第21話 街道整備計画
「こちらの地図をご覧ください」
サンマルチノさんは応接テーブルの上に、大きめの紙を広げた。
この街近辺の地図……と言うよりは手書きの略図だな。
それでも大体の位置関係はわかるので、この世界の事をまだ良く分からない俺にはありがたい。
「こちらが王都、ここが我々のいるバルデュックの街。魔の森があり、森の中にミネヤマ様のご領地がございます。それとこちらは外国ですね」
「ふんふん」
以前、サンマルチノさんに教えてもらったのだが、この国はロレイン王国と言うそうだ。
ロレイン王国は、この異世界では中規模国で、王と沢山の貴族が治めている。
大小いくつかの魔の森に接し、山岳地帯からは鉄鉱石、銅鉱石、銀が産出する。
銀や鉱石が取れるので、わりと豊かな国らしい。
今見ている地図の右、東側に王都がある。
そして地図の中央に俺たちがいるバルデュックの街がある。
バルデュックの街の左上、北西側に大きな魔の森が広がり、その外縁部に俺の領地『ミネヤマ領』がポツンとある。
ミネヤマ領 ― バルデュックの街 ― 王都
と言う位置関係だ。
魔の森の外縁部南東にポツンと離れて俺の領地があると言えばわかりやすいかな。
地図の左側、西の方は外国だそうだ。
どうやら俺の領地は国境沿いでもあるようだ。
「それで私ども商人の希望といたしましては、バルデュックの街からミネヤマ様のご領地まで街道を引いていただきたいのです」
「なるほど……」
それは、まあ、わかる。
今は人一人が通れる獣道があるだけだからな。
俺の所にお使いを出すにしても時間がかかる。
街道が出来れば、歩きでも日帰りが可能になるだろう。
続いて冒険者ギルド副ギルド長のラモンさんが立ち上がって発言した。
低音と言うよりドスの効いた声が部屋に響き渡る。
「冒険者ギルドといたしましても、街道を整備していただけるとありがたいです。ミネヤマ様のご領地にはダンジョンの入り口がございます。既にダンジョンの攻略は始まっておりまして、冒険者がダンジョン探索を行っております」
知っている。
俺が会社に行っている間に、水をもらいに来る冒険者が結構いるらしい。
「ウチのサラから聞いている。水を無料で分けるようにしている」
「ご協力に感謝しています。改めてお礼を申し上げます。それでですね。街道が整備されれば、もっとダンジョンに潜る冒険者が増えると思います。そうすれば冒険者ギルドの支部がミネヤマ領に開設されます」
ほうほう。
冒険者ギルドのミネヤマ領支部ですか!
なかなか良い話しな気がするぞ。
「ラモンさん。冒険者ギルドの支部が出来ると領主にメリットはありますか?」
「ございます。売り上げの五分を税として領主に納めます」
売り上げの五分、5%か!
利益じゃなくて、売り上げと言うのが良いな。
例えば、冒険者ギルドが100万ゴルド売り上げれば、俺が受け取る税は5万ゴルドになる。
俺が寝ていても冒険者たちがせっせと稼いで税を納めてくれる訳だ。
「じゃあ、今は俺の領地にあるダンジョンから発生した売り上げは?」
「バルデュックの街の冒険者ギルドの売り上げになっておりますので、バルデュックの領主に税を納めております」
「俺には一銭の得も無い訳か……」
水をタダで分けてやっているのだが、丸損かよ。
話しを商人ギルド長のサンマルチノさんが引き継ぐ。
「ミネヤマ様。とにかくご領地に人が増えませんと税収も発生いたしません。その為には、街道整備が必要でございましょう」
「うん、そうですね。早く街道を整備して、人の行き来を増やしたいですね。それで、どうすれば良いでしょう?」
「商人ギルドにお任せください! 街道整備の人員や職人を手配いたします!」
「なるほど……。予算はどれ位かかりますか?」
「そうでございますね……。およそ一億ゴルドくらいかと」
一億ゴルドか!
結構な額だな!
けれども……どうだろう?
このバルデュックの街から、俺の家まで歩けば一日かかる。
電動スクーターの距離メーターを見た時は、確か25kmだったな。
25kmの道路建設が一億ゴルド。
魔の森を切り開いて工事をする訳だよね。
そう考えると安いか?
幸い手元には使わずにクローゼットに放り込んである金貨が、冗談抜きでうなるほどある。
ここで街道整備に投資しておくのも悪くない。
よし!
やろう!
「一億ゴルドですね。やりましょう! 手配を進めて下さい!」
「おおっ! ありがとうございます!」
諸々打ち合わせを済まして、魔の森の中の俺の家に帰宅した。
奴隷商人のブッチギーネが、『二人目の性奴隷をぜひ!』と、しつこくプッシュして来たが『サラで満足している』と丁重に断った。
多頭飼いは難易度が高いと言うからな。
エナジー注入は、サラに集中するのだ。
ブッチギーネには、領地経営に役立ちそうな奴隷がいれば買うと伝えておいた。
家の前に立って自分の領地を見渡す。
最初は俺の家の周りだけ空き地になっていたが、今では野球場くらいの空き地が広がっている。
うーん、なんか街作りゲームみたいだな。
サラが腕を組んで来た。
「ご主人様、おめでとうございます」
「ありがとう。サラ。じゃあ、お祝いしてくれるかい?」
サラを抱き寄せて唇を重ねた。
時間無制限一本勝負だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます