20Dead『屋敷』

望はスマホを見ていた。




「ネットは繋がるんだな……」




と言いながらボーっと眺めている。


和子は




「酔うよ?」


「ああ、まあ少しだけなら」




と注意をしたが望は酔う前にやめるつもりで見ているつもりだった。


そして




「もう! 吐かないでよ!! ご飯食べてるんだから!!」




そう言ってアンジェリスはお弁当を食べる。


和子は




「それ美味しい?」




と聞くと




「……うん」




と答える。


和子は




「良かったね!」




と言うと




「……うん、でもたまに変な味がするけど、お弁当ってこんなものなのかな?」




そう言いながら食べ続ける。


すると




「!!」




スマホを見ていた望は突然目を見開けた。


そして




バタバタバタ!!




とアンジェリスのいる方にある窓を開けた。




「何!! まさか酔ったの!! だからあれほど……!!」




すると望はアンジェリスが食べていた弁当を奪い取り窓から投げ捨てた。




「なあ!!」


「!! 希咲君!!」


「お前!! それは!!」




と3人は怒った。


アンジェリスは




「たっ食べ物を粗末にするとか勿体ないお化けが出るんだからね!!」




と顔を真っ赤にして怒った。


和子も




「私も今のは感心しないかな……ちょっとやり……」


「ごめんごめん、でも今のはもう食べない方が良いぞ?」




と言って望は冷や汗を掻きながらスマホを見ていた。


和子は望の様子が変だと思い




「どっどうしたの?」




と聞いた。


望は




「これ見たら分かるよ……」




と言ってスマホを見せた。


アンジェリスと和子と剣子が見ると


それはクイッターだった。


内容は




『もう世界は終わりなんだ!! 最後だ!! なら最後の最後にバカッターをしてやるぞ!! 取り敢えず俺の大切な棒を弁当のふたを開けて乗せてみました!! 俺の伊勢海老乗せだ!!』




と書かれていてその画像も乗せられていた。


お弁当は先程アンジェリスが食べていたお弁当だった。




「え……え……うええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」




アンジェリスは真っ青になり開いていた窓に顔を出して先程食べていた食べ物を吐き出した。




「だ!! 大丈夫!! アンジェリスちゃん!! アンジェリスちゃん!!」


「嘘だろ!! こんな世界になっても尚バカッターは存在するのか!!」


「いや! 内容的にはこの人はこんな世界になったからバカッターをしたようだ!!」




そこには自分の家族がゾンビになっていったやそれを俺が潰してやった等がクイッターにアップされていた。




「そうか、だからこれをアップしたさっきの店員のお客さんに対する対応が変だったのか……今考えると目が死んでた気がする、すまんな、アンジェリス……さすがに俺のミスだ……」




と望は申し訳なさそうにしていた。


アンジェリスは




「うあわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! 汚らわしいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 汚いよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」




と泣いていた。


和子は




「よしよし、アンジェリスちゃん、今回は希咲君は悪くないよ……これは不慮の事故だよ……」




と言ってさすがに庇ってくれた。


アレックスはそれを聞いて、




「まあ、気が立って車にしがみ付く人間もいる、普通じゃない状態ではあるだろうな……」




と言ってさっき望からもらった水を口にすると




「ブフウウ!! 何だこの味は!! エッホエッホ!!」




と言って咽た。


望は




「?? え? ただの……まさか!!」




と言ってスクリーンをスライドさせるとそこには




『今日の俺の尿は透明味!! 売り物に入れてやるぜ!!』


『さっきの客買ったんですけど!! マジウケる!!』




と書かれていた。




「アレックスさん!! それさっきの店員の尿だ!!」


「うわ!! 汚な!!」




と言ってペットボトルを窓から放り捨てた。




「糞うがああ!! よくも!! せっかく水分補給できると思ったのに!!」




と悔しそうにアレックスは




バンバン!!




