17Dead『犬』
「グオオオオオオオオオオオオオオオン!!」
「バウバウバウ!」
「ガアアアアアア!!」
「ガッガアアガアガアア!!」
と4匹のゾンビ犬が襲い掛かってくる。
種類的にはドーベルマンであった。
そんな中和子とレベッカとアレックスが銃を構えた。
剣子は木刀があるが犬の動きには不利だろうと思いもしも近づいてきたときに叩き殺せるように準備はしていた。
そして
「今だ!!」
と言って3人は
パン!
パン!
パン!
と一斉に撃った。
其の3発が全て3匹のゾンビ犬の脳天に直撃
3匹は動かなくなる。
それを見ていた望は
(まずい!! 思ったより早い!! このままじゃ俺がゾンビ化する可能性が減る!!! こうなったら!!)
と言って少し構えた。
すると
「まずい!! さっきの戦いで弾がない!! リロードには少しかかるから和子お願いだ!!」
と言った。
そして、和子は狙いを定めて
パアアン!!
(しまった! 遅!)
望は悔しそうにした。
だが撃った弾はそのゾンビ犬に当たらなかった。
何故ならばゾンビ犬は近くにいた死体のゾンビ犬を口で掴み投げつけたのであった。
「! え! え!! うわああ!!」
その投げつけたゾンビ犬に弾が当たりそのまま血が飛び散った。
「うわああああああ!!」
和子はあまりの出来事にたじろいで撃つことが出来なかった。
「まっまずい!!」
アレックスも少し焦った。
すると
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
(大義名分は出来た! 今だ! 今しかない!!)
と考えて望は走り出した。
「き! 希咲君!」
「やっ止めろおおおお!! 希咲いいいい!!」
2人は止めに入ったが望は止まらなかった。
そして
ガシャン!
「うお!!」
何かを踏んだ。
しかし、
「負けるかアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
と言いながら態勢を無理やり整えてそのまま走った。
「ダメだ!! 狙いが!!」
和子も焦りと望が邪魔なのか狙いが定まらなかった。
そして
「ダメよ! 希咲君!!」
とレベッカは手を伸ばした。
そして
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお手ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
望はそう言って正座をして滑り込むように手を差し出した。
「バン」
そう言ってゾンビ犬は手を望の手にお手をした。
「え?」
「うん?」
「はあ!」
「……」
「!!」
「あ……あ」
皆呆然となった。
そして
「「「「「「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」」」」」」
皆ビックリした。
何故かゾンビ犬は望にお手をしたのであった。
一体何が起こったのかが皆分からなかった。
だが確かに望のお手に反応したと言う事実が目の前で起こっていた。
「いったいどういう……何が起こったんだ……」
アレックスは信じられないと思いながらよく見ると潰れたボタンがあった。
そのボタンはベルゲザズがそれを使ってゾンビを操っていたものであった。
機能としては体にある防衛本能の電気信号を読み取り押した者を自動的に守る者であった。
望はゾンビになりたがっていたが、それは望の心で思っていることであって体自体は防衛本能が働いている。
つまりたとえ覚悟をしてゾンビになろうとしても体自体の防衛本能が働いて電気信号を微弱ながら体に送っているのである。
その為、ボタンが反応してゾンビ犬の脳に作用したのであろう。
だがアレックスは1つの疑問を思った。
「これは確か、押した者の防衛本能の電気信号を読み取り守るだけのものだったはずだ、何故彼のお手に反応したんだ?」
と言う疑問だった。
そして、アレックスは予想として
「もしかして機械を踏んだことによって壊れたから何かがおかしくなって他の命令も送れるようになったのか?」
と考えた。
ゾンビ犬の脳に何が起こったかは、不明のままであった。
望は
(な!! 何故だ! この糞犬があああ!! 空気を読めよ! 普通ここは噛むところだろ!! どうして噛もうとしなかったんだ!! 絶好のチャンスだったのに!! 糞! お前は何の役にも立たねえな!! まるでそこら辺に落ちている犬の糞だお前は!!)
