第33話
ボクは彼女の感性は本物だと直感した。確かに今、まさにつまみを押そうとしていたからだ。ボクは彼女の言い方をまねた。
「いっておくけど、ボクはあなたの思う通りにはならない。なぜなら、この時計で、時を巻き戻すから」
タイムリープ!
「させない!」
おっと? つまみが押せないぞ。なんでだ? 腕時計が左腕から消えていた。
「だめよ、これは。あなたの時間を失わせる機械……」
なにを言ってるんだ。それはボクの時間を有意義につかうために巻き戻す機械だ。
彼女は、オオアマノシズメさんは、両腕を後ろに隠している。いつのまに? いや、時計はとられてはいないはずだ。けどなんだかめまいのような感覚……一服盛られたか!?
いや、あの紫の煙のお香があやしい。
「ごたくは、結構だ。それとも、人から金品を巻きあげる詐欺師と言ってまわられたいか?」
一言一言、区切って言った。自分は正気だと示すために。
伸ばした手のひらに、黒いGショックの重み。ボクは席を立ち、狭い階段を降りかける。すると、後ろから声がかかる。
「死んでもいいの?」
来たな、と思った。結局、そういう脅し文句でこの商売やってるんだ。人を不安にさせて、依存させて、とるものとって。
ボクはふりかえらない。
「鮫島――!」
という、悲鳴ともつかない叫びがドアの外まで聞こえた。ご苦労さま!
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