29Dead『望発狂』
6人と1匹は船の中を進んで行った。
船に貼っている地図を頼りに船室へと向かった。
すると望は
「トイレ行きたい」
と言った。
「近くにあったか? 俺は大丈夫だが……」
「屋敷で済ませた」
「何で屋敷でしておかないの……」
「全く」
「でもトイレに入ってなかったっけ?」
とアレックス、レベッカ、剣子、和子、アンジェリスの順に望に言った。
望は
「出なかったんだよ……そういうときだってあるだろ?」
と不満そうに言った。
「ガウン」
と俊敏性犬が望の方を見る。
望は
「お前は着いてこなくても良いぞ、俺一人で探すから」
と言った。
そして、望は歩いて後ろへと戻って地図に書いてある船室の場所とは違う方へと向かった。
皆は
「迷子になるなよ」
「先に行ってるから」
「変なことしないでね!」
「バカなことするなよ!」
「いい大人なんだから!」
と同じ順番で望に言った。
望は
「それはどうかな!」
と不穏なことを言ってトイレを探す。
アレックスは
「だっ大丈夫だよな……」
と不安そうに言った。
レベッカは
「さすがに自分の命も掛かってるんだし……」
と冷や汗を掻きながら言い
和子は
「まっまあ、なんとかなるよ、大したことも出来ないだろうし」
と言って2人を落ち着ける。
剣子は黙ったまま
(あいつ……まさか……いや流石にゾンビに噛まれることは無いか)
と考えた。
アンジェリスは
「まあ別に大丈夫でしょ」
と呑気に言った。
すると
「あれ! 俊敏性犬がいない!」
とアンジェリスが気づく。
それを聞いてアレックスは
「もしかしたらついて行ったのかもな」
と言った。
剣子は
(だっ大丈夫だ……よな……)
と不安そうに遠くを見る。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
望はトイレを探していた。
「ええっと、どこだ? トイレ?」
と思い辺りを見渡していた。
「ガウン!」
「……」
望は鳴き声のする方を見るとそこには俊敏性犬がいた。
「何でいるんだよ……お前は」
「ガウン!」
「ガウンじゃねえよボケが!!」
と悪口を言って再び歩き出す。
そして、近くに部屋らしき場所があった。
「あそこの近くとか?」
と思い扉を開けようとしたが開かない。
「引き戸かな?」
と思い引いたがそれでも開かなかった。
望は
「どこかに鍵でもあるのか?」
と思い色々と辺りを見渡していると
近くに少し開いている部屋があった。
望は
「トイレがここにあればいいんだが」
「ガウン」
そして俊敏性犬と共に部屋の近くに行くと
ガチャ
と開いている部屋が開いてそこからピエロのお面をした人が現れた。
望と俊敏性犬はそこで止まった。
するとピエロが
「君達もしかしてあの二人と一緒に乗った子かな?」
と言って優しそうな声を掛ける。
するとピエロは俊敏性犬に気づいたのか
「どっどシッシどうしてここにゾンビ犬が! 君!! 離れて!」
と呼びかけるが望は
「さ……」
「さ?」
「殺人鬼だあアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
と悲鳴を上げる。
ジョボジョボジョボオオオオオオオオオオオオ!!
と同時におしっこを漏らす。
ピエロの人は
「うわああああああああああ!! 漏らしたあああああああああああああああ!! てか!! ちっ違うよ!! どうしてそんな! おかしいでしょ!!」
と呼びかけるが
「クッ来るんじゃねえぜ!! 俺にそこから近寄るんじゃねええ!! ナッ何をする気だ! 俺に何をおおお!!」
と望は悲鳴を上げるように震えながら涙を流す。
俊敏性犬は望を守るように
「ガウンガウン!!」
とピエロに吼える。
「えええ!! どっどういうこと!!」
とピエロは驚く。
だがそんなことはお構いなしに望は
「きっきいきいいきいさまああまあ!! なんあああ!! なんだあ!!」
とビビり倒しながら指を指す。
ピエロは
「あ! 安心して!! 僕は殺人鬼じゃないよ!! そもそもピエロが殺人鬼っておかしいでしょ!!」
「おかしくない!」
と落ち着かせようとしても望は聞きやしなかった。
ピエロは
「モっもしかしてジョン・ゲイジー事件のこと言ってる! あれが発端で殺人ピエロっていうイメージがあるかもだけど本来ピエロは人を笑顔にする人だから!! 落ち着いて!」
と言った。
だが望は
「まっまさか……俺を安心させて……」
「あっ安心させて?」
とピエロが聞くと
「俺の大腸の長さを測るつもりか!」
「そんなことしないよ!