と心の中で貶した。
そして、ゾンビ犬は
「ハッハッハッハ!」
と完全に望の方を見ていた。
そして、それを見ていた和子は
「だっ大丈夫なの? そのゾンビ犬?」
と聞いた。
レベッカは
「たっ多分? この子が無事なのが良い証拠だろうし、おそらくそこのボタンが影響したんだろうけど……」
と言う言葉に和子も少し近づいて
「えっと……お手!」
と言った。
すると
「グアアアア!!」
ゾンビ犬が腕に噛みつこうとしてきた。
和子は口をつけると同時にすぐに避けたが
ガブ!!
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
ゾンビ犬は何かを噛み千切った。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛血があああああ! 血が止まらないよおおおおおおおお!!」
と悲鳴を上げる。
それを聞いて剣子が
「そんな!! 嫌ぁ!! 和子!!」
と声を掛け、レベッカもアレックスも近付くが
「だっ大丈夫!! 和子!! 大丈夫!」
「いやあああああああああああああああ!! 死にたくないよおおおおおおお!! ゾンビになりたくないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「落ち着いて!! 和子!! 噛まれたのは服だけだから!! 傷一つないから!! 服が破かれただけだから!!」
とレベッカは言った。
剣子も確認すると噛まれたであろう場所は確かに傷もなく肌にも血が滲んでなかった。
そして傷も出来ていなかった。
あるのは服が噛み破られた後なのだろう。
しかし
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛おがああああざああああああああああああああああああああああああああああん!!」
と泣き喚いていた。
明らかにパニックを起こしている。
それを見てアレックスは
「すまん!」
と言って首の後ろを
トン!!
「う!」
とやり、和子を気絶させた。
「ふう、取り敢えず目が覚めた後で事情を説明して落ち着かせよう」
と言って取り敢えず和子を背負おうとすると
「私がする」
と言って剣子が和子を引っ張った。
それを見てアレックスは
「まあ確かに男の俺より女のお前の方が彼女自身も安心できるか」
と言って和子を渡した。
剣子は顔を赤らめながら
「うん」
と言って嬉しそうにしていた。
望は
「で? これからどうするんですか……」
と不機嫌そうに言った。
アレックスは
(あれ? 何でこいつ不機嫌なんだ?)
と疑問に思ったがあまり気にしないで
「とにかく、車の戻ろう、追手が来るかもしれんからな」
と言って皆車に向かって歩き出した。
すると
「なあ、希咲君? 聞いていいか?」
「何すか?」
アレックスは少し震えながら
「そいつ連れて行くのか?」
「?? 何が?」
「いや、連れて行くならいいんだけど……でも噛まないようにしてくれよ」
と言って注意をしていた。
望は指さす方を見るとさっきのゾンビ犬が着いてきていた。
「グワン!」
「何がグワンだ……何勝手に着いてきてるんだ……」
と言って呆れたように望はゾンビ犬に言った。
ゾンビ犬は
「グウウン」
と顔を俯かせた。
それを見たアンジェリスは
「もしかして落ち込んでるんじゃない? あなたが冷たいから」
と言った。
それを聞いて望は
「むしろ何で温かく迎えないといけないんだ? 意味が分からんのだが……」
と言ってもうゾンビ犬には何の期待もしていないような目で見ていた。
するとレベッカは
「まあまあ! もしかしたら何かの役に立つかもしれないしね!」
「まあそうだな、壊れたとはいえこのボタンも一応は確保してるしその犬もいた方が良いかもしれんしな」
と望に言った。
望は
「いるの? その犬?」
と言った。
やはりその言葉を理解したのかゾンビ犬は俯く。
「ちょっと!! 何でそんなに冷たいの!! 可哀そうでしょ!」
と言ってアンジェリスは怒る。
レベッカは
「ねえ? あなたにも犬との思い出ってあるんじゃないの? それを思い出したらその犬もかわいく思えるんじゃない? もしつらい思い出があるのならごめんなさい」
と言って望に問いかけた。
望は
「思い出……あったっけ? ……あった……思い出した……」
と言った。
それを聞いてレベッカは
「それはつらい思い出?」
と聞くと
「別に辛いわけではないけど……」
「なら!」
「いい思い出でもないけど……」
