2Dead『賛同者たちと反論者たち』
「何を言ってんだよ!!」
「そうよそうよ!!」
「お前だけ死ねばいいじゃないか!!」
「普段目立たねえくせに偉そうな!!」
と教師とクラスメイト含め大ブーイングを喰らった。
そして罵詈雑言を皆から浴びせられる望
全くその通りだ
望は皆に呼びかけずにそう思うなら勝手にゾンビになればいいのであった。
だがチキンの望はこのクラスメイトを誰かゾンビになってもらうことで覚悟を決めれると思っている為、どうにかクラスメイトを説得しないといけなかった。
そのため望は教師の加藤とクラスメイト皆に向かって大声で
「いいかお前ら! 逆に聞くがこんな世界で生き残って何がいいんだ! むしろいつ噛まれるか分からない恐怖に怯えながらこの世界を生き残るつもりか! それにここだけじゃないだろう! きっと他の町もゾンビに襲われているだろう!! そんな中自分の家族が安全と言う保障がどこにある!! もしかしたらもうすでにゾンビ化して自分の手で殺さないといけないかもしれないんだぞ! そんなのお前らは耐えられるのか! 俺は自分の母親や父親! そして妹に対して殺すことなんて絶対に無理だね!! もし俺と同じ気持ちが少しでもあるのなら俺の提案を考える余地があるんじゃないのか!」
それを聞いて教師の加藤とクラスメイトは不安に駆られた。
そして少し黙りこんでから
「でっ出来る?……」
「え、その……でもその、生きて逃げないと……」
「わっ私家族を殺すなんて無理!」
「そっそんなこと言ったって! こんな状況で!」
「じゃああんたは出来んの!」
「そっそれは……」
と少しずつ恐怖が助長されつつある。
教師ですら
「私にも……やっと子供が出来たのに……嫁も喜んでいるのに……どうして……俺には出来ない……自分の家族を殺すなんて……」
と嘆いていた。
そして望は
「おい! そこのガタイのいいお前! 覚えてるぞ! 確か柔道やってんだってな! お前はどうだ! この状況下で逃げ切れる自信があるか!」
と望はクラスでガタイが一番いいであろう男子に聞いた。
その男子は髪を望と同じようにスポーツ刈りにして学生服も一番デカいXLサイズであろうと思われるほどの大きさを羽織っていた。
「え! 俺! それは……難しいかな……」
突然聞かれたことによりその男子は戸惑いつつも、答えた。
「そうだよな! 難しいよな!」
「でも0じゃないだろう!」
同調するように言う望にその男子は反論したが望は
「ああ、そうだ、0ではない……逃げ切れるのはな……だがここから逃げてどうするんだ? お前はゾンビ映画の主人公のように立ち振る舞いながら戦えるのか! ここから先は素手での戦いは不可能だぞ! いやむしろ武器を持って戦わないといけないんだ! それも銃のような飛び道具! ぎりぎりOKな武器でも刀だ! そんなものをお前は扱えるのか! 言っとくがここから先はそれがないと辛いぞ!」
と肯定しながらもその男子が言ったことの可能性の低さを伝えた。
男子はそれを聞いただけでも真っ青になっている。
そして望の話は止まらなかった。
「ゾンビに力技だけもしくは柔術なんかで対抗できると思うな! 死体が動き出したって映画でも言ってたろ! ならば人間が本来使えないリミッター解除状態で100%の力だって使えるんだ! 捕まれた瞬間にガブリとされて終わりだ! 分かるか!」
「ああああ……あああああ……あああああああああ」
その男子生徒はそのまま崩れるように膝をつく。
望の言葉に皆は絶望に染まった。
