこちを使っているのだ。
サラが大きなリュックのサイドポケットから、パワーストーンが入った小さな紙箱を取り出しイシルダさんに渡す。
宝石商人イシルダさんは、サラから渡された紙箱を開いて満面の笑顔になった。
「おお! 今回も品質の良さそうな宝石ですな!」
「ええ、前回の取引と同程度の品を用意しました。それ、お預けしますよ。また六日後に来るので、代金はその時にお願いします」
「そうしていただけると助かります!」
今日、持って来たパワーストーンは、前回の取引と同じ透明度の高いパワーストーン十種類を百個だ。
イシルダさんたちは、パワーストーンに一つずつ魔力を通し、属性付与が可能かチェック作業をするだろう。
前回は一日かかったな。
チェック作業に付き合わされるのは、正直面倒だ。
今回はパワーストーンを預けてしまって、イシルダさんのお店でチェック作業をしてもらう。
ぶっちゃけチェック作業にお付き合いするより、サラとイチャついていたい。
四十歳独身貴族は、まだまだお盛んなのだよ。
ヒマさえあれば、サラのお尻を撫でるのさ。
宝石商人イシルダは、パワーストーンが入った箱を大事そうに抱えて出て行った。
さて、後は商人ギルド長サンマルチノさんとの話しだ。
応接ソファーに向かい合って座る。
「サンマルチノさん。『お友達』への贈り物の件ですが……、こちらの品でどうでしょう?」
サンマルチノさん経由で、この国の王様にプレゼントを贈る。
まあ、ワイロみたいなもんだよね。
お友達、つまり、『王様にお友達になって貰う』という意味だが、サンマルチノさんに通じたようだ。
サラに目配せすると、サラはリュックからプレゼント用の小さな赤いリボンの付いた細長い紙箱を取り出し、サンマルチノさんに手渡す。
「そちらが『お友達』への贈り物です」
「拝見いたします。おお! これは見事な……!」
サンマルチノさんは、プレゼント用の紙箱からパワーストーンのネックレスを取り出した。
透明の丸い玉が連なるクリスタルのネックレスだ。
王様への贈り物だから、パワーストーンそのままと言うのも芸がない。
そこでネックレスにしてみた。
パワーストーンは、無色透明のクリスタルをチョイス。
この世界では透明度の高いパワーストーンが喜ばれるみたいだからね。
「いや、これは素晴らしい一品です! ミネヤマ様。随分奮発されましたな!」
「まあ、王様への贈り物ですから」
商人ギルド長サンマルチノさんの反応を見るに、俺の持って来たクリスタルのネックレスは、この世界では相当価値が高いようだ。
まあ、でもねえ。
日本で買った時は、クリスタルは一粒百円なので、全部で一万円もしなかったよ。
サンマルチノさんは、恭しくクリスタルのネックレスを箱に戻した。
「国王陛下への献上品を確かにお預かりいたしました」
「よろしくお願いします。それとですね……。サラ! 残りの宝石を!」
「はい。ご主人様」
サラが紙箱を応接テーブルに載せる。
俺は紙箱を開いて中を見せ、サンマルチノさんの方へ押しやった。
「やっ!? これは!?」
箱の中身は、透明度の高いパワーストーン各種300個だ。
300個とは言っても、全部で5万円もしなかった。
異世界では価値の高いパワーストーンでも、日本ならそこそこの価格なのだ。
「300個あります。これを必要経費に使ってください」
「と、おっしゃいますと?」
「王様にたどり着くまでに、何人か有力者を経由するのでしょう?」
「それはもちろん」
サンマルチノさんが大きな街の商人ギルド長とは言っても、王様に直で面会は難しいだろう。
俺が献上品を王様にと言っても、すんなりとは届かない。
王宮勤めの貴族や官吏に話を付ける必要があると思う。
だから……。
「この宝石はバラまいて下さい。サンマルチノさんのお知り合いの有力貴族であるとか、王宮で王様の側に仕えている方とか」
「なるほど! 承知いたしました。それでは、『外国貴族ミネヤマ様から友好の証』と言う事で、私の知っている有力者にプレゼントいたします」
うむ。
宮廷工作活動をしっかりお願いしますよ!
「頼みます。余った分は、サンマルチノさんが受け取って下さい」
「これは! 過分なお気遣いありがとうございます!」
「いえいえ。私の為に動いてもらうのですから当然の報酬ですよ」
これで良し!
魔の森の中にある俺の部屋の周りは、俺の領地になるな!
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