世界がゾンビ感染に侵される中俺はゾンビになることを決意しました。
糖来 入吐
1Dead『終りたがる者』
私立幻日高校に通うごく普通の高校二年生で彼はあまりファッションにも興味はなく髪の毛もスポーツ刈りにも関わらず寝癖のせいで少し倒れて剃りこんだように見える。
彼はいつものように授業が終わり休憩時間友達と
「あのアニメ見た?」
「見た見た」
というアニメ好きに良くあるような会話を少し太めの男子としていた。
誰も彼らを気にしないで他のグループとおしゃべりをしている。
望は特に目立つこともなく話をして授業が始まるとすぐに席について
そして、寝るわけでなく話を聞いてボーッと過ごしている。
彼はいつもこうであった。
特に部活にも入らず帰宅部
特に生徒会にも入っておらず
特に彼女もいず
特に成績も良くなく、赤点ギリギリ、
特に友達も多くなく
特に人生に張り合いがなく
いつも通りの普段を過ごしていた。
帰ってアニメを見て宿題を怒られないためにだけやって
そして寝て次の日学校に行く
学校行事にもあまり関心が無く
まさに生きているだけであった。
趣味としてアニメを語っているがイベントに行くことやグッズを買うなどではなく
見たいアニメを見て終わる
そして、ゲームを流行の物を買い
クリアすればやらなくなる
こうして彼は何か一つのことを真剣にやろうとは考えることなく
その生活をなんとなく暇をつぶして過ごす毎日だった。
彼はいつも思っていた。
(俺はこのまま何事もなくつまらない人生を送って死んでいくんだろうな……)
となんとなく思っていた。
しかし望はそんな生活を受け入れていたし、別に嫌だとも思わなかった。
自分は所詮こんなものだと思い、
他の皆はどんどんと自分のやりたいを見つけていく
だが望にはそういう考えはなかった。
普通であるようで普通じゃないことに彼は満足していたのであった。
こうして彼は同じような日々を過ごしていく
事が起こるまでは彼はそう考えていた。
それは11月になり冷たい風が吹くようになった時期だった。
その日も同じように授業が始まり教師の
黒板には板書が書かれていく。
カッカッカッカ
「ここテストに出るぞ」
「えええええ!」
そんな声の中ただただ板書していく望
授業の内容は聞いていない、
いつものようにただノートに写しているだけで、
彼は思った。
(眠いなあ、早く終わらないかな……)
ただ嫌いな授業が終わることを願ってただ板書をした。
「ええ、ここは平家が……」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
先生が黒板の内容を説明をしようとした瞬間
それは突然起きた。
悲鳴が外の方から突然聞こえたのであった。
一瞬皆は何が起こったのか分からなかった。
そして、気になったのか1人ずつ流れるようにクラスの皆が窓の方へと向かった。
教師の加藤ですら問題が起きたかを確認するため窓へと向かった。
そんな中望は
(どうせしょうもない事だろう……だが、これで授業も少しはサボれる)
と思い無視して頭を机に倒した。
その時1人の女子が
「嘘……先生が……人に噛まれてる……」
と言った。
それを聞いて望は
(? 人が人を噛む? 何の冗談だ? 噛みつきプロレスラーでもやって来たのか? 少し気になるし見てみるか……)
とだけ考えながらようやく望も立ち上がり
スタスタと窓の方へと歩いて向かった。
だがそれは信じられない光景だった。
窓から見ても分かる
首元から血が噴き出して倒れ込んでいる教師
知っている教師だった。
体育の
彼は正直あの熱血教師があまり好きでなかった為
別に悲しみはなかった。
しかし、人が人に噛まれている状況があまりにも異様だった。
近くには倒れている坂本を見て泣いている女性教師がいた。
後姿のせいで誰かが分からなかった。
そして噛みついた人間は明らかにおかしかった。
完全にゾンビ映画と同じ
白目をむいて皮膚はゾンビと同じような腐ったような色をしていた。
そして
「ああー……ああああああ……」
とふらふらと動いている。
そして、体育教師の坂本も突然立ち上がりそこにいた女性教師を噛みついた。
そして、噛みついた後立ち上がり先ほどの男と同じように歩き出した。
望は
(……おいおい、マジかよ……)
とそんな言葉しか頭に過らなかった。
あまりにも現実離れした状況に
あまりにも映画みたいな状況に
虚構とだけとしか思っていなかった状況が
今まさに起きていた。
これは紛れもない現実
それを信じられず思わず自分の頬を抓るが目覚めない、
在り来たりな方法でも目覚めない自分
そして、おぞましく恐怖の存在ゾンビが人間を襲っている
それは周りのクラスメイトも同じだった。
自分たちには関係のないはずだった映画のような状況が今
現実に起きている。
クラスの皆は
「ドっどうするんだよ!!」
「知るかよ!! 分かんねえよ!!」
「いやだいやだいやだ!!」
「お母さん助けて!!」
とざわつき始めた。
そして望も当然動揺していた。
(何なんだこれは一体!! どうする!! 逃げる!! でもどうやって!! 今ならゾンビは1人、いや2人だ!! 今なら!! でも逃げれるのか……あの悲鳴はここにも聞こえたってことは1Fにも聞こえたはず……それにあのゾンビはどこから来た……そんなの学校の外だろうが俺!! 普通に考えて学校の地面から飛び出たってのか! 明らかに校門から侵入したんだろ! それに校門だけなのか? それどころか裏門からも入ってきたならば出る場所が塞がれてる!)
