第19話
「と、いうわけで!」
俺はそこで言葉を区切り、ここにいる全員を見渡してから再び口を開いた。
「モノポリーをします!」
周りから歓声が上がる。
俺たちはみんなでテーブルを囲んで座っていて、俺の隣には
「ちゃんと勉強もするんだよね……」
「す、するよ?」
乃愛のジト目が心に刺さるが、本当にするつもりです。
「でもこれ、"オルゲ"の練習に関係のないゲームだね」
「たしかに」
月の意見はもっともで、人生ゲームなどの複数人でやるようなボードゲームは"オルゲ"では出てこない。
一対一でもできるだろう?と言われても、楽しくないからね。
「家で遊ぶのは初めて。だから、楽しめるのでいいと思う」
「ま、まぁみんな息抜きは必要だしいいんじゃないか?」
「嫌だと言ってるわけじゃないけど……」
月はまだちょっと納得がいかないみたいだ。
でも息抜きって大事だよ?
そこ!テストも近いのにゲームばっかりしていいのか?みたいなこと思わないで!
何もしてないのに息抜きしようとしてるとか思わないで!
「何もしてないのに息抜きするの?」
「それ言わない約束でしょ!?」
乃愛がど正論を突いてくる。痛い。
「ま、ちゃんと勉強するならいいけど」
「します!しますから!」
「
「ヒロは乃愛に弱い」
「
「本当だったら嬉しい」
みんな別々に会話し始めちゃった。
これじゃ埒が明かない。
「とにかく!始めるよ!」
「「「はーい」」」
「一応モノポリーについて説明します!」
「「「えー」」」
「ノリがいいのはいいんだけど、否定的なのは困る……」
とにかく、説明だ。
こほん。
『モノポリー』
アメリカで生まれたボードゲームの一つだ。
双六の要領で盤上を周回しながら、ほかのプレイヤーと盤上の不動産を取引していく。
不動産にはグループがあり、そのグループを揃えると家やホテルを建設することが可能となる。
家やホテルの説明は、ゲーム中に出ると思うのでそこでさせてもらう。
自分が所有している不動産に、ほかのプレイヤーが止まるとレンタル料を受け取ることができる。その不動産によってレンタル料は異なり、今回の盤ではスタートに近いところが安く、遠いところが高く設定されている(ほかの盤も同じかもしれないが)。不動産を買うにももちろんお金が掛かり、レンタル料を高く徴収できる不動産は購入時も高く設定されている。
このレンタル料で自分の資産を増やし、最終的にほかのプレイヤーを全て破産させることが目的となるのだ。
不動産に関してだが、プレイヤー同士で様々な交渉ができることもこのゲームの面白みの一つだろう。細かいことはゲーム中に。
「ということだ」
「ふわぁ……」
「乃愛ちゃん眠いの?」
「ん……」
「すぅ……すぅ……」
「…………」
説明が終わると、乃愛が眠そうにしていて、月が膝枕をしようとしていた。
サユに関してはすでに寝ている。
ひどい。
とりあえず起きてもらって。
まずはじゃんけんで順番を決める。
結果は乃愛、月、サユ、俺の順になった。
「じゃ、始めるよ?」
「いいぞ」
「それっ」
三だな。
乃愛はコマを進める。
止まった場所は紫色のグループの不動産だ。
不動産のグループは今回安い順に、紫、水色、ピンク色、オレンジ色、赤色、黄色、緑色、青色だ。
「買う?」
「もちろん!」
乃愛は紫色の不動産を一つ手に入れた。
ちなみに、紫色の不動産は合計二つある。乃愛はもう一つ手に入れたら、紫色の不動産を全て手に入れたことになり、家やホテルを作れるようになる。
「次は私の番だね」
そう言って月はサイコロを振った。
出た数字は三。
乃愛と同じだ。
「早速レンタル料ゲット!」
「あぁ……!幸先悪いなぁ~」
乃愛が所有している不動産になっていたので、月は持ち金から乃愛にレンタル料を支払った。
「次はわたし」
サユは五。
サユが止まったのは鉄道だ。鉄道は全部で四つあり、これもまた不動産となる。しかし、色のあるグループとは違い、家とホテルを建てられない。
その代わりに、鉄道の所有数を増やすごとにもらえる金額が増える。しかも、全ての鉄道が同じレンタル料になる。
鉄道は定期的に置いてあるので全て集めるとなかなか強い。
もちろんサユは鉄道を購入した。
「次は俺だな」
サイコロを振る。出た目は七。
チャンスのマスだ。
このマスに止まると、盤の中央に置いてあるチャンスカードの山札からカードを一枚引くことになる。
そして、カードに書かれたことが起こるのだ。
主に、資金が増えたり減ったりするものだが、今回は……。
「刑務所に進む……。GOを通る場合は二百ドルを受け取るか……」
「ヒロ、ドンマイ」
「序盤から刑務所は痛いよねぇ」
「にぃの勝ちは薄くなったかな?」
刑務所とは、そのまんま刑務所である。
ゾロ目を出すか、三ターン刑務所で過ごすかしないと出ることができない。チャンスなどで出てくるカードで出ることもできるが、俺はそのカードを持っていない。
つまり、出るのに時間が掛かるかもしれないのである。
序盤で動けないと不動産を買うことができないので、とても不利になる。
これはまずいな……。
「そういえば、一周二百ドルは変えたりするの?」
「するよ。俺が銀行のお金を見て変えるよ」
乃愛がルールに関する重要な質問をしてくれたので、ここで説明を入れておこう。
GOを通る。GOはスタート地点なのでここを通ると一周したことになる。
ここを通ると二百ドルがもらえるのだ。しかし、銀行役によって金利を変更することができる。三百ドルに増やしたり、百ドルに減らしたり。
これも面白みの一つと言えるだろう。
「とりあえず一巡だな」
「勝負はここからだよっ!」
「あたしも負けないから!」
「わたしが勝つ」
そして、二巡目が始まる。
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