22Dead『テレビ』

食事が終り望はあることに気づいた。




「砂嵐ってことはこのテレビ地デジ対応じゃなくね!!」


「!!」


「な!」


「そっそう言えば!!」


「それか!」


「なんかおかしいと思った!」




と皆が望の声に一斉に気づいた。




「そっそういえばこのテレビはお嬢様のゲーム用でテレビとしての役割を使っておりませんでした!」




と執事長もハッとした。


アンジェリスは




「そういえばそうよね、テレビは基本ご飯を食べながらだったし」




とおそらく主人であったアンジェリスは頭を抱えて言った。


そして




「じゃあそれ持ってこようぜ! もしくはそこへ行ってテレビ見よう!! 魔法少女レイミちゃんを見なければ!」




と言って慌てて望は走った。




「まっ不味い!! あのままじゃあいつにテレビを独占される!」


「アニメが終わる時間まで30分ぐらいかかるよ! 捕まえなきゃ!」




と剣子と和子は慌てた。


だがすでにレベッカとアレックスが行動を起こしていた。




「待て! このバカが!! こんな異常事態でニュースを見ない気か!!」


「そうよ!! 今はニュースの時間よ!」


「嫌だ!! アニメ見る!! そして癒される! 疲れたんだもん!」




と言って望はこんな時に限って階段の手すりを滑って降りた。




「あいつ! いつの間にあんな芸当を!! 運動音痴そうなのに!!」


「大丈夫よ!」




と言って見ていると




「あげええがあ!!」




と言ってそのまま手すりから落ちて腕をぶつけた。




「あがあああああ!! 腕があああ!!」




と悲鳴を上げる。




「今よ!! あいつを捕まえるわよ!」




と言ってレベッカが階段の手すりを滑っていると




「俊敏性犬ううううううううううううう!! 俺を守れええええエエエエエエエエエエエエエエ!!」




と叫んだ。




バリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!




「ガウンガウンガウン!!」




と鳴いて俊敏性犬がレベッカとアレックスを睨みつける。




「糞!! あんなに邪険にしていた俊敏性犬をこんな都合の良い使い方しやがって!!」


「これがあの子の本気のようね!」




とレベッカもアレックスも警戒した。


そして




「フアハハハハハアハハ!! 俺の勝だあああああああああああああ!!」




と勝ち誇り中指を立ててレベッカとアレックスを散々侮辱した後テレビのある部屋へと入った。




「糞!」


「こんなところで!!」




と2人は悔しがる。


俊敏性犬は睨みながら2人の足止めをする。


そして




「畜じょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」




と悲鳴がした。


俊敏性犬が




「くうん!!」




と言って心配そうに余所見をした瞬間にレベッカとアレックスはその部屋へと向かった。


そして、テレビ画面には




『本日は予定を変更して臨時ニュースを放送します』




と当然のことが書かれていた。




「……慌てる必要なかったわね」


「……普通に考えればそうだな」




と言って2人は疲れたような顔で膝をつく。


そして、和子と剣子が




「残念だねえ、希咲君」


「ばかだねえ、希咲君」




と言ってバカにした。


望はそんなことを他所に泣いている。




「そんな……バカな……どうして臨時ニュースなんだよおおおおお!」




と悔しがる。


そして




『ただいまゾンビはこの橋を渡って来るようです!! 警察も対応に追われております!!』




とニュースキャスターが震えながら報道する。


当然自分もああなる可能性に恐怖しているのだろう。


そして




『助けてええええええええええええええ!! 娘がいるのおおおおおおお!!』


『ああああ! ああああああ! あああああああ!』




と赤ん坊の泣き声がする。




「この声!!」


「!!」




と和子と剣子が反応する。


そして、テレビに噛り付くように見る。




「どうしたの!」


「知ってるのか!」




と言ってレベッカとアレックスが声を掛ける。




「どうしたの?」




とアンジェリスが後から追いかけて来た。


すると




『女性です!! 赤ん坊を抱えております! あんなゾンビのいる場所に!!』




と青ざめながらキャスターが言った。


和子と剣子は青ざめた。




「加藤先生の……奥さん」


「それに……最近生まれたと聞いていた赤ちゃん」


「!!」


「糞……」


「ヒイ!!」




と加藤先生の家族がいた。


望は




(あれ? あの時出来たのにって言ってなかったっけ? もしかして生まれた=出来た? まあ慌ててたしいいか)




と1人で納得した。


だが和子と剣子はさらに絶望することとなった。




「!! 奥さん!! 噛まれてる!」


「そんな!!」




テレビを見ると肩を出血している。


キャスターも気づいたのか




『あの人!! 噛まれてる!! 肩を!!』




とさらに震える。


カメラマンも震えているのか少し画面がぶれている。


そして




『お願い……助けて……私はいいから……こごごごごごあが!!』




と白目を向けて


ガブ!!