それはほかのみんなも同じであった、スポーツの出来て戦っても自分たちでは勝てないような男子生徒が勝てないという真実が皆の目を絶望染め上げた。
当然その男子がゾンビ映画の主人公や主要キャラのように戦えるとは皆も思えなかったのであった、それはそこにいるクラスメイト全員なら当然無理であると言っているも同然であった。
だがそんな中、1人の男子生徒が立ち上がり
「お前ら! 惑わされるな! 希咲が勝手に絶望しているだけだぞ! それを俺らが真に受ける必要はない!」
と言って望とは対照的に皆に希望を与えようとした。
その男子生徒はどこかモテるのを意識してか、顔が整っており、ロングの髪を下していて、それなのに爽やかさを演出しているような見栄えだった。
それを聞いて望は慌てたのか
「ちょ! おま!! 皆をやっと説得できると思ったのに!」
と本音を漏らす。
その男子生徒は望を睨みつけながら
「黙れ! お前! どれだけ根性腐ってんだ! 死にたければお前一人で死ね!」
と言ってクラスの皆の方に目を向けて
「皆! 正気を戻せ! 俺らが今しないといけないことを!!」
と呼びかけたその声を聞いて数人が
「そうだ、そんな家族が死んだって決まったわけじゃない……俺だってここで終わってたまるか、俺にはやりたいことがまだまだいっぱいあるんだ……」
「そうよ、希咲君が勝手に私たちを惑わせてるだけ……やってもないで出来ないだなんて! そんなの分からないわ! 私は逃げる!」
「俺も! 俺だって逃げるぞ! こんなところでくたばってたまるか!!」
と数人のクラスメイト達の目に希望が宿った。
それを聞いて望は
(まずい!! これは非常にまずい!! 先ほどまで絶望に染めてゾンビになるだけに意識を向けさせようとしたのに! これじゃ再び皆に希望が戻ってしまう! 何とかしないと!)
と考えてとにかくみんなに呼びかけた。
「やっ止めろ! 余計なことを考えるな! 甘い希望を持つだけ無駄だぞ! 希望を持って潰されるのが一番きついんだ!」
とその言葉を聞いてまだ希望が宿っていなかったクラスメイト達は
「そうだよな、ああ……そうだよ、俺だって希望持って奈美子に告白したら振られたし」
「だよな……結局高い壁は俺ら凡人には登れないんだよ……努力すればある程度は真面な景色が見れると思って努力してもその努力が無駄だったと分かった瞬間……踏んでいる大地が崩れてそのまま落ちていくような気持になるんだ……持つだけ……努力するだけ無駄なのかもしれない……」
という考えがネガティブな状態でいたままだった。
それを聞いたその男子生徒は時間がないため焦っているのか少しがっかりしたような顔で
「そうか……残念だ」
と言った、そして
「だが俺は諦めない! そして俺と同じ考えの奴は俺について来い!! 皆で一緒に逃げればきっと助かる!! 信じてくれ!」
と言われてしまい望も心の中で心底焦った。
(この野郎が……どうして諦めねえ!! どうして絶望しねえ! どうする! このままじゃ全員逃げるのでは……いや、さっき話してた奴等はまだ目が絶望してる! まだ大丈夫だ!)
と思い望は
「ふーん、ならいいんじゃね? やってみたら? 絶対無駄だろうけど……」
と余裕そうに言った。
望は思った。
(ここはリスクを負っても自信満々に相手をバカにするぐらいに挑発するべきだ! そうすれば逃げて希望が崩れるのではないかと考えてしまう者も数人はいるのだから! 俺の作戦は数人いればいいだけだ! そうすれば覚悟をすることは出来る!)
