第14話 ガータベルトは感謝の印

 ごちそうさまでした!

 柔らかかった。

 弾力があった。

 さっすが十八才!


 サラと初めての共同作業。

 主人と奴隷のイニシエーション。

 つまり、肉体言語での異世界交流を終えたのであった。

 俺はベッドでサラを腕に抱き、時計に目をやる。


 時間は夕方の五時だ。

 買い物に行きたいな。

 サラの着替えを買って来なくちゃ。


「サラ。買い物に行ってくる。ここで待っていてくれるか?」


「あの……一緒に連れて行って下さい……」


 サラは上目づかいで腕を絡ませながら甘えた声を出してくる。


 ぐううう。

 この! この! この!

 可愛いじゃありませんか!


「わかった! じゃあ、一緒に行こう。ただし……、言葉が通じないかもしれないよ……」


 サラはキョトンとした顔をする。

 俺の言わんとする事が通じていない。


 俺は常に日本語を話している。

 サラは異世界の言葉を話している。

 普通なら俺とサラの間で、意思の疎通は不可能だ。


 だが、念話とかテレパシーのような力が働いて、意思の疎通が可能になっているのだ。

 話している時に口元を注意して見れば、相手が話している言葉と口の動きがずれているのがわかる。


 では、その力が日本でも働くのか?

 俺はノーだと思う。

 その証拠にさっきピザ屋の配達のお兄さんと話した時に、後ろで見ていたサラは『話している言葉がわからなかった』と言っていた。


 ピザ屋のお兄さんは、マンションの廊下、つまり日本側に立っていたのだ。

 それで念話だかテレパシーが働かなくて、サラに言葉が通じなかったのだと思う。


 だから、日本にサラを連れて行って良いかどうか俺は迷った。


「えっ? 買い物って、バルデュックの街に戻るのでは?」


「いや、俺の国、日本へ行く。えーと……この部屋自体が魔道具になっていて、俺の国へ移動出来る! この事は内緒だぞ」


 細かな説明が面倒なので、またも魔道具で押し切る。


「凄いです! ニホン……ご主人様の国……! 行ってみたいです!」


「ああ、うん。それで、問題はだ。日本は違う言葉を話している。さっき、俺とピザを持って来た人との話しがわからなかったろう?」


 俺はサラに言葉が通じる理由――おそらく念話やテレパシーのような物で意思疎通をしている事を丁寧に説明する。

 日本へ行けば俺とサラも会話が成立しなくなる事も。

 ピザ配達のお兄さんの言葉をサラが分からなかった事で理解をしてくれた。


 サラは俺の話しを聞いてかなり驚いていた。

 サラのいた世界では、どこの国の人とでも、種族が違っても言葉が通じるそうだ。

 違う言葉を話す、意思疎通が出来ないと言うのは、サラにとって想定外らしい。


 恐らく、念話やテレパシー的な力が、異世界全域で働くのだろうね。

 いくら異世界でも、言語が一つと言うのは、ちょっと考えづらい。異世界の人も、それぞれ違う言語を話しているのだと思う。

 例えば、バルデュック語とか、獣人語とかだ。

 しかし、日常生活では念話やテレパシー的な力が働くので、意思疎通が成立して、違う言語を話している実感が無いのだろう。


 説明をしても、サラは日本に行きたがった。


「それでも一緒に行きたいです。私は三年間声が出ませんでしたから、話せなくても大丈夫です」


 まあ、そこまで言うなら連れて行こう。

 それにちょっとしたデートみたいで楽しいし。


「わかった。俺の言葉も通じなくなると思うから、あらかじめ行くところを教えておくぞ」


「わかりました」


「最初に行くのは服屋だ。これからサラの服を買う」


「私の服ですか? 服なら買って頂きましたが?」


「いや、あれじゃ足りない。服は日本の方が安くて品質が良い。下着も七日分くらい買っておこう」


「私は奴隷ですので、そのような贅沢は……」


 サラは恐縮しきっている。

 うーん、俺には、異世界での主人と奴隷の関係性がイマイチわからないな……。


 ひょっとしたら、奴隷の服はずっと同じ服なのか?

