9Dead『リーダー』
アレックス、レベッカ、和子、剣子、そして剣子に背負われている望と途中から来た他の6名がバスへと乗り学校から逃げ出すことに成功した。
アレックスが運転する中皆席に座っていく。
そんな中
「剣子ちゃん! その人私の隣に座らせるから少しは休んで!」
と和子は剣子を気遣った。
剣子は
「大丈夫だ、私は体力があるから和子の方が……」
「そんなこと言って! 見張りもしてその人負ぶって戦って! ほとんど休んでいないじゃない! 私なんて全然戦力にならないのに休んでばっかりなんて! むしろ剣子ちゃんが休んでよ! 剣子ちゃんの体力が無くなったら私たちの中で戦えるものがいなくなるんだよ! 私も戦うようにしたいけどいきなり戦えるほど器用じゃないし、努力するにもやっぱりそれなりに時間はいるから! だから休んで! 私たちが役に立てるようになるまで大変かもしれないけど……」
と少し自信がなさそうに言った。
剣子は
「大丈夫だ、和子は私が守る、でもそうだな、ここで休まないと私が倒れれば他の生徒で戦えるものはいないかもしれない、それにアレックスさんやレベッカさんでも守り切れる人数はあるだろうし、ここで休むよ」
と言ってバスの座席のリクライニングを少し傾けて目を瞑った。
「スー、スー」
とすぐに眠りに入った。
和子は
「やっぱり、疲れてるんじゃない、普通少しぐらいは眠るのに時間はかかるよ……」
と言って自分自身の無能さに情けなさを覚えた。
そして
「……」
望は一向に目を覚ます気配を見せなかった。
「大丈夫だよね? 生きてるよね? 息はあるし、うん、大丈夫」
と言って頭を撫でながら椅子に座らした。
「間抜けな顔で眠ってるなあ、気絶するとこんな感じなんだ……」
と不思議そうに見ていた。
すると
「いやああ! 良かった! 死ぬところでしたよ! ありがとうございます!」
「あいえいえ、無事で良かったです」
1人の男子生徒が笑いながらレベッカに話しかけてそれに対してレベッカも応対した。
その男子生徒はメガネを掛けてネクタイをきっちりと絞めている男子生徒だった。
和子はその男子を見たことがあった。
「あの人、確か
和子は少し不審に思った。
彼の父親はお金持ちでそれもあるのか彼自身のプライドも高く良く自分が言っていることは正しいと皆の前で言い張っているのであった。
そして生徒会長になったのだが皆から父親が校長や教師に賄賂を渡してその座に着いたとも噂されていた。
和子自身は偏見はあまり良くないと考えているのだがやはり噂を聞いているだけに良いイメージは持っていなかった為嫌な予感がしていた。
そして、その予感は的中したのであった。
「でも大人のあなたたちではリーダーとしてはあまり良くないと思うんですよ! だって知らない大人にいきなり指図されるのって皆抵抗があると思うので! だからリーダーはこの生徒たちが決めてあなたたちが言ったことを検討! そして、実行する形を取った方が良いと思いまして! なのでリーダーを変わってもらえませんか!」
と交渉してきた。
それを聞いてレベッカもアレックスもきょとんとした。
「いや……別にリーダーを決めたつもりはないんだが?」
「うん、確かに指示したこともあるけど別にリーダーとして言ったわけでなく最善ではないかと思ったことを言って皆で協力している感じだったの……」
と言って戸惑っていた。
それを聞いて目を輝かせながら
「それでは生徒の中からリーダーを決めていいのですね!!」
「え……ああ……別に……」
「構わないが……」
と言って2人はあまり気にしてなかった。
そんな中
「うるせえなあ、何だ……」
と望が目を覚ました。
それに気づいた和子は
「あ! やっと目を覚ましたんだね!! 良かったあ! ここがどこか分かる!」
と言って望の方を見て少し和子は安心していた。
望は
「ここは……何処? 私は誰?」
と言って周りをキョロキョロと見た。
それを聞いて和子は
「!! 記憶喪失!! そんな! さっき頭を……」
と慌てたがそれが言い終わると同時に望は
「嘘だよん!」
と言って茶けた。
「……そう」
とちょっとふざけた望に少し和子はイラッとした。
だが和子は
「えっと……状況とどうしてこうなったかを説明をしてもいい?」
と聞いた。
望は
「どうぞ……」
と頭を下げた。
そして、和子はまずレベッカとアレックスが話したゾンビ感染の事実を望に話した。
数分後それを聞いた望は
「マジかよ……ウソだろ……」
と思いっきり戸惑っていた。
そして顔を俯かせた。
その姿を見て和子は
(そりゃそうだよね、そんなのいきなり聞いても信じられないよね……)
と心配をした。
だが、望は
(映画みたいなことが現実で起こっただと……それってつまり……二次元が現実に……まさか! 俺が押していたアニメ! 魔法少女レイミちゃんも現実では研究されていたってことかああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!)
