24Dead『眠れぬ夜』

望は眠れなかった。


これから起こるかもしれない悲劇


核が日本に落ちるという悲しみ


自分の大切なものが全て消え去ること


それらは望の眠れない状態に何の関係もなかった。




「ブルーライト浴びすぎたせいで眠れない!!」


「いや……何で寝る前にスマホ弄るかな?」


「だってなんか気になったんだもん!! アニメ情報!」


「今そんなん見ても意味ないでしょ!!」




と剣子に怒られる。


望は




「なあ、なんか話して」


「は?」




と剣子は望の言葉に疑問を持った。


和子とアンジェリスはすっかり寝ていた。


レベッカとアレックスも別れて寝ていた。


武器等の整備があるから早起きをすることを気にした為であった。


その為望と同じく一緒に眠れなかった剣子を無理やりつき合わそうとしていた。


剣子は




「私も眠いんだけど?」




と言った。


望は




「でもさっきから眠ってなくない?」




と言った。


すると




「確かにそうだが……!!」




すると剣子はあることに気づいた。




「なあ……私の下に光る物があるんだけど……これは?」




と聞いた。


望は見ると




「あ、スマホだ……俺のじゃないが?」




と思って剣子を見ると




「糞……落として光を浴びてて眠れなかったのか……」




と頭を抱えていた。


望は




「まあ、あんた横向いて眠ってるみたいだし運悪く目に入ったんだろう……てか気づかなかったのか?」


「ああ、全然だ……何か眩しい気がしてはいたが疲れているからだと思っていた」




と言っていた。


こうして2人はまだ眠れない状態になっていた。


そして




「さ!! 話を!」


「はあ……で? 話題は?」




と剣子が聞くと




「うーん……面白い話」




と望は言った。


剣子は




「1時間ぐらいの剣道が語りかな?」


「それは止めておこう……俺が退屈すぎて先に寝ると思うぞ」




と言った。




「その場合私が無理矢理起こす」


「だろうと思ったからだよ!」




と少し大声を出す望に




「シ!! 静かに!」




と言って剣子は望に言った。


望は




「皆で怪談でもしたらいいんじゃない?」


「これ以上明日に響く人を増やすんじゃない!!」




と言って剣子は睨んだ。


そして




「そういやお前なんかめっさ音無の事百合な感じで見てるけどどうして?」




と望は聞いた。


剣子はキョトンとして




「百合って何で花のことを??」




と聞いてきた。


望は




「女が女に恋愛対象として見ることだ、それを百合と呼ぶ」




と言った。


すると剣子は真っ赤になった。




「ベっ別に! 女同士で恋愛とか!! kながえてないし!!」


「おい、うるさいぞ、そして考えのかがちゃんと言えてない」


「う! うるさい!」




と言って剣子は顔を伏せた。


望は




「じゃあ百合の話ではなくてお前と音無が出逢った経緯でいいよ」




と妥協したように言った。


剣子は




「……まあいいよ……」




と言って剣子は話をしてくれた。




-----------------------------------------------------------------------




あれはお前と同じく最後の授業を受けている時だった。




「ここはXを二乗して」


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」




と悲鳴がした。


私も皆も慌てて窓を見るとそこにはゾンビに噛まれている体育教師の坂本がいた。


それを見た皆は




「どっどしよ!! どうしよ!!」


「いやだ!! いやだ!! 死にたくない!」


「怖いよおお!! おかあさあああん!!」


「皆落ち着け!!」




先生が冷や汗を掻きながらも皆を落ち着かせようとしていた。


だが次の瞬間




「ああー……ああああああ……」




と体育教師坂本が立ち上がり近くにいた女性教師に噛みついた。


そして、その女性い教師も同じように歩き出した。


私も剣道をしていて試合の時の緊張で慣れていたのにもかかわらず恐怖で震えが止まらなかった。


他の皆と同様恐怖で動けなくなっていたのだった。


私自身どうしていいか分からなかった。


そんな時だった。




「皆!! 落ち着くんだ!! 落ち着いて冷静に動くんだ!!」




と1人の生徒が声を上げた。


それは当時私と付き合っていた後藤ごとう いさだった。


私は




「いっ勇実!」




と言って涙目になりながらも愛おしい人を見ていた。


勇実は




「皆武器を持つんだ!! 逃げ道を確保するまで皆で皆の命を繋ぐんだ!! 自分たちの力を信じろ!! 1人は皆のために!! 皆は1人のために戦おう!!」




と言って声を上げる。


しかし、




「フッふざけるな!! お前! お前は鍛えてるから良いが……俺らは何の力……無いんだぞ!」




と言って逆切れした。


だがしかし、確かにそうだ。


皆運動が得意な者達ばかりではなかった。


文系の人もいれば帰宅部もおり、明らかにこんな状態の中で役には立たないであろう。


しかし




「バリケードを作ろう!! そして自分の命を守るんだ! ここは二階! 直ぐにはゾンビは来ない!」




と言って廊下の方を指さす。


私は




「でっでもそこからどうするの!」




と聞いた。


すると勇実は




「変に逃げればゾンビに囲まれるかもしれないし、他の生徒たちが逃げて仲間割れをする可能性もある! 様子を見てからカーテンを使って外から逃げるんだ!! もしゾンビが近付けばすぐに引っ張って教室に戻せばいい!」