と慌てて訂正したが望は続けて
「まさか……」
「今度は何!」
「俺の目の奥にある血管! もしくは、神経の長さを測るつもりかあああああああああ!!」
と言って警戒を解かなかった。
ピエロは
「だからそんなことしないよ!」
と近寄るが
「ガウンガウン!!」
と俊敏性犬が邪魔をして近寄ることが出来ない。
噛まれればピエロはゾンビ化してしまうからだ
(まっまさかこんな変わった子がいるだなんて……)
と困惑していると
「させんぞ! させはせんぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
と言って望はどこかに走って行ってしまった。
「あ!! 待って!」
とピエロは止めるも俊敏性犬と共に望は遠くへ消えてしまった。
「何で……いったいなんなんだあの子は……」
と困惑しながら取り残された。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ー
望がトイレに行ってから数分後
他の皆は船室に着いていた。
「あの子漏らしてないかしら?」
「さああ? 意外とやってたりするかもよ?」
とレベッカとアンジェリスが笑いながら話していた。
アレックスは
「だが船室にいても誰もいないなんて……もしかして通信で俺たちと話すのか? もしかしてこれは罠だったりしないよな……」
と不安そうに言っていた。
和子は
「ここまで来てそんなこと言わないでくださいよ! 怖いじゃないですか!」
と言って不安そうにアレックスを見た。
剣子は
「だがここが危険だとしてもあそこに残れば確実に核で死んでる……多少の危険は覚悟しないとな……」
と言った。
レベッカも
「そうね……日本がこうなった以上核を落す可能性は十分あり得るわ……だったら乗る以外の選択しななかったでしょうね」
と言って一応なのか拳銃を構えていた。
するとアンジェリスは
「多分あなたたちが言っている人は私のお母さんではないわ」
と
それを聞いてレベッカもアレックスも驚いたように
「ドっどうして分かるんだ!!」
「たっ確かに声も隠してたようだったけど……コっ根拠は?」
と聞くと
「そもそもお母さんにこの船を用意する力も権限もないわ、それにこの船は一度私も乗ったことがある……完全に安心だとは私も言い切れないけどあの人が乗っているなら問題はないはず……多分」
と言った。
すると
「さすがだね、アンジェリスちゃん……やっぱり気づいてたんだね」
と言ってピエロのお面を被った人が現れた。
「!! あ! あなたは!」
とレベッカ自身も驚いていた。
アンジェリスは
「やっぱりね……電話口で聞こえた声を聞いただけだけどその喋り方はレリア叔父さんなんだね」
と言った。
アレックスは
「え! レリア! 嘘だろ!」
と言って相当ビックリしていた。
和子も剣子もキョトンとして
「えっと……私達はだれか分からないから説明を」
「ああ、というか何でピエロのお面?」
「こっ怖いかな……」
とレリアは不安そうに聞いた。
和子と剣子はキョトンとして
「え? 何が? ピエロを怖がるなんて……」
「普通は無いだろ……子供が喜ばせるサーカスの重要な役目なんだし」
と言った。
それを聞いたレリアは
「よっ良かったああああ!! さっき変な男の子が凄い怖がって殺人鬼だとか言ったから不安だったんだ!」
と言った。
それを聞いて皆
「「「「「希咲か……」」」」」
と呆れたように言った。
それを聞いてレリアは
「シッ知り合いなんだ……いったいどんな子なんだいあの子は?」
と聞いた。
するとみんな
「「「「「狂っててバカ」」」」」
と言った。
「まっ満場一致!!」
レリアはものすごく驚いていた。
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