6Dead『真実』

昔レベッカは研究者だった。


と言っても博士ではなくその助手をしていた。


博士の名前はジョリザズ・レイビンと呼ばれる若くて髪の長い男であった。


その男は細胞が自己回復するための研究を行っていた。


博士には娘がいた。


その娘は謎の病原菌に臓器をやられていた。


その為、病原菌に犯された部分の臓器を全て定期出する必要があったが臓器の大半をやられていた為、摘出すると死んでしまうのであった。


ドナーをしても足りないぐらいであった。


しかし、時間もあまりなく病原菌は娘を蝕み死へと誘っていた。




「博士、少しは休んでは」


「ダメだ!! そんなことをすればメアリーは死んでしまう!! 休めるものか!!」




と言って体を壊しながらも博士は研究を続けた。


それを見てレベッカも




「分かりました、私も付き合いますので頑張ってください!」




と言ってレベッカもメアリーを助けたいと思い尽力していた。


しかし、成果は上がらず時間だけが過ぎて行った。


そんな中スポンサーとしてお金を援助していた企業は




「残念ながらこの研究への援助を打ち切らせてもらう、悪いがこっちも慈善事業ではないんでね」




と言って援助が途絶えて資金不足に襲われた。


それを聞いた他の研究員も




「すみませんが、我々お金がもらえない上に意味のない研究はしたくないんで、さようなら」




と言ってレベッカ以外の研究者も立ち去ってしまった。


もちろんレベッカはスポンサーや他の研究員を説得するために




「お願いです!! もう少しで研究は実を結ぶんです!! お願いです!! もう少しだけ! もう少しだけ猶予をくれませんか!!」




と言ったが




「ではいつそれは結ぶんですか? 言えませんよね? どうせハッタリなんでしょ? その場しのぎの嘘なんですよね? ならもう電話はしないでください」




と研究者からは跳ね除けられ




「僕たちも暇じゃないんですよ、あんな研究に時間を費やすぐらいなら自分の研究を成功させますよ」




と研究員からは邪険に扱われた。


だがジョリザズ博士は




「研究費は何とかなった、研究に戻るぞ、他の者は呼ぶな、やる気の無い者は邪魔なだけだ」




と言った。


そして机に大金を置いた。


それを見たレベッカは




「こんな大金! どうしたんですか!!」




と真っ青になりながら言った。


ジョリザズ博士は




「借りた」


「!! 借りたって!! 何を考えてるんですか!」




とさすがのレベッカも真っ赤になって怒った。


ジョリザズは




「安心しろ、レベッカには迷惑を掛けない、例え研究が実を結ばなくても私が臓器を売れば何の問題もない」


「臓器って、娘さんは1人じゃないですよね……お姉さんの方はどうするんですか……」


「メアリーが死んだらもう私の人生なんて意味はない……ならば臓器を売って迷惑を掛けないで死んだ方がまだマシだ」




と言いながら目を泳がせていた。


それを見て




(ダメだ、博士はこうなったら何を言っても説得できない、ならば簡単な話! この研究を実らせて博士を救えばいいだけのこと! それにこの研究が成功すればお金が入ってきて借金の問題はなくなる、それなら……)


「分かりました! 私も最後まで付き合います!」


「ありがとう……」




そうして2人の研究は決死の覚悟で研究に打ち込んだ。


だが借りたお金さえそこを付きそうになっていった。


レベッカは


(何としても成功しないとジョリザズという1人の父親の命が研究の犠牲になってしまう、メアリーの姉を自分と同じ父親のいない人生を送らせてしまう……)




と自分の境遇と重ねてしまっていた。


そんな恐怖の中ジョリザズはある日再生能力のあるプラナリアや仮死状態になるクマムシ等の生物を研究して再生するまでの長時間仮死状態のように保存しながら人間の臓器を再生することは出来るかを研究した。


そしてその研究をして数日後


レベッカは買い出しに出ていた。




「はあ、このままだと資金も尽きてジョリザズの命は……そうなると残されたもう一人の娘のアンジェリスに父親を失わせることになる……」




とつぶやきながら研究所に帰った。


すると




「やったぞ! レベッカ!! ついに治せるぞ!!」




と言ってズタズタになったモルモットを見せて来た。


それを見て




(そんな……こんなところでジョリザズが壊れてしまうなんて……)