ハンドルを叩いた。


すると望は




「これを見るとさすがに悲しくなってくるな……」




とどこか悲しそうだった。


和子は




「そっそうだよね……こんなことするなんて……食べ物を大切にする日本人として恥ずかしいよね……」




と言った。


望は




「いや、炎上もしない、リツもされない、責められることもないバカッター程寂しいものはないってこと……」


「バカなの?」




和子は呆れて言った。


望は




「でも、これが人類で初めて責められないバカッターになるんじゃないかな?」




と言って少し遠い目をしていた。


和子は




「っそう……まあ日本がこんな状態で責める相手もこんなしょうもないことに相手する暇がないんだろうでしょう……」




と言って呆れる。


するとアンジェリスは




「もう外の食べ物は信用できないわ……家に帰りたい……」




と言って俯いていた。


和子は




「え! でも戻ってもゾンビの襲撃を受けてないとは限らないんだよ!!」




と言った。


アンジェリスは




「まあ私の家は防御態勢もあるし飲み物もあるわ……だからちょっと見て行けそうならなら行ってみない? もしダメならあきらめて車の中で寝ることになるだけだし……」




と提案した。


アレックスは




「まあ、連絡して指示を仰ぐから来るまでもいいが、やはりちゃんと休息が取れる場所の方が休まりやすいだろうし……」




と考えて




「分かった、じゃあ案内してくれるか?」




とお願いした。


アンジェリスは




「ここから10分もしないわ」




と言って指を指すとそこは大きな家が建っていた。


それを見た望は




「アレなんかの公民館だと思ってたが、お前の家かよ……」


「ええ、あの人たち嫌がらせのつもりなのか知らないけど私の部屋なんていったいどういった理由でと思えるぐらい広く作られているわ……おかげでお友達を呼ぶといつも引かれるわ……」


「……そりゃ災難」




と望は少し同情した。


だが望も賭けていた。




(出ゾンビに期待……)




と考えていた。


そして、10分後




「ここか? だが入口はどこだ?」




とアレックスは迷っていた。


アンジェリスは




「待って……」




と言って内ポケットからボタンを出した。




ポチ




すると




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!




と草木を分けて扉が開いた。




「なるほど、これならゾンビは入りにくいな……」




と感心していた。


レベッカは




「とにかく入ってみんな無事か確認しないとね」




と言って入口に入った。




「へえ、結構広いのね」


「ここから10分」




と言ってボタンを押して再び入口は閉じた。




「ええ!」




そしてまた10分掛かり屋敷へと向かう。


望は




「外に出るにも車で10分って……お前も大変だな」




と言って残念そうにしていた。


アンジェリスも




「もう慣れたわよ……」




と呆れていた。


おそらく本当に家族から大事に扱われ過ぎているのではと望は考えていた。




そして10分後




「着いたわ……」




うんざりしながらアンジェリスは言った。


望は




「入り口でかあああああああああああああああ!!」




と言った。


望は自分の家の玄関を思い出した。


そこは望の身長より高いが手を伸ばせば上の方は触れるのではと思うぐらいだった。


だがアンジェリスの家の扉は自分の家より大きかった。




「糞!! 俺の家は扉にすら勝てないのか!!」




と悔しがる。


アンジェリスは




「バカなこと言ってないで入るわよ」




と言って入って行った。


望は




「そういえば、お金持ちってメイドや執事雇ってるってアニメとかで見たけど本当?」




と聞いた。


アンジェリスは




「ええ、いるわ」




と言った。


それを聞いて望は




(おいおいおい! マジかよ!! 生メイド見れるぞ! 可愛いのかな!!)




と期待した。


そして、出迎えの言葉




「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「お帰りなさいませ! お嬢様!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」




と一斉に挨拶が飛んだ。


アンジェリスは




「皆さん無事でしたか!! 良かった!」




と嬉しそうにしていた。


望はその光景を見てアンジェリスの聞いた。




「なあ、ここお前の家だよな?」


「?? 何言ってるの? 当たり前じゃない、皆でここに向かったんだし私が案内したんだから」




と言って不思議そうな顔をする。


望は




「メイドさんと執事がいるって言ってなかったっけ?」


「目の前にいるじゃない……」




そしてついに望はアンジェリスに言った。




「老人ホームじゃないの?」




目の前にいる人たちはメイドの格好をしたおばあさんと執事の格好をしたお爺さんだった。




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「どうぞ」


「ありがとう」




俊敏性犬は外にリールを掛けて待たせてから部屋に入った一行


望はティーカップを貰った。




(紅茶か……正直苦手なんだよなあ)




と思っていた。




「粗茶です」


「?」




そしてよく色を見ると普通のお茶だった。




「ティーカップにお茶」


「すみません、ハイカラな物は苦手で」


「いえ、ハイカラな物に和が入っていたので……」




と言って粗茶を飲んだ。


アレックスは




「すみません、今更ながら皆で押しかけて」


「いえいえ、お友達が来るだなんてお久しぶりですから」


「この面子でお友達とはなかなかな感性をお持ちですね」




ゴン!!