と考えての発言だった。
それを聞いてその男子は
「ああ、勝手にさせてもらう! 俺について行きたい奴は着いて来い!」
と言って教室のドアを開いた。
それと同時に賛同であろうクラスメイトが数人集まって
「今だ、誰もいない今がチャンスだ」
と逃げることを提案した男子がリーダーのように仕切って一緒に逃げて行った。
逃げてもクラスの大体が残っていた。
望の言葉とその男子が言った言葉に迷いを生じている者たちだ
それを見ていた他のクラスメイトは
「えっと……これからどうすれば……」
とおろおろとしているところを望は透かさず
「簡単だ、ゾンビになる覚悟を決めればいい」
望ははっきりとその言葉伝えた。
「「「「「「「「……」」」」」」」」」」
それを聞いた皆は黙ってしまった。
そして、そこに残ってしまった教師の加藤は顔を真っ青にしながら
「私はダメな教師だ、子ども達が束になって頑張ろうと言っている者たちの力になれないなんて……自分の家族がゾンビになっていて殺すことになることを考えてしまうだけで足の震えが止まらない……」
と自分の情けなさと罪悪感で涙を流していた。
それを見ていた望は透かさず教師の加藤に
「そんなことはないですよ、生徒の無謀を止めるのも先生の役目です、彼らは夢を見すぎているのです、でもあなたがここに残ったおかげで覚悟が出来る生徒がいることをどうか忘れないでやってください」
と優しく言った。
教師の加藤はそれを聞いて少しほっとしたような表情になり
「そう……だな……本来なら全員を納得させるのは私なのだろうが、でもこんな状況だ、全員の心が一致するとは限らない、すまないありがとう」
と言って望にお礼を言った。
望は
「お礼には及びません、俺の意見を聞いていただけたことを感謝します」
と言って望は先生を自分の考えの中に再び誘導することに成功した。
そんな時
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
悲鳴が聞こえた。
先程から聞こえていた走る音、おそらくは先ほど逃げた男子生徒の足音が悲鳴の後ぱったり消えていた。
そして再び走ってくる音が近付いてくる。
「!! まさか! まさかああああ!!
1人の女子生徒が震えながらドアを見る。
そしてその教室のドアが
ピシャアアアアン!
と勢いよく開いた。
そこから先ほどの男子生徒と一緒に逃げたであろう女子生徒が息を切らしながら血に濡れて戻ってきた。
その女子生徒に望は
「どうだった? その姿になっても逃げれると思うのか?」
と聞いた。
その言葉に反応してか女子生徒は震えながら
「希咲君の言う通りだった。私たちは映画の主人公のように戦えたり他のサブキャラみたいに活躍できるわけじゃなかった、目の前……ううう……目の前で
自分だけ逃げてしまった罪悪感に押しつぶされるようにその場で蹲り呻くように泣いた。
おそらく波田野と呼ばれる者は先ほどのリーダーのように仕切っていた男子生徒の苗字だろう。
だがそんなことはお構いなしに時間がただ経っていきゾンビたちの声が聞こえてくる。
「もうそこまで……」
「覚悟……決めないといけないのか……」
と他のクラスメイト達がざわつく。
望は
「はあ、どうやらようやく皆状況が理解できたようだな……」
と偉そうに言った。
だがそれを咎める者は誰もいなかった、
証明されたからだ、もう逃げても無駄であるということを
それが望の話が長かったせいで逃げる時間が無くなったなどと、誰も気にする余裕はなかった。
それだけ皆の心は潰れていた。
そして泣いていた1人の女子が
「そうだよね……もう覚悟を決めるしか……ないのね……私たちが間違ってたんだ……確かにこんな世界で生きようだなんて私たちには身の程知らずなんだね……ありがとう……希咲君、気づかせてくれて………でも最後にこれだけはさせて……」
そう言ってその女子は望のいる方向へと駆け寄った。
「へ……」
望は少し顔を赤くして見ていた。
すると
「え……」
そのまま女子は望を通り過ぎて1人の男子生徒にキスをした。
「!!」
その男子生徒は顔を真っ赤にしてその唇を受け入れた。
そしてそのキスをした女子は
「ありがとう、貴方が一緒に来なかったからもう叶わない夢だと思ったけど最後に叶えることが出来ちゃった……私はあなたと共にゾンビになることを誓います……」
それを聞いた男子生徒は
「ああ! 俺も! 俺も誓うよ!!」
そう言って再び抱擁と口づけを交わした。
それを見ていた生徒が1人出てきて
「おいおい、気持ちは分かるがもう時間はないぜ、続きは天国でしな! じゃあ皆!! 行こうぜええ!!」
「「「「「「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」」」」」」」」」」」」」
教師の加藤とクラスメイト全員が廊下へと出た。
そんな中望は
「……へ……へ? 俺にキスするんじゃあないの?」
と呆けてしまっている間に望は、思いっきり出遅れた。
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