第29話
「
「乃愛、左」
「どっちが本当なのー!?」
俺とサユの指示に混乱をする乃愛。
木刀を頭の上に構えフラフラとスイカに近づいていく。
スイカ割りはこうでなくちゃ。
「乃愛ちゃん、もうちょっと前だよっ」
「
いや、俺の指示は本当なんだけど?
「乃愛、もうちょっとひだ――」
ぺしっ。
「なんでチョップする」
「その辺にしとけって」
「ちぇ」
言わないといつまでも悪戯するんだからサユは。
「何も見えないよぉ~」
「当たり前ではおまへんどすか~。目隠ししてはるんやから~」
「行き過ぎだぞー!
あっちもあっちで盛り上がってるみたいだな。
「乃愛ちゃん、そこ!」
「えーいっ!!」
俺とサユの指示は完全に無視して、月の指示だけでスイカをしっかり割った。
すっごい綺麗割れててすごいと思うけど、俺すごく悲しいんだけど。
俺一回も嘘言ってないのに……。
「てぇーい!」
「ぎゃぁーーー!!!あっぶねぇだろうが!!おい
「気のせいや。伊花先輩!
「オレの名前言ってんじゃねぇかこらぁ!伊花先輩聞いてただろ!?オレの方来てんだよ!!」
「なに~?聞こえな~い」
「目隠しのための布で耳も塞いでんじゃねぇーよ!!なんで指示だけ聞いてんだ!!」
あっちの方がひどいからよしとしよう。うん。
※※※
「「「「「「「いただきます!」」」」」」」
ほどよい甘みとみずみずしさが乾いた喉を潤してくれる。
やっぱりこういうところで食べるスイカは別物だな。
「おいしー♪」
「乃愛ちゃん、塩かける?」
「かけるー!」
すっかり月に懐いた乃愛は、ずっと月のそばにいる。
月も乃愛に気を配っていて、まるで仲のいい姉妹のようだった。
月だけじゃなくて、先輩たちとも馴染んでくれてよかった。
みんなさん付けで呼んでたのにいつの間にかお姉さんとか呼んでるしね。
「スイカは種があるからめんどうだよね~」
「そうですね。そのまま飲む人もいるそうですけど、俺にはとても無理です」
「僕もだね~」
そういうところしか見たことないからかな?
サユのことがお気に入りなのは見ればわかるけど。
「次は何するんだ?眞智」
「そうやな~。とりあえず夕飯の準備して、夜は花火と肝試しやね~」
「今日はゲームしないんですね」
「明日は一日中ゲームどすー」
せっかくここまで来たんだし、別に問題ないか。
「ほな、夕飯の準備しましょー」
「乃愛ちゃん一緒におにぎり作る?」
「はい!」
「わたしは火を担当する」
「サユ?ちゃんとエプロンしてね?」
「オレは見学だな……」
「僕は何かしよっかな~」
眞智先輩が道具を用意し、乃愛と月がおにぎりを作り、俺とサユで火を管理し、管理しながら野菜を切る。見学と言っていた久美先輩はしっかり見学をして、何かすると言っていた萌々香先輩は特に動こうとしなかった。
「サユ、あれ取って」
「はい、ピーラー」
「ありがと」
それにしても水着にエプロンって正面から見るとまじで裸エプロンにしか見えないんだが……。
みんなめんどうだからって理由で水着のままだし、目のやり場に困る。
野菜と火を眺めてるしかない。
「ヒロ、あれ取って」
「はい、おろし器」
「ありがと」
それにしても、まさか合宿することになるなんて思ってもいなかった。
ゲーム部だけじゃなくて乃愛も一緒に連れてこれたし、萌々香先輩もなんかいたし。
眞智先輩のおかげだ。
「あれで夫婦じゃねぇんだからびっくりだよな」
「うちも今おんなじこと思ったわ~」
「僕じゃ勝てないわけだね~……」
先輩たちが何か言ってるな。
「乃愛ちゃんさすがだね!こんなきれいなおにぎり見たことないよ!」
「ありがとうございます♪」
月と乃愛の方も上手くいってるようだ。
「あれもう完全に姉妹だよな」
「桜雪ちゃんの方が長くいるから有利やけど、こらまだわからへんどすな~」
「まずは周りから固めてるんだろうね~」
先輩たちが何か言ってるな。
……ていうか。
「先輩たちも何かしてくださいよ!!」
「うちは道具準備したし、なんか邪魔になるかと思て」
「オレが入るとここら一体燃えたりするけどいいか?」
「僕はもうメンタルに多大なダメージを受けたんだ……。大翔くん。桜雪ちゃんを嫁にしても時々僕に愛でさせてくれよ~……?」
久美先輩はダメだけどほか二人は手伝わない理由になってないわ!!
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