と少し顔を赤くしながら妄想した。
魔法少女レイミちゃんとは彼が人生で唯一楽しみにしている萌え美少女アニメである。
決め台詞は
魔法少女レイミちゃん「愛と恋の力で悪くて最低なヤリ野郎をブッ倒せ! 魔法少女レイミちゃん! ただいま参上仕りました!! にゃふん!!」
である。
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望の妄想
「レイミちゃんの美しさはこんなものではない! やはりマジックアイテムと妖精は大切だ!」
「それだけじゃない! 科学だけでも彼女が使っていた魔法を再現するべきだろ!」
「セリフも捨てがたいぞ!!」
とそんな会話をしている複数人の研究者
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そんな姿を望は妄想していた。
だが俯いている望のそんな姿を見て和子は
「?? 大丈夫……じゃないよね、こんなこと聞いても訳が分からないよね……」
と少し悲しそうにして声を掛けた
だが望は
「そんなことはどうでもいい!! それよりクオリティーだ!!」
「!! クオリティー!! 何の話!」
と訳の分からないことを言った。
和子はそんなキレ方をされて体をビクッとさせて戸惑った。
だが望は
「でも、こんな状態だともうされてないだろうな……」
「何を!!」
「しょうがない、これはしょうがない、忘れよう」
と言って話しを急に終わらせた。
すると
「君たち! 聞いているのかね!! リーダーを決める話だぞ!」
「?? 誰?」
望は清田に面と向かって言った。
それを聞いた清田は
「お前! この僕のことを知らないのか!! 非常識だぞ!」
と怒るが望は呆れながら
「一生徒のことを把握してるのなんて生徒会長だけだろ?」
と反論をした。
それを聞いて清田は真っ赤にしながら
「僕が生徒会長だ!」
と言ってそれを聞いた望は
「マジで! 知らんかった……」
と驚いていた。
清田は拳を握りしめながら
「あああああああ!!」
と癇癪を起しながら地団太を踏んだ。
「こいつ……本当に生徒会長? それともこの状況で情緒不安定なの?」
と望はドン引きしながら和子に聞いた。
和子は呆れながら
「うん……どっちに引けばいいかもう分からないよ……」
と疲れたように言った。
すると
「で、リーダー決めるんだろ? さっさと決めろよ」
と剣子が眠そうに言った。
それを見て和子は
「剣子ちゃん! 何で起きてるの! さっきまで寝てなかったけ!?」
と休んでいた剣子が目を擦りながら和子に
「起こされたんだ、リーダー決めるから起きろって言われたんだ……」
と言って明らかに起きたばかりでしんどそうにしていた。
それを見て和子は
「どうして起こすの! 剣子ちゃんは戦ったり見張りをして疲れてるから休ませたのに!」
と清田に言ったが
「黙れえええ!! リーダーを決めるんだあああああ!! 皆参加するのが普通だろうがあああ!! この常識知らずがあああああああ!!」
と喚いた。
望は
「うわあああ!! 唾飛んでる唾飛んでる!! 汚いない!!」
と腕でガードしていた。
剣子は面倒臭そうに
「早く始めなさいよ……眠たくてしんどい」
とイライラしているようだった。
清田もイライラとしながら
「じゃあリーダー決めるぞ! チッ、やる気のない屑共が」
と悪態をついた。
そして、清田は
「じゃあリーダーを決めるぞ」
と言ってバスの乗車口の方から皆を見た。
「何故2回言ったんだ? そんなにさっきの言葉大切か?」
と望は、疑問に思った。
後ろの席の者は
「良いぞ! 清田様!! やったれやったれ!」
「出来レース!!」
「もうリーダー確定だな!!」
と言ってあからさまなおべっかされていた。
そして
「まあ僕がいいと思うんだがリーダーが僕がいいと思う人は拍手をお願いします!」
「何で主語を二回使うんだ」
と望は呆れていた。
そして、当然のように後ろの全員は拍手をしていた。
「うわあ、これは完全に仕組まれてるな、多分こうやってあえて決を採ったことを見せることで誰も文句は言わせない状況を作るためだろうな」
と剣子は言った。
和子は
「どうしよう、でもどうせ3人だから多数派もう決まってるんだけど……」
パチパチパチ
と和子が喋っている時にそんな横から聞こえた。
和子が見ると望も拍手をしていた。
「!! ええ! 君も賛成なの!!」
と言って和子は驚いていた。
それを聞いて望は
「いいじゃないか……別に……これが最後のリーダーになるかもしれないんだぞ? やらせてあげようよ」
と言って優しい笑顔で言った。
和子は
「ええええ!! そんな子供の我儘を聞いてあげるみたいな理由でリーダーの票を入れちゃうの!!」
と言って少し青ざめた。
そして、清田は
「フン、もう決まりだなこれからは僕の言うことは絶対だぞ! 俺の言うことは絶対だからな!!」
と威張り散らすように言った。
望は
「いやいや、リーダーっていうのは別に何でも言うことを聞かせることなんてできないだろ? 政治家だって総理大臣になっても別に全て言った意見が叶うわけじゃないんだぜ? それに叶ったとしても国民が少しでも気にくわなかったら文句の嵐を喰らうんだ、リーダーだって同じようなものだぜ? わざわざ責任があって大変なことを引き受けるなんて偉いねえ!」
と言って煽った。
清田は再び顔を赤くしながら望の椅子を思いっきり蹴った。
「うおお! ビビった!!」
望はいきなりのことで思いっきり冷や汗を掻いた。
すると
キーッ!