と長い研究の日々でジョリザズが壊れたと思った。


しかしそのモルモットを見ると




ジュワジュワジュワ




と細胞が回復している。


そして




「チュー、チュー」




と鳴き声を上げて再び動き出した。




「これは……まさかついに!」




ジョリザズの研究が実を結んだのであった。




「メアリーは……メアリーはこれで助けられる!!」


「良かったですね!」




そう言ってレベッカも心から喜んだ。


そしてジョリザズと共にレベッカは国に申請をして初めての治療を娘にしたいとお願いした。


そして大統領に呼ばれた


そして2人は大統領にお願いすることにした。




「この度はこの研究を完成させたことを非常に感謝したい」




と言って若く髪をオールバックしている男性が笑っていた。


その時レベッカは




「あの……この薬をまずジョリザズ博士の娘さんに使用したいんですが……」




とお願いした。


大統領は笑顔で




「うん、ダメ」




と言った。


その一言に2人は唖然とした。


レベッカは




「何故です!! ジョリザズ博士が借金をしてまで研究したんですよ!! 彼の娘が先に治療する権利があるに決まってるでしょ!」




と反論した。


だが大統領は




「いや、ダメに決まってるでしょ? バカなんですか? ラリッてるんですか? 全く、これだから世界情勢を知らない研究者は勝手で困る……」




と小ばかにするように言った。


ジョリザズは




「何で!! なんでなんだ!! おかしいだろう!」




と怒るが




「おいおい、私に感情論で落とそうと言うのかい? 全く舐められたものだね、そんなもので落とされる様なら大統領なんてやってないよ……この治療はこちらで用意した患者で行うよ、これは決定事項だ、いいね」




