第8話
「「あっ」」
ここからは一対一の真剣勝負。
辺りに緊張感が漂う。
「また負けたぜ」
「せやねぇ……。なん回目かいな?」
「もう十は超えてるだろうな」
「十!?そないやっけ!?」
「だいたいな」
「すごいなぁ」
くっ……集中できない……。
「あたっくちゃ~んす」
「あっしまっ……」
画面にはゲームセットと表示されている。
「しょーり」
「くっ……」
これで二位が七回。一位が六回。
サユは一位が七回。二位が六回。
負けている……!
「ねぇねぇ、こんゲームそろそろやめへん?」
「そうだよ。
「たしかにそうですね」
「どのゲームする?」
「マ○オカートだ」
そう言って
俺とサユは皿とコップを用意する。
なんて便利な部室なんだ……。
「それじゃ、始めるぜ」
「さぁ、ゲームをはじ――」
「それはもういい」
レースが始まった。
「あ、失敗してしもた」
眞智先輩だけスタートダッシュを失敗し、出遅れてしまう。
コンピュータも入れたレースなので、眞智先輩はビリの十二位になってしまった。
「よっしゃ!駆け抜けるぜ!」
「こんなところにバナナ……」
「ヒロ、ひっかかった」
現在トップは久美先輩。続いてサユ。
俺はサユの置いたバナナのせいで現在五位にダウン。
眞智先輩は徐々に順位を上げて現在八位だ。
そのまま二週目。
「くらえー」
「あっ!くそっ」
「かんにんな大翔くん」
「ちょっ!」
サユと久美先輩が一位争いをしている中、やっと三位に上がった俺は眞智先輩の妨害により再び五位。眞智先輩は俺を抜き去り三位になった。
現在サユが一位。久美先輩が二位。眞智先輩が三位。俺が五位だ。
そのまま三週目に入った。この周回がラストだ。
「あ、コンピュータに邪魔されてしもたぁ!」
「さっきのお返しだ桜雪」
「あっ」
「サユ、お先に~」
サユが四位。久美先輩が一位。眞智先輩が六位。俺が二位だ。
そろそろ最終コーナーだ。
「ショートカットで確実に一位を狙うぜ!」
「追いつけないか……!」
「桜雪ちゃんちょい待ってよ~」
「コンピュータをなぎ払えー」
――ビリッ。
その時、俺の頭に電流が走るような衝撃が訪れた。
「ショートカットしないだと!?」
「うちはさせてもらうよ」
「…………」
「こっちの方がいい気がするんです」
久美先輩と眞智先輩がショートカットのコースに入った瞬間。
「は!?」
「ほんま!?」
コンピュータがサンダーを使用し、二人は奈落に落ちてしまってタイムロス。
「さすがヒロ」
「やっぱり」
ショートカットにあえて進まなかった俺とサユは落ちることなくゴールに走っていった。
結果、サユが二位。久美先輩が六位。眞智先輩が七位。俺が一位になった。
「結局負けた……」
「でも、今までで一番接戦やったね」
「ていうか最後なんでサンダーを読めたんだよ」
「読んだわけじゃないんですけど……。なんかビリって……」
「よくわかんねぇな」
「桜雪ちゃんはなんでショートカットせいなんだん?」
「ヒロについていった」
「じゃあ大翔を信じたってことか?」
「そう」
時々あるこの感覚は何なんだろうか……。
※※※
「結局"オルゲ"ってなんなん?」
「眞智知らねぇのか?」
「聞おいやしたことあるやけであんまり知らんもん」
「教えましょうか?」
「頼むわ~」
"オールラウンドゲーマーズ"通称"オルゲ"。
インターネットで登録することができ、その時にIDが発行される。
そのIDで今後行われる予定の大会にも参加できるし、序列戦でもIDを使用する。
"オルゲ"ではいろいろな種類のゲームができないと勝てない。
スポーツはないが、リズムゲームやボードゲーム、FPSに格闘ゲーム。どんなものがくるかわからない。
ちなみに序列は一位~百位まで存在する。序列入りすると二つ名がもらえ、下位のものは上位のものに挑戦できる。序列外のものも好きな順位の相手と対戦できるのだ。
序列戦は二本先取で、お互いにゲームのジャンルとゲームそのものを指定して勝負を始める。お互いに一回ずつ勝利すると、三回戦目は下位のものがゲームのジャンルとゲームそのものを指定するというルールだ。
負けると、勝ったものと序列が交換になる。序列外のものに負ければ自分が序列外になってしまう。
序列戦は月に一度、月初めに行われる。そこで一か月分の序列が決まるわけだ。
人によっては何人もの人と戦うことになるので大変になる。
ちなみに俺は今月……六月なのだが、上位のものには挑戦せずに挑戦者とのみ対戦した。
合計六人と戦って五十六位を守ったわけだ。
「ほなどなたはんやてすぐ一位になれるん?」
「それが、十位以上は順番に戦わないとなんですよ」
「どないなこと?」
「十一位まではどの順位の人にも挑戦できます。けれど、十位の人に対戦を申し込めるのは十一位の人だけなんです。そして、九位の人に挑戦できるのは十位の人のみ。八位に挑戦できるのは九位」
「そないゆーこと」
ちなみに、序列外の人に負けて自分が序列外になっても一応二つ名は記録されているらしい。プロフィールからは消えてしまうが"オルゲ"の中ではその二つ名の印象が強いので、みんなの記憶から消えない限り二つ名で呼ばれる時もある。また、序列内に戻ってくる可能性もある。そのため、公式は二つ名の記録は取っておくらしい。
「意外としっかりしてるんだな」
「ほかにもルールがあったりするのかもしれませんけど、だいたいこんな感じかと」
「なるほど。よおわかったわ。おおきに」
「いえいえ」
よかった。伝わったみたいだ。知らない人に説明するのは難しいんだよな……。
「そないいえば、大翔くんの二つ名知らんね」
ぎくっ……。
「ヒロの二つ名は――」
「さぁ!みなさん!もう一戦いきましょう!!」
「あ、うん」
「お、おう」
次のコースはどこがいいかなー?
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