第22話
考えたのち、とりあえず彼女を帰すことにし、駅の構内まで送った。
とにかく、タカノリの挙動を問いつめる。
タカノリは言いにくそうにしている。
「いったい、あの彼女がどうだっていうんだ?」
「そんなに好みなのか?」
「関係ないだろ?」
「……わからなかったのか? ありゃ、やくざの娘だ」
初耳だった。
「なんでおまえがそんなこと……」
しばらく沈黙があった。
「そっち方面に顔のきくダチが写真もって探し回ってた」
彼女の家出の理由は、政略結婚させられそうだからということらしかった。
「あんまりひやひやさせんな。間違って傷物にしようもんなら、コンクリ詰めになってたぞ」
おっかないこと言うなよ。
「でもな、まあ。危ないところを助けた恩人ってことで、おまえのことは処理されてるから、ここへはたぶん来ないだろう」
「何が来るって?」
「ヤーさんだ。本業の人」
ボクはいまいちそのへんの事情がわからなかったが、一歩間違えば恐ろしいことになっていたんだなと自覚した。
「オレも黒塗りの車につけられて、心底ビビった。ダチが教えてくれなかったら危なかった。おまえもだぞ」
そんな、事情が……あったのか。
「彼女がやくざの娘って、そういうふうには見えなかったからさ」
「聞いた話だと、養女ってことらしい。組同士の約束で子供同士を結婚させて、勢力を増そうというんだな」
「本人の意思は? どうなんだ!?」
「そこは知らねえ。しかし家出ってことは受け入れられない部分があったんだろう」
「そりゃそうだろう」
「だが、それはそれ。オレたちには関係のない世界の話だ。巻き込まれたくなかったら、せいぜい身の振り方に気をつけるんだな」
はいはい。
「……タカ。心配してくれてありがとうな」
「たいしたことじゃねえよ」
「酒、呑んでくか?」
「ありゃ口実だ」
「置いてかれても呑み切れないから」
「まあ、なんだ。今夜くらいはつきあうかな」
「おす。まあ、部屋は狭いけど」
「んなこた知っている」
「あがってくれよ」
「ああ」
先ほどとは全く違う空気が流れていた。
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