と言って理屈は通っていると私も思った。


そして皆も




「たっ確かに……そうかもしれない」


「今逃げ出すのは逆に危険かも……」


「まずは皆で自分たちの命を守ろう!」




と皆勇実の意見に賛同していた。


そして、私も含め皆と先生で勇実の言葉通りバリケードを作って様子を見ることにした。


しかし、机や掃除入れのロッカー、教卓までも引っ張り出して固めたが




「ねえ、剣子ちゃん……大丈夫なのかな……これ……本当に持ちこたえれるかな……」




と1人の女子生徒が聞いてきた。


私は




「もしもの時は私が先頭に立つよ」




と言って女子生徒を安心させた。


だが私も怖かった。


戦って勝てるのか……いざっとなっとき動けるのか……あの時何も言い出せなかった自分が……


そんな不安が自分の中で膨れ上がり殺されそうな思いになった。


しかし、私は勇実の言葉を思い出した。




『1人は皆のために! 皆は1人のために!』




という言葉を


ベタな言葉ではあったが私はあの言葉に勇気を貰った。


もううろたえない、戸惑わない!


私は心の中で大きく決心をした。


そして、バリケードが完成した。


勇実も




「これなら大丈夫だ! 今のうちにカーテンを外しておこう! そして、窓の手すりに結んでおくんだ!」




と言って皆でカーテンを引っ張り取り逃げる準備は出来た。


外にはまだゾンビがいた為、今は逃げることが出来ない。


そして、皆は待つことにした。


そんな時




「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」




廊下の方からゾンビの声がした。




「!!」


「ヒイ!!」


「きっ来た!!」




と言って皆震えた。


すると勇実は




「皆で様子を見よう! 映画とかであったように音に反応するかもしれないからそっとだ!」




と言って皆静かに外に出て行った。


そして、私達は絶望に立たされた。


何とゾンビたちはバリケードを突進して壊し始めていた。




「な……なんで……」


「こんなの……どうしようも……」


「嫌だ! 死にたくない!」




と恐怖に震えはじめる。


先生も




「どうして……私はどうすれば……」




と恐怖していた。


すると勇実は




「戦うしかない……何でもいい、長い得物を使うんだ!」




と言って皆にモップや箒を渡した。


皆は




「こんなんでどうしろって言うんだよ……」


「外にはゾンビがいるし」


「正々堂々と戦うんじゃない、掴まれないように押し退ければいい!」




と言って勇実は皆に指示をした。


私はそんな状況でも動じない勇実に対して惚れ直していた。


そして勇実は




「剣子! 君は来てくれ!! 良い考えがある! 教室まで来てくれ!」




と言って私を教室に入るように言った。


私は




「でっでも! 皆には私がいた方が……」




と震えながらも竹刀を持っていた私


すると他の皆は




「だっ大丈夫だ! 行って来いよ……勇実なら信じられる」


「そうよ! バリケードもまだ持ちそうだし……行って来て! 皆の為にも!」




と言ってくれた。


私は




「わっわかった! 行ってくる!」




と言って勇実の言う通り教室まで入った。


そして勇実は




「良かった……来てくれて!」




と言って私を抱きしめた。


私は嬉しかったが焦ってもいた。


そして私は




「勇実! 急いで! 皆が! 皆が待ってるから!」




と言った。


すると勇実は




「その必要はない」




と言った。


私は何を言ってるのか分からなかった。


だが勇実のことだ、きっと何考えがあるはずだと思っていた。




「ここから逃げるんだ! この窓を使って2人で!」




そんな言葉を聞くまでは……


私は本当に何を言ってるのか分からなかった。


そして




「ドっどういうこと! 皆で生き残るんでしょ!」




と嘘だと信じたくて聞いた。


だが




「知るか!! 俺はお前と生き残るんだ!! 真っ先にそれを考えた! 君と一緒なら俺は大丈夫だから!」




と意味が分からないことばかり言ってくる。


私は




「何を……言ってるの……皆死んじゃうよ……」




と震えながら聞いたがやはり答えは




「だから知らないって! 今までろくに考えもせずに生きたあいつらの事なんて! 俺はあいつらと違う! 生き残るべき人間なんだ! そして君もそうなんだ! そんなことを言っている暇があるなら早くカーテンを! カーテンを降ろす恩を手伝うんだ! 武器も一緒に持っていくぞ! 君と僕の力ならあのゾンビたちに対抗できる! だから急いでくれ!」




と私に言った。


私は思った。




ああ……私の愛した男性はもういないんだ……私は今まで幻想を見て来たんだ……今日でもう……勇実は……壊れてしまったんだ




そう思ってもう私は彼を人間として見ることが出来なくなった。


そして、私は持っていた竹刀を頭上高く上げていた。




「何をしている剣子! 早くにげがああ!」




私は気が付いたら竹刀を振り落して彼の頭を殴っていた。




「いって! 何を!! ……あ! あ!! あああああああああああがああああああああああああああああああああああああああああああ!!」




そんな悲鳴を上げながら勇実は……私の愛しい人だった人は落ちて行った。




「がばああ!!」




そして、見る見るうちにゾンビたちは集まって行った。


そして、勇実は……勇実だった者はゾンビになってしまった。


私は初めて人を殺してしまった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る