10Dead『追い出される』
望は考えていた。
(俺がこのままゾンビになるのは今のままではダメだ、どうすれば俺はゾンビになれるんだ……あの時のクラスメイト達のように説得をしてみるか? いや! 無理だ! こんなにプライドが高い連中にそんなことを言っても再びパニックになったと言われて気絶させられる気がする! 痛い目に合う気がする! そんなことになればゾンビになれる可能性が減る気がする! だって今まで寝てたけどゾンビになってないんだもの! それって寝ている間はゾンビに慣れないんじゃないのか! ならば起きている間にゾンビになる必要があるのか?)
とあらゆる可能性を考えて悩んでいた。
ゾンビになるのにもはや少しの油断も許されない状況だと考えたのであった。
望は
(ウウ……ゾンビになるだけでどうしてこんなに悩まないといけないんだ……ただ噛まれればいいだけだろうに……どうしてそれだけのことが俺には出来ない! 皆には出来たのに!)
思い悩んでいた。
そして
(だが方法がないわけじゃない、皆と一緒にこの悪夢を生き残ろうとしている風を装ってごく自然にゾンビに噛まれる方法、その方法であれば気絶をさせられることもないしもはやその方法しかないのか……だがやるしかない……この困難を越えれば夢のゾンビライフが待っている! 頑張れ俺! 負けるな俺! 俺は絶対にゾンビになってこの悪夢から抜け出すんだ!!)
と覚悟を決めた。
そして、伏せていた顔を上げると近くにいた和子と剣子が立ち上がっていた。
良く見るとバスも止まっていた。
(?? あれ? あいつら降りるぞ? もしかしてトイレ休憩? バスを放棄するならばみんなで降りるはずだし、って思ってると俺もトイレに行きたくなった、降りよ)
と思い望も立ち上がった。
そして、和子と剣子と共にバスを降りた。
その際リーダーになった清田が自分を睨んできたのが気になったが無視することにした。
そして自分がバスを降りた瞬間
プ――――――――――!
とよく聞くバスのドアが閉まる音がして振りあえるとドアが閉められていた。
「え?」
そしてそのままバスは急発進して行ってしまった。
それを見ていた和子が望に
「ねえ……君は良かったの? 私たちについてきて……」
と聞いてきた。
望は
「え?」
と言って和子と剣子の方を見た。
2人は
「「??」」
とキョトンとした望を見て違和感を覚えた。
望はそんな二人に
「トイレ休憩じゃないの?」
と聞いてきた。
2人はそれを聞いて真っ青になって
「え……いや……そんな遠足の様なこと言われても……違うけど……」
「あ……ああ、その……これは……言うことが聞けないのならバスから出て行けと言うことなんだ……」
と2人共戸惑いながら望に言った。
それを聞いて望は
「ふーん、そうだったの……てか運転ってことはアレックスさんとレベッカさんも一緒に行ったの?」
と聞いた。
和子は
「何も聞いてなかったんだ……えっとね、2人は武器を別の車においているからバスに移し替える為に出てるんだけど……それに対して自分たちが戦うのが嫌だと言うことで出て行かされて」
「え? じゃあ運転は誰が?」
「えっと、清田君が金持ちで敷地内でバスを運転したことがあるらしい」
「どんな金持ちだよ……」
と呆れるように望は言った。
しかし少し首をかしげた。
剣子は
「どうした? 腑に落ちない感じだな?」
と聞くと望は
「あの不良生徒もパパが金持ちだったのかな? バスを運転しようとしてたし……」
と予測を言うと和子は
「あれは多分強がりだと思うよ……」
と苦笑しながら言った。
それを聞いて望は
「そうなんだ、そりゃ大変だ、取り敢えずトイレ行ってもいい? 俺それがしたくて降りたから……ちょっと我慢できない……」
と言って催しそうだった。
それを見て
「取り敢えずその辺で立ちションしたら? こんな状況だし大丈夫だよ」
と言って和子は少し離れた場所を指さした。
そこは電柱だった。
「あはは、犬みてえだな」
タッタッタッタ
と言って小走りで望は走った。
その姿を見て和子は
「あれだけ呑気にいられるなんて、幸せそうだね」
「そうだな、だがこうなった以上あまり考え過ぎないようにした方が良いのかもしれない……あれぐらいヘラっとした方が正直疲れないかもしれない」
と言って少し笑っていた。
和子は
「私たちも見習った方が良いかもね、気負い過ぎずどうにかなると思いながら頑張ろ!」
「ああ!」