とバスが止まった。
清田はアレックスに
「おい! 何で止めるんだよ!! 逃げるんじゃねえのかよ!!」
と言ってキレた。
アレックスや
「いや、別の場所に置いた車から武器をここに移し替えようと思ってな、お前らにも武器を渡しておこうと思って……」
と説明をした。
すると清田は
「はああ!! 何だ! それ! 僕らに武器持たせるってどういうことだよ!」
とヒステリックを起こしながらアレックスに聞いた。
アレックスは
「いや、俺らだけでお前らを全員守れる自信はない、だから自衛が少しは出来るようにした方が良いと思って武器を渡そうと思って、それに俺らも日本で助けたい人間がいるし……」
「そんなの知らねえよ!! 僕らに何の関係があるんだよ!!」
と文句をつけた。
それを聞いて和子は
「いや、いいじゃない、助けてあげようよ! 私たちだって助けてもらったんだから!」
と説得しようとした。
だが清田は
「ふざけんじゃねえぞ!! 僕らはこいつらに助けられたからってそこまで言うことを聞く必要はねえぞ!! 勝手に助けたのはお前らだろ!」
と清田がキレると和子は
「いや清田君は途中でバスに乗せてって言ってきたから自分で助けを望んだよね!」
と事実を言ったが
「うるせええ!! 黙れえええ!! 僕に意見をするのか!! リーダーだぞ!!」
と言って和子の胸ぐらを掴んだ。
アレックスは
「おい! 女に当たるな! 取り敢えず持ってくるから戦うか戦わないかは自分で決めろ! 俺らも人が死ぬところなんてあまり見たくないから出来るだけ助けるが絶対とは思わない方が良い、その時になったら自分で戦わないといけないことが分かってくれると嬉しいよ」
と言ってレベッカと共に降りて
「皆、バスから出ないように」
とレベッカは一言言ってアレックスと共に走って行った。
「ふざけるな!! 何だよ!! 僕を誰だと思っているんだ!! 僕は清田家の一人息子! 賢人様だぞ!! 舐めやがって!!」
と椅子を蹴っていた。
後ろの人たちも
「全くですよ!! 賢人様の言う通りです!!」
「俺らが戦えとか! あいつらはバカなのか!! 戦闘経験なんてないのに!」
「その通りだぞ!!」
と続々と文句を言った。
それを聞いて和子は
「でも! 確かに自衛できないとこれからはきついと思うよ!! こんな状況で戦ったことがないとは言ってはいられないよ!! いざって時は自分の命は自分で守らないといけない時は必ず来るんだから! あの人たちがいる間に戦えるように慣れておかないと!! いなくなったとき死んじゃうよ!」
と説得しようとした。
だが
「黙れええええエエエエエエエエエエエエエエ!!」
「そうだそうだ!! この人殺しいいいいいいいいいいいい!!」
「お前らは本当に最低だな! 今まで生きていた人間を殺せるのか!」
と猛反発を受けた。
「えええ……」
流石に和子は皆に理不尽に攻められて困惑していた。
剣子は
「なら勝手に死ねばいい、我々は生き残るために戦うことをおかしいとは思わないから人殺しでもいい、そのまま自衛も出来ずにゴミのように死ね」
と言って見下した。
和子は
「ちょ! 剣子ちゃん! 挑発しちゃ……」
と止めたがそれを聞いて清田は
「お前ら……この僕の言うことが聞けないのか……だったらこのバスから降りろ! 今すぐに!! お前ら何かと一緒にいれるか! 皆もそうだよな!」
と言って清田は皆に同意を求めた。
それを聞いた後ろの連中は
「そうだそうだ!」
「人殺しと一緒にいれるかあああ!!」
「キチガイ共がああ!」
と2人に降りるように強要した。
それを聞いて和子と剣子は
「まっまっ待ってよ! このバスを最初に手に入れたのは私たちなんだよ! それなのにこのバスと取り上げるって!」
「そうだ、いくらなんでも横暴だろ」
と反論したが。
清田は
「はああああ! 僕がリーダーなんだ! 僕の言うことに従え!! お前らが降りるんだよ! 聞かないと女だからって容赦しねえからな!」
「皆で殴って大人しくさせるぞ!」
「全員で掛かればお前らなんて怖かねえんだよ!!」
と言った。
和子は
「どうしよう、剣子ちゃん」
「仕方ない、さすがに私でも全員をこんな狭い中で勝てる自信はない、疲れてもいるしな……」
と言って悔しそうにした。
和子は
「ゴっごめん、私が弱くて……」
と申し訳なさそうにしたが剣子は
「和子のせいじゃないよ! 私の力不足だから!」
と言って庇った。
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