と言った。
レベッカは
「えっと? 聞かせてもらえる? 嫌ならいいけど……」
と聞くと望は
「まあ別にいいけど」
と言った。
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昔、望がまだ小学1年生だった頃
バスの方を見るとその中に1人の男性と犬が入って行くのを見た。
犬はケージに入っていない状態であった。
そして、何の問題もなさそうにバスは発進して行った。
当時の望にはその光景は見慣れ無い物であった。
そして、望は家に帰って
「お母さん!! お母さん!! 聞いてえ!」
「あら? どうしたの?」
と望の母親は料理をしていたが火を止めて望の方を見た。
すると望は
「今日ね! バスが止まってるところを見たんだけど! 犬がケージに入らないで入って行くのを見たんだよ!! 健ちゃんに聞いたんだけど犬ってケージに入れないとバスとか電車に乗れないって聞いたよ!! どうしてなの!! マナー違反なの!!」
と聞いた。
それを聞いた母親は優しい顔で
「それはね、その犬はお仕事をしてたの、多分その犬は盲導犬って言って目の見えない人の目になってるの、だからバスも別に問題なくそのまま発車したでしょ?」
それを聞いた望は目を輝かせながら
「そうなの!! 凄いねえええ!! 犬も働くこともあるんだあ!!」
「そうよ! すごく大切なお仕事をしてるの! それも盲導犬だけじゃなくて警察のお手伝いをする犬や病気の人を癒すことをする犬もいるの!!」
「凄い!! 凄い!! 犬って凄いんだあ!!」
「そうよ! 凄いのよ!」
そう言って望と母親は笑っていた。
そしてその日の夜
『今高学歴ニートが増えております、彼らはなぜ働かないのでしょう! その実態に迫ります!』
『やっぱりさあ、僕らって学歴が凄いんだからさ、もっといい生活をしてもいいと思うんですよ! それにやめた仕事もやりたい仕事じゃなかったしやっぱり好きな仕事をしたんだよねえ!! やっぱり一流の企業に入るのが普通だと思うんですよ!! そうすればプライドも守れるしい!』
と言っていた。
それを聞いて望の父親は
「学歴があっても働かないのはなあ……ブラックが行き過ぎた場所ならともかく理想が高すぎるのも考えもんだなあ」
と言っていた。
望は
「ニートって何? 高学歴? プライドは知ってるけど……それは漫画で読んだから」
と父親に質問した。
父親は
「高学歴っていうのは勉強が凄くて頭のいい学校で学んだってことなんだよ、そしてニートって言うのは働かないで親に生活の全てを委ねてるってことなんだ」
それを聞いた望は
「プライドって……犬はお母さんから働いてるって聞いたよ、犬に負けてるのにプライドって、そんな言い訳が通るの?」
と父親に言った。
父親は
「お前って時折口汚いよな……」
と言って少し気まずそうだった。
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「って思い出かな」
(どんな思いで……)
とレベッカは唖然としていた。
そして望は
「シッシ!」
と言ってゾンビ犬を追い払おうとしていた。
アレックスは
「なっなあ、その犬お前の防衛にすればいいんじゃないのか? お前拳銃使えないし剣も使えないと思うからそいつに守ってもらうぐらいはした方が良いと思うんだが?」
と庇った。
それを聞いた望は
(チッ! それを言われる前に追い払いたかったがそうなるか……結局……)
と思って
「はあ、分かったッス、このままで……」
と言った。
するとアンジェリスは
「じゃあさあ!! その犬に名前があった方が良いんじゃない!」
と言った。
望は
「ゾンビ犬でいいんじゃないのか?」
と聞くとアンジェリスは
「そんなの可哀そうだよ!! ちゃんと名前付けてあげてよ!!」
と怒った。
アレックスとレベッカも
「確かに、この犬以外にもゾンビ犬がいる可能性もあるし……」
「そうね、別の名前の方が良いかもしれないし……」
と言って名前を付けることが決定した。
アンジェリスは
「じゃあお願い!! 飼い主はあなただし誰も文句は言わないわ!!」
と言うと望はその犬を見て
「じゃあ……俊敏性犬」
と言った。
「「「「は?」」」」
するとゾンビ犬は
「ワン!!」
と嬉しそうだった。
「「「「え!!」」」」
「決定な」
こうしてゾンビ犬は俊敏性犬として名づけられた。
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