 着たきり雀なのかもしれない。


 俺は議論を打ち切って、先に話を進める事にした。


「サラには、綺麗にしていて欲しい。俺に奉仕する性奴隷だからな。主人の俺が性奴隷のサラに着飾る服を与えるのは、当然なのだ。それから次は……」


 サラが顔を真っ赤にして、沈黙した。

 俺は一通り立ち寄る店や買い物予定を伝えて、出掛ける事にした。


 サラには俺のジャージを着せ、サンダル履きで連れ出した。

 首にはタオルを巻いて貰って、奴隷の首輪が見えないようにした。


 異世界はわりと過ごしやすい気温だったが、六月の東京は早くも蒸し暑い。


 買取ショップで大金貨を一気に十枚売却して得た現金150万円を持って、駅前のショッピングセンターに突撃した。

 サラは大興奮で、さっきから異世界の言葉で何か夢中でしゃべっている。

 やはり日本では、サラの言葉がわからない。

 翻訳してくれる力が働かないようだ。


 ショッピングセンター内の量販店『自由印』に入る。

 ここは値段が手ごろなので、普段着を買って欲しい。


 身振り手振りで服を選ぶようにサラに伝えるが、サラは首を振っている。

 ダメだな。また、奴隷だからと遠慮している。


 こうなりゃ仕方ない。

 店のお姉さんに選んでもらおう。


「あの~、すいません」


「はい。いらっしゃいませ」


「彼女に服を上下三点ほど選んでもらえますか? 彼女外国からの留学生で、日本語ダメなんですよ」


 サラは日本語がしゃべれないので、留学生設定で押し通す事にした。

 外国から来たのは事実なので、ウソは言ってない。

 外国と言っても異世界だけどね。


「外国の! そうなのですか。美人でスタイルが良いですね」


「動きやすい服装が良いらしいです」


「わかりました。それではこちらへ」


 しばらくするとお姉さんの案内もあってか、やっとサラが服を選び出した。

 黒やグレーでシンプルなデザインを好むようだ。

 サラは、だんだん買い物が楽しくなったみたいで、店のお姉さんと身振り手振りでコミュニケーションを取り出した。


 うん、うん。

 良い傾向だ。


 俺もパパっとメンズのポロシャツやTシャツをカゴに入れる。


 会計を済ませて次の店に向かう。

 次は、OLさんぽい服を扱う店『ナチュラル・フレンドリー』だ。


「すいません、彼女留学生で……」


 店員さんに同じ話をする。


「キレイ目オフィス・カジュアルみたいな感じで、上下1セット選んでください」


「かしこまりました」


 まあ、異世界で『ナチュフレ』の服を着る事はないと思うが……。

 白状すると、サラに着させて、俺が脱がしたいだけだ。

 OLプレイ的な……。

 まあ、性奴隷目的でサラを買ったわけだから、間違ってはいない。


 靴屋、ランジェリーショップ、シャンプーなどアメニティショップを回って、ショッピングセンターを出た。

 基本的にサラと店員さんで選んだが、時々俺の希望も入れてもらった。


 俺の希望とは、つまり、下着とか、下着とか、下着とか……。

 四十歳独身貴族のフェティッシュワールドには、必要な出費なのだよ。


 他に異世界で必要そうな物を手配してから家に帰る。

 家に帰るとサラが堰を切ったように喋り出した。


「ご主人様! 凄いです! あんな大きな建物は見た事がありません! 沢山の光の魔道具や動く階段の魔道具! それに服がどれも素敵で!」


「うんうん」


「沢山買って頂いて、ありがとうございました!」


「いいんだよ、いいんだよ。それじゃあ、お風呂に入って汗を流したら、買って来た下着を着けて奉仕してもらおっか」


「えっ! あっ……はい……」


「これはガーターベルトと言うだ。俺のお気に入りだから覚えてね」


「か……かしこまりました……」


 この後、サラの感謝の気持ちをガッツリと受け取った。

 黒のガータベルトと下着が似合っていた。

 明日は白をリクエストしよう。

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