そう言って2人は手を握り合った。
望は
(どうやって! どうやって自然にゾンビになることが出来るのか! この世界ではゾンビになる可能性は十分あるにもかかわらず俺は未だになれなかった! だからそこ自然な形でのゾンビ化だ! だが自然な形って何だ! そもそもどんなことが自然なんだ! 逃げればいいのか! ゾンビが来たら! でもそれってゾンビになれる唯一のチャンスを逃すのでは! でも逃げないとそれは怖がっていると思われないだろうし! ならば自信満々で戦うふりをした方が良いのか! てかさっき銃を貰ったから戦うと言ったら完全に遠距離タイプになってるんだけど! つまり近距離で戦うならナイフの方が……)
と2人の言葉とは裏腹に自然な形でゾンビになる方法を必死になって模索していた。
そして、立ちションが終わり望はズボンを戻して模索しながらも戻ってきた。
「お待たせっす」
「……男っていいよね、早いし」
「うん、一瞬だった」
「?? そう?」
とそんな会話後
「えっとじゃあ、取り敢えずこんなことになったからえっと……誰だっけ?」
「希咲っす、希咲 望っす」
「私は
「私は
と自己紹介をしあった。
そして、和子が
「希咲君、取り合えず銃の使い方を教えるね」
と言うと
「……え?」
「え?」
望はきょとんとした。
そして
「あるの? 銃?」
「ああ、あの時不良生徒の銃を貰ったんだよ、使ってないみたいだから弾も全弾あるよ」
と言って和子は笑顔でくれた。
「ははは、ありがとう……」
(これでナイフを使って戦うのは出来なくなったか、ナイフを使うって言っても自信あるのと聞かれれば嘘がバレる落ちだろうし……)
と残念そうにしていた。
その表情を見られたのか剣子は
「何か不安なことがあるか? それともゾンビでも殺すのは抵抗があるか? 言っておくが和子を守るので精一杯だぞ?」
「いや、使えるかなあって……」
とよくある不安を言って誤魔化した。
和子は
「取り敢えず私も初めてだし難しいと思うけどやり方だけでも知っていざって時はその通りに使えば大丈夫? だと思うよ?」
と言って安心させようとした。
望は
「ああ、ありがとう」
と言って和子が銃の撃ち方を教えてくれた。
「まず、レベッカさんから聞いたんだけどレバーアクションってあるでしょ? 銃の角にあるの?」
「ああ、いつもここ引いてから引き金引いてるのを映画で見た」
と言って場所を確認していた。
望は
「取り敢えずレバーアクションボタン→引き金ボタンだな! 了解した!」
「その覚え方何? まあ覚えやすいならいいんだけど」
望は軽度のゲーム脳だった。
そんな時だった。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
その声の方を見て
「まっ待っまっままさかああ!! そんな! 嘘でしょ!! 教え終ったからって来なくても!!」
「お約束か!!」
と和子の言葉に望はフラグを言った。
剣子は
「こんな現実を目の前にお約束もあるか!」
と言って慌てていた。
「構えろ! とにかく切り抜けるぞ!! レベッカさんやアレックスさんが戻って来るまで全員で生き残るんだ!!」
「何そのカッコいい言葉!!」
と言って2人も構えた。
「私はさっき見つけた木刀で!」
「え、どこで?」
「なんかバスの中で見つけた」
そして
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
と大量のゾンビが襲い掛かった。
「はあ!!」
剣子はすぐさま近くのゾンビの頭を殴りつけてそのまま他のゾンビの方へと飛ばした。
そして、飛ばされたゾンビの重さで数匹のゾンビたちは倒れて頭を地面にぶつけて
ゴシャ!
と鈍い音と共に動かなくなった。
「スッすごい……さすが剣子ちゃん、私も!」
と言って銃を構えてレバーアクションを引きそのまま引き金を引いて
パアアアアアアアアアアアアアアアン!
と撃ち鳴らした。
和子の弾は狙ったおかげかゾンビの頭に直撃して倒れた。
和子は銃の反動で少し怯んだがしっかり狙えたことに対して
「やった!! 狙って撃ったけど意外と当たるんだ!! それにこの反動なら耐えれるかも!!」
と嬉しそうにした。
しかし
「でも今当たったからって言っても次はあるのかな……それに一応替えの弾もあるけど……ああ! 考えてるだけじゃだめ!」
と言って慌てながら狙いを定めて再び
パンパン!!