望が余計なことを言ってアレックスに頭を殴られた。




「いでええ……」




涙目になり望は頭を押さえる


すると1人のお爺さんが




「申し遅れました、私の名前はなか と申します、ここでは執事長をしております。」




と挨拶をした。

飛虎さんは片目メガネをしていたよぼよぼのお爺さんだった。

するともう1人のおばあさんが




「私の名前はすず とめと申します、メイド長をしております」




と挨拶した。

留子さんはパーマの様な髪をして、顔にシミが目立つ感じの人であった。

アレックスたちは




「俺の名前はアレックスと申します」


「私はレベッカです」




と言って握手をした。


続いて和子と剣子と望が




「私は音無 和子です」


「私は本庄 剣子です」


「希咲 望です」




と挨拶し、




「後そのにいる犬はなんか俺を付け回している俊敏性犬です」


「付け回してる扱い……」




と残念そうに和子は望を見る。




「何だよ……」


「いや別に」




すると執事長は




「申し訳ございませんでした、昨日は迎えに行けずに」


「いいのよ、飛虎さんは悪くないわ!」




とアンジェリスは慰めた。


だが飛虎は




「いえ、私の仕事である運転が出来なくなったとはいえお嬢様にご迷惑を掛けたのは事実です」




と言って申し訳なさそうにしていた。


他の皆も




「大丈夫ですよ!! それに皆さんが無事だったことがアンジェリスちゃんにとって嬉しいと思います!」


「そうだな、無理はしてはいけない」


「それに、いきなり訪れたのこんなおもてなししていただくなんて……」


「本当にありがとうございます」




と感謝する4人


すると執事長は




「そう言って頂けるだなんて……本当にうれしい限りです」




と言って涙を流した。


そして、執事長は




「私が……私はこれほど嬉しいことはありません、私の代わりにお嬢様を迎えに行ってもらえるなんて……私が……私が免許を返納したばっかりに……」


「え! そこ!!」




望はその言葉に戸惑った。


他の皆は




「えっと……テレビ見ていないんですか?」


「取り敢えずテレビ見た方が早いです」


「テレビはどこですか?」


「ラジオでも!!」




と取り敢えず状況を伝えようとした。


すると




「テレビゲームですか!! それではすぐに用意を……」




と言って執事長は外に出た。


望は




「俊敏性犬を見てゾンビと思わないんだな……」




と外に置いていた俊敏性犬のことを思いだした。




「うん、取り敢えず皆に状況を伝えないと始まらないね」




と言ってアンジェリスも少し苦笑いしていた。


そして執事長はテレビを持ってきて




「では、すぐに設置を」


「テレビ付けます!!」




と言って和子がすぐにテレビのコンセントを刺してスイッチを入れた。


すると




ザ――――――――――――――――――――




砂嵐だった。




「糞があ!! 放送してねえ!!」


「もう皆放棄して逃げたのか!!」




とレベッカもアレックスも悔しそうにしていた。


望は




「執事長さん、メイド長さん、ネット見てみようか?」




と言って記事と動画を見せた。




「コっこれは、私たちが家事をしている間に!」


「掃除をしている間に!!」




とどうやら広いお屋敷のせいでテレビを見る暇がなかったようだ




「というわけでゾンビがこの日本を征服しました」




と言って望はネットを閉じた。




「平和が崩れ去ってしまってはお嬢様をどうやってお守りするかを考えないと!!」


「この命に代えても!!」




と皆奮起していた。


それを見てアンジェリスは




「そんな!! 私だけじゃなくて皆も一緒に!!」




と言ったが




「それはダメです、お嬢様、我々は老い先が短い、お嬢様と一緒に入れただけで幸せでした、最後までこの国に残りお嬢様が逃げる時間だけでも稼げるようにしたいのです」


「それにもう充分ですよ、もう会いに来なくなった孫を見れなくて生きがいを失ってたところを旦那様に言われてお嬢様の面倒を見れて幸せでした、すぐには逃げないと思いますが今日が最後の思い出としていっぱい楽しくお過ごしください」




と言って笑っていた。


アンジェリスは




「そんな……」




と言って泣きそうになっていた。

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