第14話
「おまえには一生、わからん」
「わかりたい」
素直に言うと、タカノリが悶える。この上なく、溺れるように、苦し気に。
「鮫島元子は腐ってる!」
「なんでそんなに失礼なこと言うの?」
「腐らせたのは本人の意思なんだよ……」
「なに? どういう意味?」
ボクはタカノリに腐女子という言葉を教えてもらった。
「ふーん」
ぽりぽり。ボクは顎のにきびをひっかいた。(いてて)
そんな娘もいるんだね。なぜだかは知らないけれど。
だけど趣味は人それぞれだよ。人に迷惑をかけてないならいいじゃないか?
「わかってねえ。進藤はわかってねえ。すでに周囲の男どもが知らないところで犠牲になっていることを」
「大げさだろ。漫画のモデルにされるくらい」
「ばか、あいつらの中では既成事実として認識されてるんだぞ? このオレとおまえがカップリングされてても平気なのか?」
「彼女らの想像力には完敗だね。でも目に見えないところでやってくれるなら、別に困ることもないわけだし」
「見てる人は見てるんだぞ!?」
「でもボクは見ないから」
「果敢だ……」
「むしろ、そんな内容のものを見せられたら、セクハラだからね。訴えてもいいでしょ」
「女相手に、容赦がないな」
「おまえだって描かれるの自体、嫌なんだろ」
「言葉もない」
「だからさ」
タカノリはうんざりといった顔つきで前へ向き直った。講義が始まる……。
夏休みに入ったら、ボクはのんびりしていられなくなった。
鮫島さんと志摩さんに、どうしてもと頼み込まれて、漫画アシスタントに狩り出されたのだ。
これも秘密を知ってしまったばかりに……なんどもタイムリープしようとしたのだが、どういうわけだか、逃げ出せなかった。でも、まあバイト代払ってくれるっていうし、手先は器用な方だ、背景を描くくらいなら大丈夫だろう、と考えて油断したのが悪かった。このままでは印刷に間に合わないからと、泊りがけで手伝うことになったのだけれど……。
「わー! なにこの写真!」
抗議しようとした。印刷で引き延ばされた画像。そこには机の下の、ほとんど半裸のボクの寝姿がとらえられていた。
鮫島さんは悪びれもせず、
「あんまり官能的なので資料用にと思って……」
「こんなの聞いてないよ!」
タカノリに相談したら、彼は同情的に言った。
「だから言ったろ。漫画に描かれるってそういうことなんだよ」
うもー! タイム! リープッ!
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