と2発銃を撃つ
反動はあるが和子はそれを何とか耐えることが出来、
ドシュ! ドシュ!!
と再び弾はゾンビの脳天をずれることなく直撃して倒れる。
しかも、剣子に近づいたゾンビを2人倒すことが出来た。
「ありがとう! 和子!」
とお礼を言われて和子は少し顔を赤くした。
だが和子はあることに気づいた。
(そう言えば、私さっきから撃ってるけど銃の発砲音が自分のからしてないような……)
銃を撃っているがその音は自分の撃った銃からしていない、
持たせた望の銃は発砲されていないと思ったのであった。
しかし和子は
(でっでも私が撃つことに集中しているから気づかなかっただけかな……)
と思い望の様子を見た。
すると
「うーん! う―――ん!! 引けな……い!!」
と言いながらレバーアクションを両手の掌で挟んで押さえるように引こうとしていた。
しかも銃口は思いっきり望の方を向けていた。
「ちょった!! ちょtって! ちょっと何やってんのおおおおおおお!!」
慌てて声を荒げながら和子は望に言った。
望は
「もうちょっとなんだ……もうちょっとレバーアクションボタンを押せるんだ!! レバーアクションボタンが!!」
「だからって両手でする馬鹿がどこにいるんですか! 普通それって片手でやっているイメージですよ! そんな両手に挟んで引こうとしたら危ないでしょうが!! 出来ないんだったらどこかに隠れてよ!!」
と言ってあたふたする。
望は
「案ずるな! 大丈夫だ!」
「大丈夫じゃないから現在進行形で自分の命危険に晒してるから! 暴発するかもだからやめなさい!!」
と言って掴みかかろうとした。
その時
ガチャ!
「引けた!!」
ツルン!
レバーアクションを引くことが出来た瞬間
銃を挟んで持っていたせいかそのまま手を滑らせて銃がくるくると回りながら下に落ちて行った。
「はあああっ……」
「あ」
2人は目を落していく
そして
パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!
銃が落ちた瞬間暴発して弾が発砲された。
「!!」
「……」
乾いた音が鳴り響く
「大丈夫か!!」
近くのゾンビを木刀で殴って近くにゾンビがいない状態になり、余裕が生まれた剣子は2人の方へと振り返った。
そこには
「嘘……だろ……」
望が真っ青になっていた。
剣子は望には血が流れてないことに気づいた。
そして、煙を出しながら銃口が和子の方を向いていることにも
それを見た剣子は嫌な汗を掻きながら
「和子……どうした……まさか!!」
と和子に声を掛けた。
しかし、和子の反応はなく、その上和子の近くにはゾンビがいた。
だが、一切動く様子もなかった。
「お前………まさか和子を!! お前!!!」
怒りが込み上げて剣子は木刀を握り締めた。
望は
「違う……俺は……こんなことがしたかったわけじゃない……どうして……こんなことに……」
望はただただ震えているだけであった。
そして望は
「まさか……まさか後ろにいるゾンビの鬘に直撃してオッサンの頭皮が丸裸になるなんて思いもよらなかったんだああああアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
と叫んだ。
「「うんん?」」
2人はそんな間抜けな声を出してしまうぐらい望の言っていることが分からなかった。
そして和子が振り返ると本当にど真ん中に頭皮を丸出しにしているゾンビがいた。
近くにはそのゾンビの鬘であろうものが落ちていた。
それを確認して剣子は和子に
「だっ大丈夫なのか? 和子?」
心配そうに和子に声を掛けた。
和子は
「ゴっごめん!! 銃の音に一瞬自分が死んだと思って呆然としてて……だっ大丈夫だから!」
どうやら銃弾は和子の股を通り過ぎて後ろにいた鬘ゾンビの鬘に当たり落ちてしまったようだった。
「って剣子ちゃん!! ゾンビが近くにいる!」
「許してくれ! 許してくれ!! 俺はそんなつもりじゃなかったんだ!! 俺のせいじゃない!!」
と泣きじゃくりながら望は許しを請う。
和子はそれを見て
「どうでもいいよ!! そんなこと!! 戦ってよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
とさすがにブチギレた。
剣子はゾンビに向き合って木刀を構えて
「!! 糞! 持ちこたえてくれよ!」
と言って再びゾンビとの戦いを始めた。
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