と言って話しを終わらせようとした。


だがレベッカは




「お願いです!! スポンサーからも援助を打ち切られても借金をして寝る間も惜しんで見つけた方法なんです! どうか! お願いします!!」




と頭を下げた。


だが




バタン




大統領はもうすでに部屋から出ていた。


置手紙で




『部屋で暴れたら警備の者が君たちを捕えるから馬鹿な真似は止めておくように』




と言った内容だけが記されていた。




「糞……どうして……どうしてなんだ……」


「納得できません! こんなの!」




と握り拳を強めた。




そして、大統領から禁止されてからジョリザズは




「レベッカ、私は娘にこの治療をする。大統領に黙ってだ、だから君はこの研究所から去りなさい、きっと君のも迷惑がかかるだろう」




とレベッカに言った。


それを聞いて




「何を言ってるんですか? 私は最後まで付き合いますよ、振り払っても私はあなたの家に行ってでも手伝いますからね」




と言った。


それを聞いてジョリザズは




「本当にいいのか? 後戻りは出来ないぞ?」




と言って念を押した。


レベッカは頷いた。


しかし、その言葉をある者が聞いていた。


そして、ジョリザズとレベッカがメアリーの治療を始めようとしていたそんな時だった。




「おいおいおいおい! お前らそこまでだ!!」


「全く! まだ開発段階の治療を勝手に治験に使うなんて!! それは薬の違法製造だ! 君たちを逮捕する!!」




と言って警察組織と共に国の者が2人を逮捕した。


そして2人は牢獄に入れられて1カ月後


メアリーは病気で死んだ。


その上この治療を開発したのはジョリザズとレベッカではなく解散したはずの研究員の手柄になって薬の製造方法も奪われていた。


それを聞いたジョリザズには多額の借金だけが残った。


それに絶望したジョリザズはおかしくなり




「クソ共がああああ!! 糞があああ!! 壊してやるううううううう!! 全てを壊してやる!!」




とトチ狂ったように自分が作った薬と娘の体を犯していた病原菌を取り出して危険な細菌兵器を作った。


それは人間を死の兵士として死体を動かして拳銃で撃たれてもすぐに動き回ることが出来るようになるものであった。


しかし、病原菌によって脳がほぼ壊死しており襲った物を噛みついて付着した菌で相手を殺して同じ人間をネズミ講のように増やしていくという恐ろしいものだった。


それを知った国の大統領はジョリザズを止めるどころかその兵器を自分たちの手に収めるためにジョリザズの借金を返してその研究をさせた。


そして




「いやあ、我が親族の1人を絶望させただけでこれだけのことをしてくれるなんて嬉しいね、我々もこの機を逃さずにまずは国に媚を売ってあいつの手伝いをするか」


「そうだな、我々レイビン家がこの国、いやこの世界を奪うための前段階だ」




とレイビン家の親族が細菌兵器を作るさせるためにジョリザズを絶望させるための計画の1つだったのであった。


だがレベッカはそんなことも知らず細菌兵器を作っているジョリザズを止めようとした。




「博士!! 止めてください!! そんなことをしてどうするんですか! そんなことが死んだ娘さんが喜ぶと思っているんですか!」




と言ったが、




「黙れ!! 私の人生は終わったんだ! これはすべて世界が悪い! この世界が憎いんだ! それにこの研究は金になる! もう私の心の隙間を埋めるのは金だけなんだよ!」




と言って聞こうとしなかった。


それどころか




「君はこの研究に邪魔だ、少し閉じ込めさせてもらうよ」




と言って突然他の研究員にレベッカは捕まった。




「な! 何を!!」




レベッカは捕まり独房へと入れられた。


そして




「どうしよう!! どうしよう! このままじゃ! このままじゃ!!」




と内心焦っていた。


そして恐怖に打ち震えながら数日が立った。




「いやああ……もういやああ」




とすでに心身ともに疲弊していた。


すると




「おい、レベッカ」




と言う声がした。


それを聞いて




「その声……アレックス!」




と声のする方を見た。


そこにはたしかにアレックスがいた。


涙を浮かべながら




「ドっどうして……ここに……」




と声を震わせながら聞いた。


アレックスは




「お前の親から連絡が繋がらないと言われて俺が調べたんだ、そしたらここでお前の消息が途絶えたのが分かった取り敢えず調べたんだが……このままここで閉じ込められてるとは」




とびっくりしていた。


レベッカは




「他の研究員は?」


「いなかった、まあお前がここに閉じ込められているところを見るとおそらくお前が囮でその間に研究を続けるつもりなんだろうな」




と言って少し俯いた。


レベッカは




「取り敢えず私の知ってることは話しますあの博士を止めないときっと世界がとんでもないことになる!」




こうしてレベッカはアレックスの元で話しをしてそして自分も研究からレイビン家の野望を止めるべく動き始めた。


レベッカはまずアレックスの元で格闘術や銃の扱いを教わった。


そしてアレックスはレベッカに技術を教えながらレイビン家の動向を探ったが、なかなか情報が入ってこなかった。


そんな時ある者からの連絡がレベッカに入った。


それはジョリザズの妻のメイシーからであった。


内容は




『私たちにはメアリー以外に娘のアンジェリスという姉がいます、その子を病原菌の感染や借金取りから遠ざけるために日本へと移住させました。あの子には寂しい思いをずっとさせてきました、そして夫がついに日本を細菌兵器の実験台に選んだのです、このままだとアンジェリスが危ない! お願いです! あの子を助けてやってください!』




という話であった。


それを聞いて




「なるほど、確かに母親として一刻も早く助けたいわけだ」


「でもそれで犠牲になる日本のことはあまり考えてなさそうね……」




メイシーの言葉にレベッカは少し不満そうだった。


だがアレックスは




「当たり前だ、人間なんて身近な者が死ぬのと知らない者が死ぬこととなれば絶対に身近な人を選ぶんだ、なぜなら接点が無い者には同情することが出来ないんだ、出来たとしても可哀そうだなとか、大変そうだなという同情に似たようなものだ、お前だって自分の親が死ぬかそれともどこぞの誰か知らない者が死ぬとでの感情は違うはずだ」




と言って説得された。


だがアレックスは




「まあ、助けれそうな日本人も見つけ次第助けよう、もしかしたらその者たちも我々に協力してくれるかもしれない」




と言って2人は日本へと向かった。


しかし、時はすでに遅かった。


日本のニュースで指名手配犯が消息を絶つことはよくあることだ。


そのものが突然人に噛みつきそれが伝染するように人に襲掛かり始めたという情報が入って来たのであった。




『繰り返します! 今人が人に噛みつき噛みつかれた人人に襲い掛かるという事件が起きています! 皆様! 決して自宅から出ないで……キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』




そんな悲鳴と共にテレビはしばらくお待ちくださいの表示から変わることがなかった。




「酷い、まるで地獄よ」


「学校に通っていると聞いたがどこに通ってるんだ! あの母親! その情報もくれないとか不親切だろ! 本当に娘が大切なのかよ!」


「とにかく当たれるところから探していきましょ!」




そう言って2人はアンジェリスの行方を捜すことにした。

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