第24話
誰のせいかと言えば、彼女の両親で。
手にかけられようとしたのはこのボクで。
傷ついたのは一般の方だった。
まさかと思って、爆発現場には足をむけなかったが、ケーサツがうちに来た。
「爆発物取締罰則違反?」
そういうのがあるんだそうだ。わけわかんないけれども。
「ちょっと待ってくださいよ。どうしてボクだって……ボクが疑われてるんですか?」
「あなたの家から出たゴミを、付近の人が確認してるんですよ」
ケーカンはぽん、とボクの肩を叩いた。
「あなた、金曜の午後にゴミを出しましたね? ゴミの日は土曜にもかかわらず」
「ア……」
「署までご同行願えますね?」
そんな。
「ボクは関係ありません。ボクんちのゴミがどうしたっていうんですか? 土曜日のゴミを金曜日に出したからって逮捕されなきゃいけないなんて、聞いたことがありませんよ」
大真面目に返したのだが、ケーサツの方は強く睨んできた。
ボクも負けじとにらみ返した……のがいけなかった。
「人が一人死んでいるんですよ? あなたの出したゴミで。殺人容疑です!」
「だったらそのゴミはどんなゴミなんですか。わけがわからない!」
「詳しくは署でうかがいます」
ボクは一度でもそんな不名誉にあったら、バカバカしいほどの時間と被害を被ると知っていたので、タイムリープした。ケーサツに腕時計を没収されたら、大変だ。
ケーサツが来る前にタカノリのとこへ行って、知恵を借りよう。
土曜日の朝、ゴミの収集車が来る前に、ボクは先のお重をとり返した。金曜日の午後にここに運び込んだまでは無事だった。ということは、お重を傾けたり、蓋を開けなければ大丈夫な爆弾かもしれない。耳を当てたが時計の音はしなかった。
ボクはもう、生きた心地もせず、タカノリのケータイ番号を押した。
「うちへ来たいって。ああー、いいよー。ま、ちっと散らかってるけどな。ビールでいいなら、買い置きしておくわ。え? いいよー、何も持ってこなくて」
爆発音。近所だ。ボクは窓を開けて、公園の方を見た。ゴミ収集場で煙が立ちのぼっていた。
なんて恐ろしいことをしかけてくるんだ。虫も殺さない顔をして!
ボクはお重を見た。お重は爆発しなかった。だけどもゴミ収集場では爆発が起こった。
ケーサツがうちに来た。
「爆発現場であなたを見たっていう証言がとれてるんですよ」
「ボクは関係ありません! これを見てください」
お重を示したが、
「お預かりいたします」
と言って持っていかれた他、ケーサツ官はもう一人いて、ボクがゴミ収集場で不審な動きをしていたのを近所の人が見たと……。
タイムリープだ。タイム、リープ!
二人がお重を置いていってから、ボクはすぐにタカノリの家に直行した。お重の中は見られなかった。
「おまえんちにやくざの手下が来たって?」
「おおむねそんな感じだ」
「で、一週間家に泊めてくれと」
「お願いだ! 助けると思って!」
「いや、別にいいけどさ? おまえ、オレと同じ布団に寝るの?」
「……いや、さすがにそれは」
「だろう」
「いや、でも聞いてくれよ。ボクの近所で爆発が……そしたらケーサツが来て!」
「おまえの話はわからんけど、あれだな? 冤罪着せられようとしてんのな?」
はた、と気づいた。てっきり命を狙われてるんだと思っていたが……。
「あきらかにおまえに罪を着せようとしてんじゃん? それ」
あれ?
今は金曜日だ。爆発があったのは……いいや、あるのは明日の土曜日だ。すると、まだあの近所で被害者は出てない。だったら、タカノリにこんな話をしても。
タカノリは和室で、布団を下ろしている。
「まあ、本業の人が来たんなら、それくらいあるだろう。オレ、明日はデートだから、カギ頼むわ。これおまえの布団な」
そんなことを言われても、ボクはタカノリのマンションからは一歩も出ないつもりだった。
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