『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!』




と赤ちゃんの悲鳴が聞こえた。




『こんな……こんなことがあって言い訳がない……母親が赤ん坊に……そんな……我々には……助けれない……』




とキャスターは絶望して泣き崩れる。


それを見ていた和子も剣子も泣いていた。




「うううう……ううううう」


「酷い……酷すぎる……こんなの加藤先生が見たら……」




とその姿にアレックスもレベッカもアンジェリスも何も言えなかった。


ただ一人を除いて。




「? どうした? なんか空気変じゃね?」




と望が言ったら、




「……はああ」


「君もちゃんとニュース見なよ……アニメの事ばっかり考えてないで……」




と剣子に溜息を吐かれて、和子に呆れられた。


望はニュースを見てゾンビを見た。




「?? え? 何?」


「話聞いてた?」


「いや」




と淡泊に答える望


和子は




「この女性と子どもが学校の加藤先生の奥さんとお子さんなんだよ」




と教えた。


望は




「そうなの?」


「写真見せて貰わなかったの?」


「見せてる場面はあったけど俺は見ようとせずに席に座ってた」




と答える。


和子は




「君って……協調性ないんだね……」




と呆れたように言った。


そして




「もし加藤先生が生きていてこれを見たら生きる気力を無くしちゃうって話してたんだよ! 少しは現状を察してよ!」




と怒った。


望は




「ああ……加藤先生なら俺の目の前でゾンビになったけど?」


「え!」




と望は事実を伝えた。


それを聞いて和子は




「そんな……」




と心苦しそうにしていた。


剣子は




「君のクラスにいたのか……加藤先生は」


「ああ、歴史の授業中に怒った事だし」




と言って思い出す様に望は答える。


レベッカは




「彼がこれを見ることは無いようだけど……正直嫌な現実ね……」




と言った。


アレックスは




「そうだな……レベッカはこいつを助けた時に分からなかったのか?」




と聞くと望が




「ゾンビ加藤先生は真っ先にレベッカさんに撃ち殺されたけどね……」




と言った。




「……」




レベッカは気まずそうに




「ごめん」




と言った。


和子と剣子は




「そんな!! こいつを助ける為ですよね!」


「そうですよ!! 気に病まないでください!」




とフォローした。


すると望は




「まあそうだな……てかこのニュース見てこの現状を打破できないしテレビ見るの止めない?」




と言った。


それを聞いて




「君が見ようとしたんでしょ……」




と呆れるように和子が言った。


望は




「それは違うぞ! 俺はアニメを見ようとしたんだ!!」




と言ったが




「こんな状況でやってる方がおかしいでしょうが!!」




とパンパンと頭を叩かれる。


望は




「いたいいたい!!」




と言って手を振り払う。


アンジェリスは




「取り敢えずテレビ消すね……」




と言って電源を消そうとしたら




「なあ、アンジェリス、ゲームしねえ?」


「え!!」




とそれを聞いてアンジェリスは嬉しそうにする。


和子は




「な! 何を言ってるの!! こんな時に!!」


「そうだ!! 人類のピンチなんだぞ!!」




と言って望を咎める。


それを聞いてアンジェリスは




「そっそうよね……こんな時に……ゲームなんて……ダメ……よね」




と落ち込んだ。


それを見て和子と剣子は




「ゴっごめん!! そうよね!! やりたいよね!! ゲーム!!」


「気分沈んだ状態は良くない!! 私はゲームは良くわからないがやろうではないか! ゲーム!」




と言って励ます。


望は




「俺の時と対応違くね?」




と不満そうにする。




「ガウン!!」




と俊敏性犬は再び外に出てゾンビが来ないか見張りだした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る