第23話
三週間経って、タカノリの抗弁は本当だったとわかった。
飛んだご迷惑をおかけして、と彼女のご両親が謝りに来た。
いや、謝られても。
「ボクは彼女とは関係がないので、帰っていただけますか」
そんなセリフがすんなりと用意されたように、重く口を突いて出た。
怪我も治ったし、ボクはどうも本業の方に目をつけられてるみたいだし。
このアパートも出なくちゃ駄目かな、と一瞬思った。
すると、彼女の父親の方がわっと泣き伏した。
「あの娘は不憫な子で……わたしが借金をつくらなかったら自由に生きられたのに」
とか言う。
言っちゃうのか。おそらく娘さんが狙われて、借金を繰り返すように仕向けられたっていうのがありていなところだろう。
「いや、ううん……。そう言われましても」
言いよどむ。そりゃそうだろ?
やくざにとられた娘を取り戻せなんて言われたら、おっかないことこの上ない。
「ボクには関係ありませんからね」
「きっと、そう言われると思っておりました……」
そう言って、仰々しいお重をとりだしてきた。
「せめてものお詫びに……」
いや、関係ないって言ってんじゃん。
「受け取る理由がありません。持って帰ってください」
「それではこちらの気がすみませんので」
「じゃあ、勝手にしてくださいよ」
ボクはくたびれて、ぞんざいに言った。二人は帰っていった。
そのお重の不気味な存在感に、ボクはどうしようかと思ったが、近所のゴミ捨て場に置いてきた。
後日、それがゴミ収集車を巻きこんで、爆発しようとは思いもしなかった。
まさか、あんなことになるなんて……。
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