望は様々なことを考えただけでも出口が塞がれているということが理解できてしまう、
だがそれでも望のネガティブな思考は続いた。
(たとえ上手く逃げれても外にゾンビがるのだろう、あんなのが外を歩いていて誰も噛まれてないなんてありえない、来るまでにたくさん噛んでるはずだ、確か映画や漫画でもそうだった……じゃあ立て籠る? それをしたら解決か? いやむしろ状況が悪化する! 学校の食料だけで何日生きれる! むしろ購買部までの場所が遠いから明らかにゾンビとの戦闘は免れない! それを考えると逃げる以外の方法がない! 逃げるのは壁を登って無理やり逃げるにしてもその後の逃走はどうする! ダメだ! 俺が戦える想像がつかない! このままじゃあゾンビにな……ゾンビ?……)
そして望に一つの案が下りてきた。
(ダメなのか……ゾンビになることは……なぜダメなのだ? 怖いから? プライドが許さない? 人間の尊厳を守りたい? 死にたくない? それって本当にダメなのか? 最初の噛まれるのが怖いだけで、むしろ生きた方がゾンビになるよりも怖いだろ? だっていつ噛まれるか分からない状態でずっと生きるのか? それに安息の地を見つけてもいつゾンビに襲われるのか分からないじゃないか、それにあんなゾンビだけなのか? もっと強力なゾンビが出てくる可能性だってあるだろうし、その上自分の家族が生きている可能性なんて少ない! 俺がゾンビ映画の主人公のような活躍を見せる可能性だって少ないはずだ!)
と望はゾンビ映画の定石を思い出した。
そして、
(それに比べればゾンビになるのは噛まれるだけ! 生きて恐怖し続けるよりかはマシだ! それにプライドがあるのなら恐怖してビクビク過ごしている時点でプライドなんてズタズタだ! それに外に出たらもしかしたら気が立った人間たちが暴徒を起こしている可能性があるじゃあないか! それのどこに人間の尊厳があるんだ! 自分もそうならないとは限らないだろ! 生きている方が尊厳を失う可能性が高い! それにこんな世界に生きて何が楽しい! アニメも無けりゃあ漫画も無くなってる! てかそれを楽しむ時間なんて無くなる! ならばこんな世界に未練があるか! いや! 無い!! そうだ! ゾンビになろう!)
そう思って望はゾンビになろうと決心するがチキンの望にもう一つのネガティブ思考が降り注いだ。
(……ちょっと待て、噛まれると苦しいのかな? 痛いだけ? なら飛び降りて死んだ方が……いやここは2Fだ……落ちたところで怪我で済んでしまう可能性がある……それでゾンビに噛まれれば意味がないし、1人で死ぬのも怖い気がする……ならやはり噛まれるか? でもどうしても怖い、誰か噛まれてから自分も噛まれる? そんな偶然が……あった……)
望は途中で思考を止めて周りを見渡した。
どうやらクラスメイトも教師も自分と同じく状況にパニックと恐怖で逃げることがまだ出来ていなかった。
動揺と現実とかけ離れすぎていて思考が皆グチャグチャになってしまっているのだろう。
(そうだ! クラスの皆もゾンビにしよう! 1人より複数人で! それならば自分が先になることはない! 誰かが噛まれて覚悟を決める時間もある! それならきっと俺でもゾンビになれる!)
と下種な手を思いついた望はざわつくクラスの皆と教師の加藤にこう呼びかけた。
「おおおおおおおおおおおおおい!! 注目ウウ!! 皆さああ!! いっそうのことゾンビになってみない!!」
と呼びかけたのだ。
それを聞いたクラスメイト達と教師の加藤は
当然呆けていた。
当たり前だ、皆この状況を見て思うことといえば逃げる
その選択肢1つだけだ。
それなのに特に目立ってこなく人望があるわけでもない人間が突然
ゾンビになろうと言い出した。
そんな馬鹿な話があるかと言わんばかりに皆は
「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
と大声で言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます