銀のムテ人 =第三幕・上=

わたなべ りえ

今までのおはなし

 銀のムテ人は、滅びゆく長命種族。

 霊山で祈る最高神官の尊き血を残すため、エリザは巫女姫として選ばれた。

 無機質な仕え人、厳しい霊山の掟の中、エリザは未熟さを露呈し、苦しむ毎日だった。

 ただひたすら、胸に秘めた最高神官へ恋心と、選ばれたのだという自負で、励む毎日だった。


 一見、完璧な最高神官サリサ・メル。

 実は、小心者の見掛け倒しで、エリザに恋をして選んでしまった、というとんでもない秘密を抱えていた。

 彼もまた、この霊山の縛られた生活に苦しみ、エリザという存在に癒しを求めていたのだ。


 二人は、密かに愛を育んでゆくが、所詮は制度で結ばれている・いつかは永遠の別れが待っている……という現実があった。

 が、徐々に少年・少女から大人へと変わっていく間に、身も心も結ばれてゆく喜びを知り、やがて二人の初恋は苦悩と葛藤を伴うことに。


 サリサへの想いを、巫女姫としての責務を果たし、故郷に癒しの手を差し伸べることで、昇華しようとするエリザ。

 エリザの幸せを願いつつも、どうしても彼女を手放したくないサリサ。

 結局、サリサは巫女制度を利用して、エリザを祈り所の闇に閉じ込め、五年後に巫女姫として、再び霊山に残すことを選んだ。


 二人は愛を確かめ合い、別れた。

 サリサは先の最高神官が決めた掟を捨て、自分らしく生きる為に霊山の改革を決意し、エリザは愛を信じて厳しい祈り所の日々を乗り越え、再び霊山に戻ることを誓う。 


 暗く厳しい祈り所の生活と、祈りの儀式でサリサが新しい巫女姫を取り、しかも、子供も作ったことを知り、エリザはショックを受けてしまう。

 エリザが祈り所で死にかけたことを知ったサリサも、自分の決断を後悔し、エリザを故郷に戻そうと画策する。

 だが、兄からの手紙を読んだエリザは、再び霊山に戻り、今度こそ巫女姫としての使命を全うする覚悟を決めた。


 エリザは霊山に戻ってきた。

 しかし、愛を信じたばかりに傷ついたエリザは、無意識に暗示をかけてしまい、愛しあったことも、サリサのことさえも忘れ去っていた。

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